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東芝とWD、サムスンに対抗しての和解・提携で残る「溝」

2017年12月19日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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東芝メモリの四日市工場では増産工事が急ピッチで進められている。米ウエスタンデジタル(WD)と設備を共同投資して運営しているが、その提携関係は複雑だ Photo by Reiji Murai

半導体子会社、東芝メモリの売却をめぐって対立してきた東芝と米ウエスタンデジタル(WD)が和解した。両者は、フラッシュメモリー事業で先行する韓国サムスン電子に対抗するために提携関係を取り戻さなければならないが、対立を通じて提携の弱さがあぶり出された。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)

 東芝メモリの売却をめぐる和解交渉が間近に迫った8日、東芝の社長、会長を務めた大物経営者が死去した。2015年に発覚した会計不祥事の責任を取って相談役を辞任していた西田厚聰氏。急性心筋梗塞が死因で、73歳だった。

 05年に社長に就任した西田氏が「剛腕」として名をはせたのは、06年の米原発メーカー、ウエスチングハウス(WH)の買収が大きいが、同時に西田氏が強化したのが、半導体のフラッシュメモリー事業だった。

 西田氏は08年2月、三重県四日市市と岩手県北上市の2カ所同時に半導体メモリーの新工場を建設する巨額投資を決断した。

 この2カ所同時建設は、直後に発生したリーマンショックで一時頓挫したが、このときに投資を決定した四日市工場の第5棟は現在の先端拠点だ。北上市の新工場も東芝は今年9月にあらためて建設を決定しており、当時の延長線上に今の半導体メモリー事業の活況がある。

 だがWHは17年3月期に米連邦破産法を申請して巨額損失を計上し、東芝の危機を決定的にした。この巨額損失の代償として、半導体メモリー事業は売却される。

 巨額赤字の元凶となったWHの買収で批判を浴びた西田氏は、一方で半導体メモリー事業拡大に道筋を付けたが、もはや東芝は両事業とも失うことになり、その功績に光が当たることは少ない。社長時代に無理な目標を押し付けたことが不正会計を誘発したとされ、「戦犯」のままこの世を去った。

 こうした中で東芝メモリの売却を急いでいた東芝は、提携関係にある米ウエスタンデジタル(WD)が売却に反対して提訴したことから法的措置に踏み切るなど、両者は泥沼の対立関係に陥っていた。この和解が成立したのが、西田氏が死去した5日後の13日。あとは各国の独占禁止法の審査を残すのみとなり、東芝メモリの売却は実現に近づいた。

単独投資の強行で和解を迫った東芝
WDのCEOは不満

 全面和解で両者は訴訟を取り下げて、四日市工場への共同投資を再開した。18年度にも建設を開始する北上市の工場の共同投資も協議を始める。

 ただ、両者が10カ月にもわたった対立でこじれた関係を元に戻すのは容易ではなさそうだ。

 もともと東芝とWDの提携関係は歴史が浅い。2000年から東芝が提携してきたのはサンディスクで、WDはサンディスクを16年に買収したことで提携を引き継いだ。このため東芝からは「もはやサンディスク時代のような信頼関係は望めない」(東芝幹部)との本音が漏れる。

 さらに今回の対立で、サンディスクを買収したばかりのWDが思い知らされたのが「この提携はもともと対等ではあり得なかった」(別の東芝幹部)という事実だ。

 東芝メモリとWDの提携の目的は、巨額投資で先行する韓国サムスン電子に対抗するため、生産設備に共同投資して、同じ工場のフラッシュメモリー製品を分け合うことにある。だが、対立が激化していた8月、東芝はWDを外して単独で1950億円の投資を決定した。

 11月に入って東芝は6000億円の資本増強を決めたため、慌てて東芝メモリを売却する必要がなくなり、交渉は有利な立場に転じたが、ここでも東芝は「法的措置を取り下げなければ単独投資を継続する」とWDに和解を迫った。

 東芝は四日市工場の建屋を建設、所有し、設備の投資計画も東芝側が立案、運営も東芝側が担う。このため、東芝は単独投資を決行できるのに対し、WDは事実上その力を持たないことがあらわになった。WDは、最先端のフラッシュメモリーを調達できなくなることを恐れて、和解に応じざるを得なくなったのが実態だ。

 実は、この東芝の単独投資は、西田氏の社長時代に初めて本格化したものだ。08年当時、サムスン電子から買収提案を受けていたサンディスクを防衛するため、東芝がサンディスクの生産設備の買い取りを決めたことから、東芝の単独投資の実績が積み上がった。

 実際、WDのスティーブ・ミリガンCEO(最高経営責任者)は東芝との提携関係が「対等」でないことに不満を持っており、東芝危機をきっかけに東芝メモリ買収を仕掛けたのは、こうした一方的な依存関係の打開が狙いの一つだった。

 WDは今回の和解契約で、東芝メモリ株が競合他社に渡らないよう譲渡制限条項を付けたが、WD自身の東芝メモリの株式取得については制限を明らかにしていない。今後も、東芝との提携関係に不満が高まれば、WDが再び東芝メモリの買収に動きだす可能性も否定できない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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