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嫌中・嫌韓をカネに、「愛国ビジネス」はなぜ盛り上がったのか

2017年11月20日 06時00分更新

文● 岡田光雄(ダイヤモンド・オンライン

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近年、“愛国”を商材としたビジネスが流行している。書店の棚にはセンセーショナルなタイトルの“嫌韓・嫌中”本が並び、少し前に話題となった森友学園(塚本幼稚園)は、園児たちに熱心な愛国教育をしていた。一体どういう背景があって、愛国に日本人の需要が集まるようになったのか。専門家に話を聞きながらその歴史をたどってみた。(岡田光雄/清談社)

嫌韓本や中国脅威本の売上げをみれば
愛国市場の盛り上がりが分かる

今やテレビには愛国番組が溢れ、”ヘイト本”がベストセラーとなる時代に。リベラルの失墜や、中国・韓国の反日運動激化などが、愛国ビジネスを加速させた。(写真はイメージです)

 愛国ビジネスとは、その名の通り国民のナショナリズムをあおり、消費行動につなげていくビジネスモデルのこと。

 この言葉を聞いて、まず思い浮かべるのがお隣・韓国の状況だろう。今年はそれほど激しくはないようだが、過去には太平洋戦争が終結し、日本統治から解放された1945年8月15日を祝して、韓国産コーラ「815コーラ」が販売されたり、1919年の独立運動記念日である3月1日(三一節)には、デパートやスーパーで安売りイベントを開催していたこともある。

 中国でも昨年、運営内のトラブルでAKBグループから離脱した「SNH48」が、今や中国の愛国歌をカバーするなど、プロパガンダ・グループに成り下がってしまったと嘆く日本人のファンもいる。

 では、日本における愛国ビジネスの実情はどうだろうか。マーケティング・コンサルタントの大西宏氏(ビジネスラボ代表取締役)がこう解説する。

「今や日本でも嫌韓・嫌中サイトで広告収入を得たり、保守系番組『そこまで言って委員会NP』が高視聴率を獲得するなど、“愛国”をビジネスとする市場が広がってきました。森友学園も保守派の父兄を対象にした子育てビジネスといえるでしょう。愛国ビジネスに明確な定義はありませんが、近年の嫌韓本や中国脅威本の書籍売上げをみれば、その市場規模の大きさは分かると思います」

リベラルの失墜に反日運動激化…
ここ数年で愛国ビジネスは加速した

 出版取次大手の日本出版販売が発表した今年の上半期ベストセラー新書によれば、『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(ケント・ギルバート、講談社)が40万部以上を売り上げて2位を記録。いわゆる“ヘイト本”が、大ヒットしているのだ。

 こうした書籍だけに限らず、今や「愛国マグカップ」「靖国神社Tシャツ」「大東亜共栄圏パーカー」なる愛国グッズまでもが販売されているという。では、なぜ日本における愛国市場はここまで大きく成長したのか。大西氏はその原因の一つをこう分析する。

「バブル崩壊以降、日本経済が失速したことで若い人の所得は低下し、将来、年金すらもらえるか分からないという、先行きの見えない不安が蔓延しました。日本人が自信を失う中、2009年に発足した民主党政権は世論の支持を得られず、朝日新聞の『慰安婦報道問題』などリベラル派のオウンゴールが続きました。さらに海外に目を転じれば、中韓の反日運動などもありました。これらの要因が相まって、日本人の中には“アイデンティティー”を求めて保守化に走った人が多かったように思えます」

 確かに、今やテレビで当たり前となった“日本スゴい!”推しの番組だが、その元祖である『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京)が放送開始されたのが13年。時系列的には民主党政権(09〜12年)が終わって直後のことだが、これも日本人がアイデンティティーを求めた結果なのだろうか。

メディアを巧みに操る右派の扇動
紙媒体にこだわった左派の転落

 一方、日本で愛国ビジネスが浸透した理由についてはこんな見方もある。

『憎悪の広告』(合同出版)の著者・能川元一氏は、昨今の愛国ビジネス急拡大の背景の一つには、インターネットを使った右派の扇動が多分にあるという。

「歴史上熾烈な争いをしてきた右派と左派でしたが、1995年のインターネット元年以降、右派は動画投稿サイトなどネットでの国民煽動に注力していきました。昔から右派は紙を始めとする既存メディアが左派に牛耳られているという意識が強かったのです。確かに、左派やリベラル派と呼ばれる人たちは紙媒体の活字が好きな傾向があり、それに固執してしまったため、結果的にネットに強い右派の“嫌韓・嫌中”の主張が発信力を持つことになりました」

 総務省の統計によれば、1997年には9.2%だったインターネット普及率(個人)は、2016年には83.5%に急増している。

 インターネット人口が増加すれば当然、こうした扇動記事を目にする母数も増えてくるというもの。それを象徴する事件が、11年に起きたフジテレビへの抗議デモだろう。インターネット上の呼びかけに集まった有志が「韓流ゴリ押しやめろ」「フジテレビの捏造・偏向報道反対」などのプラカードを掲げながら行進し、8月21日のデモの際は約3500人が参加した。

 さらにデモ隊は同年9月16日、フジテレビのスポンサー企業である花王に対しても1000人規模で抗議活動(ネット視聴者は10万人超)を行った。彼らは一種の“圧力団体”のような行動に出たのである。

「今のメディアの多くは、右派からは『お前んところは左だ!』と言われ、左派からは『右だ!』と言われ、苦しい状況に置かれていますが、結局のところ右に傾倒していると思います。要するに保守的なスタンスの方が“損”をしないということでしょうね」(能川氏)

 ただし、裏を返せば、愛国ビジネスは圧力団体に支えられた諸刃の剣ということもできるだろう。主義主張は個人の自由ではあるが、そこにはビジネスの側面もあることを注意した方がいい時代なのかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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