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トヨタ・日産・ホンダ、次世代覇権へ三者三様のアプローチ

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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CESのプレスカンファレンスで「eパレット」を発表するトヨタ自動車の豊田章男社長 Photo by Hiroyuki Oya

米ラスベガスで世界最大の家電見本市「CES」が開催された。ITや自動車の垣根を越えた融合が進む中、日本の自動車メーカー“ビッグ3”も三者三様の戦略で新覇権時代の競争に打って出た。(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史、大矢博之)

 次世代のモビリティ社会で覇権を握るのは一体誰か──。9日に米ラスベガスで開幕したCESは、そんな新たな覇権時代の到来を象徴するイベントとなった。

 まず参戦に名乗りを上げたのが、トヨタ自動車だ。豊田章男社長は「トヨタを、車会社を超え、人々のさまざまな移動を助けるモビリティカンパニーへと変革する」と述べ、車を造るだけのハードウエアメーカーから、車を介してあらゆるサービスを提供するプラットフォーマーへ進化させる「決意」を表明した。

 その戦略を支えるのは、自動車に関わるあらゆるサービスを提供するトヨタ独自の「モビリティサービス・プラットフォーム」(MSPF)にある。

 MSPFは、これまでトヨタがライドシェアなどのモビリティサービス事業者と提携する際に提供していた、車両管理システムやリースプログラムといった個別機能を包括するプラットフォームだ。提携する事業者はこのプラットフォーム内の機能をサービス内容に応じて利用することで、よりこまやかなサービスを消費者に提供できる。

 今回、トヨタが従来の構想から踏み込んだのは、このプラットフォームを共有するパートナー企業を選定したことにある。それが米アマゾン・ドット・コム、中国ライドシェア最大手の滴滴出行、外食チェーンの米ピザハットに、すでに提携する米ウーバー・テクノロジーズとマツダを加えた5社だ。

日産自動車はドライバーの脳波を測定し、運転を支援する技術を発表した Photo by Hiroyuki Oya

 これらパートナー企業は、トヨタが発表した電気自動車(EV)のコンセプトカー「eパレット」を共同開発し、それに宅配や小売り、カーシェアなど各自のサービスを載せて展開する。eパレットはいわば移動する“店”のような存在だ。無人の自動走行で24時間稼働も可能となる。

 モビリティのサービス化(MaaS)はカーシェアリング事業などで欧米の自動車メーカーが先行するが、トヨタはMSPFの豊富なデータを武器にこの領域の拡大を目指す。

 新たな時代の到来を見据え、新興企業の新技術を大々的に取り込む戦略を打ち出したのが、仏ルノー・日産自動車・三菱自動車の3社連合だ。アライアンスのカルロス・ゴーン会長は「業界の成長に必要なのは新たな市場の開拓だ」と述べ、ベンチャーキャピタルファンドを設立して今後5年間で最大10億ドルの投資を実行すると表明した。

 3社で1000万台超の販売台数やグローバルなネットワークは、技術を提供するベンチャー側にとっても大きな魅力となる。トヨタと同様に規模のメリットを最大限に発揮し、新技術で主導権を握ろうとする狙いが読み取れる。

 一方、独自の技術で覇権に挑もうとするのがホンダだ。

独自技術で生き残りを図るホンダの攻め手

 CES会場の一角にあるホンダのブースには、高さ1メートル超の巨大な電球のような形のロボットが立っていた。手を振ると、近づいてきて「ハロー!」と上部の顔に表示される。人のしぐさに応じて笑顔や泣き顔など表情が変わる姿に、「キュート!」と歓声が上がった。

ホンダが世界初公開した新型ロボット「3E-A18」 Photo by Hiroyuki Oya

 ホンダがCESで世界初公開した新型ロボット「3E-A18」だ。ホンダが独自開発した人工知能「CI」を搭載し、周囲の行動や人の感情を認識して約30種類の表情や動きで反応する。

 3E-A18は何もしていないときでもわずかに揺れている。実は一輪で立っており、ホンダが誇るロボット「ASIMO(アシモ)」で培った姿勢制御技術が応用されているのだ。突き倒そうとしても、起き上がり小法師のように倒れずに姿勢を立て直す。

 開発した本田技術研究所R&DセンターX開発戦略室の小川直秀主任研究員は、「われわれが狙うのは屋外での案内など幅広い環境で人をサポートできる技術。表情やしぐさなどからロボットを“生きている”と感じてもらうことで、親近感を持たせたい」と話す。視察に来た企業からは、一見不安定な物体をスムーズに姿勢制御できる技術への関心が高いという。

 ホンダはトヨタや日産連合のような台数規模を持たない。しかし「ロボティクスがどんどん生活の中に入ってくる時代」(本田技術研究所の松本宜之社長)を想定し、アシモで培った独自技術で競争に打ち勝とうとしているのだ。

 今回のCESでは、ITや家電メーカーも自動運転などに関わる新技術を披露した。次々に異業種が参入し、既存の自動車メーカーが現在の好業績に安住しているようでは、その先には“死”が待つのみだろう。各社がそれぞれ強みを持つアプローチで異業種競争に挑む、生き残りを懸けた戦いが始まった。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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