拠点も維持だが……
NECパーソナルコンピュータでは、山形県米沢市に米沢事業場を持ち、富士通クライアントコンピューティングは、島根県出雲市に島根富士通を持つ。いずれも200万台規模での生産能力を持ち、さらに生産能力を拡張することも可能だ。富士通クライアントコンピューティングは先にも触れたように、デスクトップPCの生産を富士通アイソテックに委託する考えも示している。
拡張性を持った生産拠点を国内に2つ持つことは過剰に映る。会見では、生産拠点を維持することと、工場を閉鎖する計画がないことが示された。富士通が得意とするカスタマイズによる差別化した製品を、継続的に投入できる体制が維持されることになる。しかし、この国内2拠点体制が継続的に続くかどうかは今後の市場動向次第ともいえるだろう。
そして、富士通クライアントコンピューティングは独立した組織体制を維持することも示されたが、レノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータがそうだったように、間接部門を中心に、重複する領域において、人員削減が実施される可能性も捨てきれない。
製品ラインナップや生産拠点の維持は、今後数年にわたり国内のPC市場が成長基調にあることをベースにしている。そして、Mixed Realityなどの新たな技術に対する期待もある。
レノボ・グループ・リミテッドのケン・ウォンシニアバイスプレジデント兼アジアパシフィック地域プレジデントは「日本は世界3大市場のひとつであり、多くのチャンスがある市場」と前置きし、「2020年の東京オリンピックまで勢いは続く。そして日本のユーザーは先進的なテクノロジーを世界で最も好み、品質を望む。世界全体ではプレミアムPCの構成比は17%だが、日本では55%を占める。1人あたりの平均売り上げが最も高いのも日本である」とする。
先送りにされた感のある現体制
2020年にはWindows 7の延長サポート終了を迎え、それに向けた特需も期待される。また、消費税の10%への増税が予定どおり2019年10月に実施されれば、それを前にした駆け込み需要も想定される。
こうした成長が見込まれるタイミングにおいて、製品ラインアップの縮小や、生産拠点の統合などは、戦略的にもマイナスだ。現状を維持する方が得策だといえる。
しかし、2020年を超えたらどうなるだろうか。
1964年の東京オリンピック後の昭和40年不況のような景気低迷が予測されているほか、Windows XPの特需後に見られた23ヵ月連続での前年割れといったPC市場の長期低迷が始まるともみられている。そして、Windows 10になってからは、OSの大規模なバージョンアップが実施されないことから、次の特需は存在しない。
このように国内PC市場の低迷が予測される2020年以降、今回打ち出したような、製品ラインナップの維持、生産拠点の維持といった体制が続くとは考えにくいのも確かだ。
2020年以降、レノボが日本においてどんな体制を維持するのか。そこに大きな変化点がありそうだ。
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