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原油高が日本の陸・空運を直撃、ガソリン電気ガスも値上げへ

2017年12月12日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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OPECとロシアなどの非OPEC加盟国は、2018年まで減産を延長することで合意した。これにサウジの内紛が加わり、原油価格の上昇圧力は一段と強まっている Photo:REUTERS/アフロ

11月30日、石油輸出国機構(OPEC)加盟国を中心とした産油国は、2018年末までの減産に合意。中東の盟主であるサウジアラビア国内の内紛もあり、原油価格の上昇圧力が高まっている。原油のほぼ全量を輸入に頼っている日本も、少なからず影響を受けることになりそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

 原油価格の地合いが変わろうとしている。最大の要因は石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非OPEC加盟国が11月30日のOPEC総会で、2018年末までの減産延長に合意したことだ。

 実は総会開催の数カ月前から、各産油国の首脳が減産延長に合意する旨の発言が伝えられ、9月に40ドル台後半(1バレル当たり。以下同)だった国際原油価格(WTI:ウエスト・テキサス・インターミディエート)は、10月に50ドル台に定着。足元では57~59ドル台で推移している。

 OPECは常々、「加盟各国が自国の事情を優先する、まとまりのない集団」と評されてきた。しかし、そんな評を返上するかのように、今年5月に続いて今回も減産延長で合意できた理由としては、各産油国の財政が、火の車の状態にあることが大きい。

 産油国の財政は原油の輸出に大きく依存しており、原油価格の暴落は、国家運営を直撃する。例えばOPEC加盟国の中で最大の産油量を誇る盟主、サウジアラビアは、歳入の7割強を原油輸出が占める。原油価格が100ドル台から40ドル台へ急落した15年、過去最大の約980億ドル、GDP(国内総生産)比にして約15%にもなる財政赤字を計上した。

 この危機的状況は、政治的対立すら乗り越えてしまう。事あるごとに対立してきた中東の二大国、サウジとイランも、原油価格のこととなると話は別。イエメンやレバノンで繰り広げている代理戦争を脇に置き、両国はぴたりと足並みをそろえた。

 これ以上、原油価格低迷が続けば国が持たない──。そんな背に腹は代えられない産油国の事情が透けて見える。

 加えて、今回の価格上昇には特殊要因もあった。それがサウジの内紛である。

 11月4日、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が、国内の汚職を一掃すべく200人以上の王族や閣僚を次々と拘束し、首都リヤドにある超高級ホテル、ザ・リッツ・カールトンに“収監”したのだ。

 ムハンマド皇太子は今年6月、31歳の若さで就任した、今、中東で最も注目されるリーダーだ。そんなムハンマド皇太子の狙いは、王族や政権内の反体制派を失脚させて権力基盤を強化することと、国民の不満解消にあったといわれている。

 拘束された者のほとんどは、取り調べ後に不正な蓄財を認め、全額を国庫に納付するという釈放の条件をのんだ。得られた総額はなんと1000億ドル。サウジの15年の財政赤字額を帳消しにするほどの“臨時歳入”を手にしたのだ。

 サウジでは原油価格低迷を受けて行政サービスがカットされており、その上、若年層の失業率も高止まりしている。そんな中で行われた粛正と財産没収は、国民が留飲を下げるには十分だった。中東の専門家であるインスペックス特別顧問の畑中美樹氏は、「ムハンマド皇太子は狙い通りの成果を得られたはずだ」と解説する。

 こうした一連の内紛を、「市場は価格上昇材料として捉えた」(野神隆之・石油天然ガス・金属鉱物資源機構主席エコノミスト)ことから、今につながる原油価格の強気相場が形成されていった。

陸運、空運を直撃
ガソリンに電気
ガス代も値上がりへ

 市場関係者の話を総合すると、この1年半、45~55ドルで形成されていたボックス圏相場が、55~65ドルに一段階上がったという見方が大勢だ。50ドルを超えると北米でのシェールオイル生産が活発化するため、そのまま価格が上がり続けることはないとみられている。

 だが、長らく40ドル台で恩恵を受けてきた日本の産業界にとっては、原油価格上昇は逆風となる。

 遠洋漁業を営む水産業者や、そこから原材料を仕入れている食品加工メーカー、燃料費の価格が業績に大きく影響を及ぼす陸運・空運業界は原油価格上昇の影響をもろに受ける。また原油を主原料としている化学業界なども影響を受けるだろう。

 個人も無関係ではない。代表的なのはガソリンや灯油、電気やガスの価格だ。

 ガソリンと灯油はすでに12週連続で店頭価格が値上がりしており、ガソリンは2年4カ月ぶりの高値圏にある。石油元売り業界の再編が進んだことで、石油流通市場では安売り競争が起きにくくなっており、今後も石油製品全般の高止まりが続くとみられている。

 電気やガスの料金は、原材料費を末端価格に反映させる制度がある。原材料費の多くは原油価格に連動しており、値上がりは確実だ。

 18年に向けて、原油価格は60ドル台半ばまで上昇するという見方も出ている。原油価格の上昇が、日本の企業・個人の財布を直撃する、厳しい冬の到来となりそうだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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