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政府が原発推進に方針転換で注目の「次なる焦点」

2017年12月19日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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今夏に始まったエネルギー基本計画の見直し議論。どこまで原発の新増設、リプレースに踏み込むか。政府の本気度がそこに示される Photo by Ryo Horiuchi

ついに、政府が原子力発電所の新増設や建て替え(リプレース)に本腰を入れようとしている。10月の衆議院選挙で、「原発ゼロ」を掲げた野党に大勝し、盤石の政権基盤を築いた安倍政権は、「今しかない」と前向きになっている。見直し議論が進むエネルギー基本計画に、原発の必要性をどこまで盛り込むかが焦点になる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)

「安倍首相は、もともと原発を進めたいんですよ」。ある政府関係者は、安倍晋三首相の“胸の内”を解説した。

 政府がとうとう、原子力発電所の新増設や建て替え(リプレース)に本腰を入れようとしている。

 11月末に開かれた、エネルギー基本計画(エネ基)の見直しを議論する経済産業省の有識者会議。地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」で、政府が2050年までに温室効果ガスを13年比で80%削減する計画に向けて、「温暖化問題を真剣に議論する必要がある」との認識で一致した。関係者によれば、“認識の一致”は、CO2削減に貢献する原発の新増設、リプレースを意味するというのだ。

 もともと原発の新増設、リプレースに消極的だった政府が、なぜ方針を転換したのか。大きな転機となったのは、10月の衆議院解散総選挙だ。

 衆院選では、小池百合子元代表率いる希望の党をはじめ、野党が「原発ゼロ」を掲げた。しかし、大きな争点にならず、与党が大勝。政府が、「原発ゼロ」政策は民意が得られなかったと判断したのだ。

 政府関係者によると、盤石の政権基盤を手にした安倍政権を追い風に、経産省内では衆院選を境に「今やらないで、いつやるんだ」と原発の新増設、リプレースに前向きな雰囲気ができているという。

 一方で、原発の新増設、リプレースが悲願であるはずの電力業界が、なぜか悲鳴を上げている。

「事業の予見性を高めるような制度設計、環境整備をお願いしたい」。11月30日に記者会見した東京電力ホールディングスの文挾誠一副社長は、原発事業を支援する“救済策”を政府に求めた。

 その背景にあるのは、東電が28.23%を出資する原発専業会社、日本原子力発電が保有する東海第二原発(茨城県)の存在だ。

 来秋に運転開始から40年を迎える東海第二原発について、日本原電は11月、原子力規制委員会に40年超の運転延長を申請した。東電は東海第二原発の発電量のうち、約8割の供給を受けてきた。

 ただ、東海第二原発の再稼働に向けた工事費用は少なくとも約1800億円に上る。経済性を重視する東電内では東海第二原発からの受電をやめることが議論されている。

焦点はエネ基
どこまで表現で踏み込めるか

 東電が供給を受けないとなれば、東海第二原発は廃炉につながる可能性が高く、政府のエネルギー政策に与える影響も大きい。

 文挾氏の発言は、東電が自力での判断において“匙を投げた”ことを示しているといえる。エネ基で原発を「重要なベースロード電源」とするなら、政府が政策で後押ししてほしいというのが電力業界の総意なのだ。

 そもそも、エネ基の達成は綱渡りの状態にある。

 長期エネルギー需給見通しで、30年度の電源構成(総発電量に占める各電源の割合)の原発比率は20~22%。すでに廃炉(方針を含む)を決めた17基を除いた42基を全て再稼働させれば、目標は達成できる。

 しかし、文挾氏が言うように、今や原発は、“外野”に振り回される「予見性がない」事業だ。

 その一つが司法リスクだ。広島高等裁判所が12月13日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)の運転差し止めを命じる決定を出した。原発の運転差し止めをめぐる訴訟は全国であり、司法判断でいつ止められるかも分からない。

 また原発は、もはや発電単価が“安い”電源ではない状況だ。関西電力が大飯原発1、2号機(福井県)の廃炉方針を固めたように、コストと採算が見合わずに廃炉を決断する原発が続く可能性もある。

 エネ基、パリ協定にこだわるならば、政府にとって原発の新増設、リプレースは欠かせないのだ。

 今後の焦点は、今年度内にもまとまるエネ基の見直しにどこまで踏み込んだ表現を盛り込むかだ。政府関係者によると、「温暖化対策に向けた電源として原発の必要性を盛り込む方向で調整中」とのこと。政府の本気度は、エネ基での表現に示されることになりそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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