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今年は松山!JAWS FESTA 2017レポート 第7回

JAWS FESTAで友岡賢二CIOがぼっちに熱いエール!

武闘派CIOが「コミュニティに参加する理由」を経営理論からひもとく

2017年11月27日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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11月4日、松山で開催された「JAWS FESTA 2017」の基調講演に登壇したのは、武闘派CIOとしておなじみフジテックCIOの友岡賢二さんだ。「今日はAWSの話なにもしません(笑)」と一声を上げた友岡さんは、JAWS-UGや地方コミュニティにまだまだ多いぼっち参加者の重要性を経営理論からひもときつつ、自身の仕事にとまどう若い人に向け、自身の経験に基づいた現実的なアドバイスを送った。

フジテックCIO 友岡賢二さん

武闘派トークを封印した友岡さん、コミュニティの講義を披露

 松下電器産業(現パナソニック)、ファーストリテイリングを経て、「セカエレ」のコピーで知られるエレベーターメーカーのフジテックでCIOを務める友岡賢二さん。東急ハンズの長谷川秀樹さんと日清食品ホールディングスの喜多羅さんとともに、古いITを新しいITに変える「武闘派CIO」を自称し、さまざまなITイベントで登壇しているのはご存じの通りだ。しかし、今回の講演はおそらく普段友岡さんが話している内容とは違う、JAWS-UGのエンジニアや地方コミュニティのメンバーにフォーカスしたコンテンツだった。

 友岡さんは基調講演を担当した理由を、「すべてはヒデキから始まった」と紹介。高知出身でもある小島英揮さんなどから基調講演を依頼され、喜んで引き受けたと説明した。そもそも友岡さんの出身も広島県の呉市で、JAWS FESTA開催地の松山とは浅からぬ縁。「松山とは親戚みたいなもんで、船で1時間かからない。ここからノープランという方は、船で呉に行ってください。潜水艦も間近で見られるし、音戸大橋も下から見られます」とさりげなく(?)生まれ故郷をアピールする。

すべてはヒデキから始まった(このパターン、わりと多い)

 そんなアイスブレイクとともに、友岡さんは60分の内容をおおまかに説明する。まず前半はコミュニティになぜ来るべきか?という話、そして後半に武闘派CIOとしての本業である情シス再生の話、日常業務で使える経営理論のフレームワーク、最後は若い人に向けたアドバイスという流れになる。「笑顔でカミソリトーク」という芸風を封印した友岡さん、今回は大学教授のようにロジカルに講義を展開する。

最新の経済理論は合理的な判断をベースにしてるわけではない

 前半のお題はコミュニティの話。「ここに来ている人はいいんです。問題はここに来ない人たち。単に『JAWS、いいよ』と言ってもなかなか来ないので、なぜコミュニティに来なければいけないかを経営理論で理論武装しようと思う」という試みだ。

JAWS FESTAに来た方がいい理由を理論的に説明できるようになるのがゴール

 なぜ経営理論を遡上に上げるのか。最初に例として上げたのはアメリカのスーパーマーケットを見てカンバン方式を思いついたトヨタ自動車の創業者。そしてアメリカのスーパーマーケットとして最大規模であるウォールマートの創業者は隣のスーパーマーケットを模倣した。「彼は自家用機を持っているので、いいスーパーがあればそれを見て真似したんです」(友岡さん)。

 ここから導き出されるのは、模倣がイノベーションの源泉になっている事実。今回の友岡さんの話も「模倣の経営学」(井上達彦氏)とハーバード・ビジネス・レビューの「世界標準の経営理論」(入山章栄氏)からコミュニティに関する部分をピックアップし、友岡流に解釈するという内容になると紹介した。「コミュニティがなぜいいのか説明するのに、経営理論の研究成果がけっこう使えるよという話です」(友岡さん)。

 友岡さんはまず経営理論のポジショニングから説明する。もともとケインズの経済学は「合理的に利得の最大化を図る」というところからスタートしているが、成功している企業は必ずしも合理的な判断をしているわけではないという。「関係性のネットワークの中で取引を増大させ、必ずしも合理的でない意思決定で、取引を行なうというのが新しい見方」(友岡さん)。その意味で、経済学と社会学を合わせたような部分に経営理論の面白さがあり、人間の心理的な側面が経済学に取り入れられ、今の経営理論が成立しているという。

イノベーションに必要な弱いつながりと強いつながり

 こうした中で、友岡さんがピックアップした1つめのトピックが「弱いつながりの強さ理論」だ。

 人のグループには「強いつながり」と「弱いつながり」がある。強いつながりは日本企業で、典型的なタバコ部屋での仲間うちが該当する。一方、弱いつながりは、交流頻度が低いかわりに多様性がある。これらのグループを結ぶ人がいわゆる「ブリッジ」で、ブリッジが発生すると新しい知恵が生まれやすいということが研究の成果でわかっている。そして、ブリッジは強いつながりでは発生しにくく、弱いつながりでこそ発生しやすいという。「今日のJAWS FESTAは初めて来た人もいっぱいいるので、弱いつながり。ブリッジが発生しやすい」と友岡さんは指摘する。確かに、東京と地方のエンジニアが出会う頻度を考えれば、JAWS FESTAはまさに弱いつながりだ。

ブリッジがイノベーションを生む。そして弱いつながりでブリッジは発生しやすい

 こうした弱いつながりはSNSとの相性もよい。「SNSの役割は情報を伝搬すること。弱いつながりの中で、何万件というリツイートが繰り返される。爆発的な広がりには、弱いつながりが必要だということが研究の成果でわかってきた」(友岡さん)。これが弱いつながりの強さ理論だ。イノベーションの創出においても、この弱いつながりがたくさん必要になるという。

 一方で、イノベーションを組織として実行するには強いつながりが重要だ。「大企業がシリコンバレーに人を派遣したり、オープンイノベーションで外部とつながろうとしているのも、まさに弱いつながりを企業の中にいかに作るかを意識しているから」(友岡さん)。こうしたつながり理論を考えれば、会社の外に出て、弱いつながりを作ることの重要性が理解できる。

イノベーションを生み出す弱いつながり、実行する強いつながり

 そして、JAWS-UGに関して言えば、地元のJAWS-UGに参加して強いつながりを作り、全国のユーザーが集まるJAWS FESTAやDAYSで弱いつながりを構築する。「コミュニティに参加して、弱いつながりをいかに作るかを意識してほしい。でも、会社の中ではぼっちはよくないので、実行のための強いつながりを作りましょう」というのが友岡さんのオススメだ。個人的には、1年に1回会うか、会わないかという地方エンジニアと、どうつながっていこうかと考えていたところでもあったので、弱いつながりの話は興味深かった。

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