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天皇陛下が遺伝子組み換え米で新嘗祭を執り行なう未来:

日本の農業が危ない

2017年12月01日 07時00分更新

文● 三橋貴明

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●めまいがした「売国条文」

 衛星放送「日本文化チャンネル桜」の番組で、農林水産省の官僚が、

『米について競争力を増していかなければならない』
『花粉症に聞く米などマーケットニーズに向き合っていくことが大切だ』
『色々なセクターの力を総動員する必要がある』

 などと、種子法「廃止」の理由について説明している。

 もっともらしく聞こえるかも知れないが、種子法「廃止」の理由付けには全くなっていない。花粉症に効く民間が開発した種子を全国的に供給したいならば、特定の種子について種子法の対象外にすれば済む話だ。都道府県は種子法の予算を使い、あくまで「国民の生命をつなぐ」ための種子に専念し、花粉症対策など付加価値がある種についてはタッチしなければ済む。

 ところが、結論が種子法の「廃止」なのだ。

 しかも、恐ろしいことに、2017年4月14日に種子法廃止が決定された(施行は2018年4月1日)1か月後の5月11日、またまたとんでもない法律が国会を通ってしまった。「農業競争力強化支援法」である。

 農業競争力強化支援法は、非常に幅広い法律であるため、本書で全容を解説することはできない。とはいえ、同法の中にはひとつ、決定的な「売国条文」が含まれていることを知ってほしい。

『農業競争力強化支援法
第八条 国は、良質かつ低廉な農業資材の供給を実現する上で必要な事業環境の整備のため、次に掲げる措置その他の措置を講ずるものとする。(略)
四 種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進すること。』

 眩暈(めまい)がした。

 農業競争力強化支援法では、過去に種子法に基づき「国民の税金」を使用し、種の生産や研究を続け、都道府県に蓄積された「知見」を民間事業者に提供することが定められているのだ。しかも、外資規制はない。

 正直、これほどまでに露骨な「売国条文」は初めて見た。筆者は「売国」といった強烈な表現を使うのはあまり好まないのだが、農業競争力強化支援法の場合は、他に表現のしようがないのだ。

 種子法の廃止と、農業競争力強化支援法がセットになると、恐ろしい未来が訪れることになる。

 まずは、都道府県に予算が下りないため、現在の高いコストをかけたほ場の管理、審査、種の生産は不可能になっていく。特に、原種、原原種の管理といった、短期的に利益にならない事業から廃止されていくだろう。

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