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新国立競技場やっぱり無駄だらけ、五輪後の採算に赤信号

2017年11月28日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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新計画決定後、急ピッチで建設が進む新国立競技場。迷走の末、五輪後の利用方法が決まったが、クリアすべき課題は山積している Photo by Kosuke Oneda

 東京五輪が終われば、陸上競技の聖地で陸上競技ができなくなる──。

 11月13日、紆余曲折を経て、ついに新国立競技場の五輪後の利用方法が閣議決定された。陸上トラックをつぶして観客席を追加し、サッカー、ラグビーなどの球技専用にする。

 総工費3000億円超といわれた巨額の旧建設計画が、世論の批判にさらされて2015年7月に白紙撤回された後、同年12月に総工費1500億円の新計画が決定。その後、着々と建設が進む一方で、2年以上にわたり五輪後の利用方法が決まらなかった。最初の計画時点で、日本スポーツ振興センター(JSC)や東京五輪の大会組織委員会らが、陸上も、ラグビーも、サッカーも、各競技団体の要望を丸のみして全てを盛り込んだところから、迷走が始まった。

赤字見越し運営権売却か

 振り返ると、新競技場は本当に無駄が多い。

 すぐ近くに秩父宮ラグビー場があるにもかかわらず、19年のラグビーワールドカップを是が非でも新競技場で開催したいという意向が働き、8万人規模の巨大競技場を造らざるを得なくなった。そのため敷地が不足し、陸上の国際大会に必要な常設サブトラックを造れず、五輪後にすぐ壊す仮設サブトラックに約100億円ともいわれる資金が投じられてしまう。

 また、JSCが14年7月にはじき出した新競技場の年間の収支計画では、陸上の興行イベントが54日、ラグビーが5日、サッカーが21日で3.88億円、加えてコンサートが12日で6億円、その他イベント観戦のシートの年間契約や企業のスポンサー収入などで38億円の収入に対し、支出は人件費など35億円、差し引き約3億円の利益を見込んでいた。15年には、利益が下方修正されてわずか3800万円にとどまっている。ただし、これは開閉式屋根を付けるという旧計画を前提とした試算だ。「新計画の収支見込みは五輪後の利用の詳細が未定だったので、まだ出していない」(JSC広報担当)。

 陸上競技が減る分、コンサートを増やすしかないが、新競技場の屋根は観客席にしかない。悪天候で数回中止にでもなれば、たちまち赤字に転落する可能性が高い。そんな状態が続けば、JSCだけで競技場を維持できない。そのためか、運営権を国立代々木競技場などと一括して民間に売却する見込みだ。20年秋ごろをめどに優先交渉権者を選定する。ネーミングライツの導入も検討中で、「国立」の名が消える公算が大きい。

 迷走を重ねた結果、使い勝手が悪くなり、採算が取れそうにない新国立競技場という五輪のハードのレガシーは、捨てざるを得なくなった。もしもこれでソフト面でも何も残せなければ、東京五輪は、良くも悪くもレガシーを残さない初めての大会になるだろう。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 大根田康介)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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