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ビッグデータとAIで一歩先を行くブッキング・ドットコムのIT戦略

2017年12月04日 12時00分更新

文● ドリル北村/ASCII編集部

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ビッグデータとAIは
すでにアプリで実用化されていた

―――収集したビッグデータは、どのように活用していますか?

【エンギスト】 ユーザーごとのカスタマイズされた旅行の提案や、このユーザーにはこの観光地がお勧めといった提案にビッグデータが活用されています。

同じ目的地に1回行った人でも、5回行った人でも、同じインスピレーションを与えられるようにするとエンギスト氏は語る

【エンギスト】 たとえば海の画像ばかり見ている人やマリンスポーツを多く検索する人には“海”に関する旅をお勧めとして提案します。そういう人が見たことも聞いたこともないような素敵な場所を推薦できる、つまり“顧客が世界を発見できる”手助けを我々は行なっています。

 これらに活用するデータは、情報を提供することを許可した人のみから収集しています。不特定多数の人から、知らない間にデータを収集することはありません。

見たい景色や行きたい場所といった漠然としたキーワードからお勧めの旅行先を提案。このお勧めの場所というのは、実際にそこに行った人のレビューをもとに作られているので確度が高いそうだ

―――AIは、どのようなところで活用しているのでしょうか?

【エンギスト】 Booking Assistantという、会話インターフェースで利用客の質問に答えるスマホアプリがあります。これはソフトウェア(機械学習AI)がバーチャルに利用客と対話する機能で、質問と予約変更はすべてAIが対応します。AIでは答えられない質問があった場合は、直接ホテルにつながるようになっています。

会話形式でで旅行者の質問に答えるBooking Assistant。対応はAIが行ない、AIで対処しきれない事象があった場合は、担当者や提携ホテルに直接つながる仕組みだ

 あいにく現在は英語のみの対応になります。ブッキング・ドットコムの利用者の48%は英語を母国語にしていないので、それらの人がしゃべる英語のアクセントなどを盛り込んでいかなければならないところが難しく、そのための認識精度の向上に時間がかかっています。今後は日本語を含めた主要な言語にも対応していきたいと考えています。

―――ほかにビッグデータとAIの活用事例はありますか?

【エンギスト】 Booking Experiencesという、お勧めの観光スポットをユーザーに提案し、その入場券を手配するアプリをテスト的に導入を開始しています。これを利用すれば、現地で並んで入場券を買う必要がなく、QRコードを見せるだけで支払いができます。

Booking Experiences。滞在先でアプリを起動するだけで観光スポットをリスト化して送ってくれるので、旅行前にガイドブックなどで観光スポットを調べる必要がない

 ここでもビッグデータとAIが活用されています。検索上位にヒットする言葉や、利用者の過去の体験や嗜好を学習し、その人に最適な観光スポットを提案します。

 まだ未実装ですが、いずれデータを蓄積してAIが学習を進めていくと、本人の位置情報や、その時の気象条件なども考慮に入れるようになります。さらに学習が進むと、施設にどれくらいの訪問客がいるかを調べ、混雑していないか、列に並ばずにすむかなどもAIが考えます。最終的にはAIの質をそこまで高めていきたいと考えています。

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