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銀行の批判を突き放す黒田日銀、相変わらずの「冷戦」いつまで

2017年12月12日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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黒田日銀と、銀行をはじめとした民間金融機関との「没コミュニケーション」はいつ改善に向かうか Photo:REUTERS/アフロ

 11月下旬、日本銀行の職員から自民党の政調幹部らに、ある「資料」が届けられた。

 A4判5枚つづりの紙に、為替相場の推移や日米欧の株式市場の動向、企業の資金繰りの実態などのグラフが並ぶ中で、ひときわ目を引いたのが、日本国債の利回り曲線(イールドカーブ)について示した図だ。

 日銀が昨年9月に導入した、長短金利操作(イールドカーブコントロール)の概要を、わざわざ参考資料で解説しながら、資料提出前日の利回り曲線を前の年と比較し、いかに狙い通りに機能しているかをアピールするものだった。

 そうした資料を、なぜ今示す必要があったのか。そこには、昨年のマイナス金利導入以来収益悪化に苦しみ、恨み節が絶えない金融機関をけん制したいという、日銀の意図が見え隠れする。

 それを読み解くカギになるのが、11月13日の黒田東彦総裁の講演だ。黒田総裁は講演の中で「(銀行の)預貸金利ざやの縮小を通じて(中略)金融仲介機能が阻害され、かえって金融緩和の効果が反転する可能性」という、金融緩和の副作用(リバーサル・レート理論)に珍しく言及している。

 銀行などからの批判に配慮したように聞こえるものの、そう素直に受け止めたのは実は「少数派」(メガバンク幹部)だ。

 なぜなら、日銀として結局強調していたのは、イールドカーブは適切な水準にあり、かつ「現時点で金融仲介機能は阻害されていない」ということだったからだ。

 つまり、金融機関は副作用を前面に出して日銀を批判し、金利の正常化を促したいのだろうが、そうする状況にはないとあらためて突き放しているわけだ。冒頭の資料は「われわれは間違ってないですよね」と、政治サイドに念を押しているようにも映る。

テーブル下で蹴り合う仲

 一方で、黒田総裁が副作用に言及したことによって、市場では日銀が金融緩和の「出口」を見据え始めた、との観測が図らずも広がってしまった。

 出口戦略をめぐっては、日銀の「逆ざや」リスクが常に付きまとっている。日銀が保有する国債の平均利回りは、9月末時点で0.27%まで低下。緩和策の縮小に伴って、付利(銀行などが日銀の当座預金口座に資金を入れたときに付く金利)を段階的に引き上げれば、金融機関に支払う金利分を、保有国債の利息から得られるお金や積み立てた引当金などでは賄い切れず、収支がマイナスになるという状況が他国の中央銀行よりも発生しやすい。

 想定以上に金利や物価上昇が加速することで、逆ざやが広がる事態を避けるためにも、国債市場に深く関わる金融機関との密な対話は不可欠だ。だが今なお目に付くのは、両者が陰で冷たい視線を送り合っている姿だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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