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巨大ファンドが「石油投資引き揚げ」でも危機感薄い国内元売り

2017年12月11日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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今期の第2四半期決算が好調だった元売り各社。世界的な“脱石油”の動きに、どう対応していくのだろうか

 世界的な“脱石油”の予兆だろう。世界最大の政府系ファンド(SWF)のノルウェー政府年金基金が、石油メジャーのエクソン・モービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、シェブロン、BPへの投資を引き揚げる方針を、英国の経済紙・フィナンシャルタイムズが伝えた。

 北海油田を有する産油国のノルウェーが、「石油は今後儲からない」と判断したのだ。

 今回の投資引き揚げは、石油メジャーの全株式の計約6%にあたり、売却総額はなんと120億5000万ドル、日本円にして約1兆3400億円に上る。

 なぜ儲からないと判断したのか。「背景にあるのは“新”ピーク・オイル論でしょう」。こう解説するのは、三井物産と三井石油開発で40年以上、石油を中心にエネルギー関連業務に従事したエネルギーアナリストの岩瀬昇氏だ。

 “旧”ピーク・オイル論とは、地球上の石油資源は有限で、いつかは枯渇するという考え方。資源が少なくなれば、需要が供給を上回るため、石油価格は高くなる。

 一方の“新”ピーク・オイル論は、資源が枯渇するより前に、需要がピークを迎える説だ。こちらは対照的に、供給が需要を上回るので、いずれ石油価格は下落していくことになる。

 需要のピークをいつ迎えるかはさておき、世界的には“新”ピーク・オイル論が優勢になりつつある。

 というのも、ガソリンやディーゼルなど伝統的な内燃機関車から電気自動車(EV)にシフトしたり、再生可能エネルギーなどクリーンエネルギーの技術革新が進んだりすることで、石油の需要は落ちていくとされているからだ。

 ちなみに北海油田の指標となるブレント原油価格の推移をみると、2012年に1バレル当たり111ドルを突破したが、その後は下落傾向が続き、16年1月には20ドル台前半まで落ち込んだ。今年に入ってからは、11月は60ドル台前半で推移し回復基調に戻してはいる。

 だが、ノルウェー中央銀行は、今回の売却によって原油価格の下落によるダメージを軽減できると考えている。“新”ピーク・オイル論に基づき、将来的に原油価格が100ドルを突破するような想定はしていないのだ。

 また、ノルウェー以外にも、“脱石油”の動きを見せている国がある。日本の最大の原油輸入国、サウジアラビアだ。

 汚職根絶を目的に有力王子や現職閣僚の一斉拘束を主導したムハンマド皇太子は、長期経済計画「ビジョン2030」を策定した。その大きな目玉は、国営石油会社サウジアラムコの株式公開(IPO)だ。

 IPOは、政府の歳入の9割を占める原油収入に頼らない国づくりを目指す方針の一環だ。このIPOについて、中東情勢に詳しいインスペックス特別顧問の畑中美樹氏は「原油価格が高いうちに株式を公開し、多くの収入を得ようというのが狙いだ」と指摘する。

 つまり、ムハンマド皇太子の念頭にあるのも、新ピーク・オイル論なのだ。

危機感薄い国内元売り

 国内はすでに、石油の需要のピークを迎えている。自動車の燃費が向上したほか、人口減少で需要は伸びずに、1999年度を境いに年率2%ずつ下落している。

 しかし、“新”ピーク・オイル論に対する国内の石油元売り大手4社の危機感は薄い。

 今年の夏ごろから欧州をはじめ、中国、インドと世界的なEVシフトが鮮明になった。人口が減少し、国内のガソリン需要の下落が続く中、さらに減少傾向が加速する恐れも予想されるが、元売り各社は「EVに切り替わるのは、まだ先の話」とどこか他人事だった。

 確かに、11月に発表した国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー展望2017」は、「2040年まで、石油の需要は伸び続ける」としていて、「EVは急速に普及するが、石油を過去の遺物を片付けるのは時期尚早」と指摘している。

 国内元売り各社も、東南アジアをはじめとする新興国での石油製品の需要はこれからも旺盛とみていて、すでに出光興産はベトナムに製油所やガソリンスタンドを展開している。他社も石油製品の輸出など海外進出を目論む。

 もっとも、海外事業にはカントリーリスクが常に付きまとい、コストが高い日本製品が海外での競争に勝てるかは見通せない。

 世界的なEVシフトが加速し、さらなる技術革新が進む可能性もあり、「世界的な需要のピークは予想より早まる」とみるエコノミストやアナリストは少なくない。

 国内石油元売り大手4社の2018年3月期第2四半期の決算は好調で、いずれも通期予想を上方修正した。しかし、浮かれている場合ではない。業績が好調な時ほど、将来を見据えたビジネスモデルを考えておくべきだ。本格的な“脱石油”の足音は着々と近づいている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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