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小泉進次郎も沈黙、自民農林族が青果・水産卸売市場改革を骨抜きに

2017年12月19日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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9割近かった青果物の卸売市場経由率は6割まで低下。施設の更新やITへの投資も課題だ Photo:ユニフォトプレス

 安倍政権が進める農政改革が、初めて自民党農林族の抵抗で骨抜きになった。

 政府は8日、青果物や水産物の流通を担う中央卸売市場の改革を決めた。中間流通業者の競争を阻害し、市場衰退の元凶になってきた卸売市場法を廃止する方針だったが、抜本的な改革は先送りした。

 農林族の勝利宣言は露骨だった。「(卸売市場の)業界の皆さんが心配されたことは今回の整理に入れ込んだ」。自民党の野村哲郎農林部会長は市場改革の考え方をまとめた会合で、業界に配慮したことを何度も強調した。

 小泉進次郎氏の後任として8月から農林部会長を務める野村氏は、JA鹿児島県中央会の常務を経て政界入りした筋金入りの農林族だ。野村氏の他にも、安倍晋三首相と距離を置く森山裕元農相ら農林族の重鎮が抜本改革に反対した。

 改革派の農水省幹部は「官邸に対する党の力が強まっていた。ある程度の妥協は仕方がなかった」と悔しさをにじませた。

 農林部会長として農協改革をリードした小泉氏も、議論の開始時こそ市場改革に前向きな発言をしたが、終盤戦は沈黙してしまった。

 そもそも卸売市場の問題は、規制で守られてきた中間流通業者間の競争が少なく、横並び意識がはびこって独自性のあるサービスが出てこないことだった。

 現状の卸売市場でのモノの流れは、出荷者、卸、仲卸、小売り・外食──の順になっており、卸が仲卸を飛ばして小売りに売ったり、仲卸が農家から直接買い付けたりすることは規制されてきた。

「ルールに従ってモノを流していれば一定の手数料が入る。赤字にはなりにくいので、挑戦したり、知恵を出したりすることが少ない」(業界関係者)のが実態だ。

 政府は規制を撤廃することで卸と仲卸などの競争を促し、勝ち残った力のある企業が市場を活性化させる将来像を描いていた。

 だが、農林族が業界に配慮した結果、競争を阻害する規制を市場ごとの自主ルールとして残せるようになってしまった。

農家が出荷先の選別を

 一方、改革は後退したが、卸売市場の横並び意識を打破する仕掛けは辛うじて残った。

 それが、卸売市場ごとにあらためてルールを作り、出荷者から徴収する手数料率やそれによる収入実績も併せて公表する仕組みだ。

 これにより、「運用が不透明だ」と農家から指摘されてきた、卸がJAなど出荷団体にキャッシュバックする奨励金などの実態が明らかになる。一律だったサービスや手数料を変える市場が出てくれば業界が活気づく契機になる。

 だが、それも農家やJAが手数料率などの根拠を問いただし、改善を求めることが前提だ。出荷者が慣習にとらわれることなく、卸売市場以外も含めて、最も有利な販売先と取引することがより重要になる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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