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「不正が起きにくい社風」を反映した初の割安株ランキング

2017年12月11日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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『週刊ダイヤモンド』12月16日号の第1特集は「バブル相場の勝ち抜け方」です。16連騰を演じた日本株に最高値を更新中の米国株。仮想通貨ではビットコインが爆騰し、不動産も都心中心に過熱の度を強めています。バブルがささやかれる4つの市場。割高感は出てきたが買い場もあります。バブル相場の勝ち抜け方をお届けします。

機関投資家が注目した口コミ470万件
深層学習×統計で初の割安株ランキング

写真はイメージです

 神戸製鋼所、東レ、三菱マテリアル、日産自動車、スバル──。素材メーカーから自動車メーカーまで、日本の名門企業がデータ改ざんや無資格検査といった不正に手を染め、市場からの信頼を失墜する事態がここのところ頻発している。

 こうした企業の株価は当然、急落の憂き目に遭う。

 投資家としては、そんな「外れ株」など絶対につかまされたくない。とはいえ、公表されている財務諸表のデータから不正の端緒をあぶり出すことは難しい。不正を生む土壌はその企業に根付く「組織文化」や「社風」といった定性情報に大きく左右されるため、定量情報には表れにくいからだ。

 従来の企業分析では、数値化が難しい定性情報はほとんど活用されてこなかった。

 では、どうしたら不正を生みやすい組織文化や社風の企業を把握できるのか。またその逆に、どうしたら良い組織風土を持つ企業を見つけることができるのか。それが分かれば、おのずと高い成長が見込める企業も見えてくるはずである。

 数字では見えない定性情報の重要性が増す中、にわかに注目を集めているのが、国内最大級の口コミサイトを運営し、470万件に上る社員の口コミと評価スコアを持つヴォーカーズだ。

 同社が蓄積してきた膨大な量の口コミデータは、これまで転職・就職市場で活用されてきた。組織体制や経営の問題点、ワーク・ライフ・バランスなどについての現役社員の生々しい本音は、新たな職場を検討する際の判断材料としてすっかり定着したといえる。

 実のところ、こうした口コミデータは企業分析をする上でも“宝の山”。そこに目を付けたのが海外の大手金融機関だ。日本の株式市場を分析するためのビッグデータとして、ヴォーカーズの口コミを活用しているという。他にも、ヘッジファンドや大手保険会社も株式投資などのために関心を示しているという。

 ビッグデータやAI(人工知能)を駆使して運用することが当たり前の時代に突入した今、一部の金融関係者の間では、口コミという定性情報が投資判断の差別化につながるとの期待感が高まっているのだ。

ヴォーカーズが口コミを定量化
企業風土の独自スコア開発に成功

 ヴォーカーズはこのほど、企業の信用分析を手掛けるクレジット・プライシング・コーポレーション(CPC)の協力を得て、最新の「ディープラーニング(深層学習)」と主観的確率を扱う「ベイズ統計」で口コミデータを解析。企業の組織文化を時系列で定量化した「VCPC組織スコア」という、これまでにない新たな指標の開発に成功した。

 このスコアが高いほど「良い」組織風土の企業であり、低いほど「悪い」企業となる。これから資産運用会社やヘッジファンドなどへの営業を本格化させていく方針だという。

 VCPC組織スコアについて、CPCの西家宏典氏は「口コミデータに対し、ディープラーニングで文章ごとにポジティブかネガティブかを判定しました。その上で、それぞれにポジティブ確率を付与して、投稿の裏に潜む構造を解析しました。その結果を企業ごとに集計したものが、VCPC組織スコアになります」と解説する。

 ネックとなったのは、口コミ評価の投稿者が多くなるほど企業の個性が見えづらくなってしまう点だった。「それを防ぐためにスコア開発では、ベイズ統計や時系列解析も取り入れました」と西家氏は振り返る。

 また、テキストマイニング(文字情報からの情報抽出)では、約2万文章の学習データによってモデルを作り、さらに約5万文章を使って精度を検証。その上で、約3000社分の計53万件もの口コミデータを解析しており、膨大な手間を掛けて口コミの定量化を実現したという。

 では、口コミから生成したこのVCPC組織スコアは企業分析の新機軸となり得るのか──。

 検証したところ、企業業績との相関が明確に存在することが確認されたという。

 下の図を見てもらいたい。これは横軸にVCPC組織スコア(企業をスコア順に10段階に分類。右に行くほど高ランクの企業群)を、縦軸に業種超過ROA(業種ごとの平均ROA〈総資産利益率〉に対する各企業の超過割合)を取ったグラフだ。

©ダイヤモンド社 2017 禁無断転載

 スコアが高い企業群ほど業種超過ROAが高くなっているのが分かるだろう。

©ダイヤモンド社 2017 禁無断転載

 また、株式リターンとの相関性があることも確認された。

 時価総額の上位1000社を、VCPC組織スコアの高低と、期初の業種超過PBRの高低によって4グループに分けて、株式リターンを比較した場合、低PBR(割安)・高スコア銘柄が最もリターンが高く、高PBR(割高)・低スコア銘柄が最もリターンが低い結果となった(右図参照)。

 つまり、割安銘柄の中からさらにスコアの高い銘柄をピックアップして投資すれば、より高いリターンが期待できるというわけだ。

口コミスコアで割安、高配当の
最先端ランキングを初公開

 週刊ダイヤモンドは今回、両社の協力を得て、VCPC組織スコアの上位133社を抽出し、三つのランキングを作成した。

 ランキングに当たって使用したのはPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、そして配当利回りという三つの指標だ。

 PERは、企業の収益に対して株価が割安かどうかを判断する指標で、「株価÷1株当たり純利益」で算出する。1株当たりの購入代金(株価)を何年分の利益で回収できるかを示しており、業績面から株価を判断できる。数値が低いほど割安とされる。

 PBRは、企業の時価総額が実際の純資産と比べてどれくらい割安かを示す指標だ。「株価÷1株当たり純資産」で算出する。現時点で企業が解散したときに株主が受け取る1株当たりの金額であり、企業の資産内容から株価を判断することができる。1倍を下回ると割安とされる。

 ただし、PBRが1倍未満の場合でも即買いは禁物だ。例えば、赤字続きの企業は純資産が年々減り続けており、破綻リスクが高まる。資金繰りに窮している倒産寸前の企業も同じだ。

 配当利回りは、株価に対する年間配当金の割合を示しており、「1株当たり配当金÷株価」で算出する。現在の株価で投資した場合、1年でその何パーセントを回収できるかが分かる。2%なら50年分の配当金で資金を回収できる。

意外な企業がランキング上位入り
銘柄選びのヒントに

 ここからは、VCPC組織スコアを活用して週刊ダイヤモンドが作成した最先端の優良株ランキングの一部を見ていきたい。

 次ページの図のランキングは、企業文化が超優良なVCPC組織スコアの上位133社を、PERが低い順にランキングしたものだ。

©ダイヤモンド社 2017 禁無断転載

 1位は不動産デベロッパーのコスモスイニシア。前社名はリクルートコスモスで、同社の未公開株がリクルート事件の発端となった。リーマンショック後の2009年に事業再生ADR手続きを申請し、13年にADR債務を完済した。

「旧リクルート文化の会社で、若手に与えられる裁量が大きいため、実践形式でビジネスの経験を積むことができる。社内のコミュニケーション量も多く、和気あいあいとしている」(営業、在籍3~5年、男性)など風通しの良さや、若手に仕事を任せる自由闊達な風土を評価する口コミが目立った。

 2位の三井住友建設は、「昔ながらの良い意味での三井の社風、住友の社風があり、それが精神的支柱となっている」など、旧財閥系の安定した企業文化を評価する声が複数あった。

 トップ10には三井物産、伊藤忠商事、三菱商事の総合商社勢が入ったが、この3社は週刊ダイヤモンドが作成した、他二つのランキングでもランクインした。商社強し!意外な企業もランクインしており、口コミと併せて読み解けば、銘柄選びのヒントになるだろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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