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ライブコマースやD2C、影響力高まる次世代eコマース

連載
ASCII STARTUP 業界ポジトーク

皆さんこんにちは、合同会社pilot boatの納富隼平(のうとみじゅんぺい)です。今回はeコマースについてお話したいと思います。いまさら? と思われるかもしれませんが、eコマースも新しい方法が次々に登場しているのです。今回はそんなスタートアップを紹介していきます。

 アスキー読者の皆様においては、もはや当たり前となったであろうeコマース。日本のEC化比率は10%前後で説明されることが多いですが、その影響力は高まるばかりです。グローバルなECの覇者アマゾンは当日・翌日配送をしたり、日本のECの雄、楽天もさまざまな策を繰り広げています。もちろんそのほかのECからも日々新しい施策が出てきますし、何よりメルカリに代表されるCtoCを無視することはもはや不可能です。

 今回はそんなECの中から、新しい動きを整理したいと思います。

特化型や高額品のCtoCが登場

 まずはCtoC。メルカリのような総合型ではなく、特化型や高額商品向けのサービスが増えてきました。

 たとえば、「メルカリ カウル」や「ブクマ」は書籍などのCtoC。書籍はISBNというコードで管理されています(本の裏にあるバーコードですね)。なので、ユーザーに写真を撮ってもらったりするよりも、バーコードを読み取って画像などを取得したほうが早いし便利です。このように総合型では細かくて対応しきれない分野では、今後も特化型のCtoCは増えてくるでしょう。

 続いては高額品。1個1000円のものなら買い物に失敗してもしょうがないか…となりますが、高級バックだったら失敗はしたくありませんね。ということで、単なるCtoCではなく、間にプラットフォーマーが介入し、鑑定や保証をしてくれるプレーヤーが登場しています。(なので正確にはCtoCではなくCtoBtoCですね)

 「RECLO」や「Retro.jp」は高級アパレル、「キャリーオン」は子供服、「Ancar」は中古車、ALLSTOCKERは建機のCtoCですね。(建機の場合は個人ユーザーじゃないので厳密には違いますがご容赦を)

会話なら、複雑なファッションアイテムを検索可能

 続いては会話形コマース。STYLERは、最近「FACY」にリブランディング。

 FACYは、ユーザーがファッションに関する質問を投稿し、それにアパレルショップが商品を紹介してくれるサービス。質問はチャット形式なので、アマゾンなどの既存のECでは探しにくい「丈が短くてグレーの、ビジネスでもオフでも着られるジャケット」なんていう複雑なオーダーにも対応してくれます。

 FACYアプリにはコマース機能も設置。ユーザーはアプリだけで、質問から購入まで一貫した体験ができるようになりました。もちろんeコマースではなくショップに行ってアイテムを買うことも可能です。

動画配信からそのまま購入体験ができるライブコマース

 最近存在感を増しているのがライブコマース。メルカリやBASEなどのスタートアップに加え、DeNAやヤフーなど大手企業も参入しています。トランスコスモス社が、俳優の山田孝之さんをCIO(Chief Innovation Officer)として設立したミーアンドスターズ社も話題になりました。ライブコマースはテレビさながらのスタジオをもつサービスから、誰でも配信できるようなものまで様々です。

 そんな中、スタートアップで存在感があるのがCandee社が提供する「Live Shop!」。厳選されたモデルやインスタグラマーなどのインフルエンサーが、Candee社のスタジオから番組を配信。その中で紹介したアイテムはアプリ内で購入できる、という仕組みです。ミレニアル世代がテレビを見なくなり、SNSやYouTubeにユーザーが流れていく中、新たなメディアを構築する片鱗を感じています。

 筆者も一度スタジオを見学させていただいたのですが、スタートアップとは思えないほどしっかりした設備。スタッフもテレビ業界出身の方が多いようです。

ファッション・植物・農作物などを消費者へ直接お届けするD2C

 言葉自体は昔からあったのですが、最近なぜか話題に登るD2C。Direct to Consumerの略で、インターネットを使った直販のことです。

 ファッションでは、世界に誇れるMade in Japanアパレルアイテムを提供する「Factelier」、オンラインでカスタムオーダースーツを提供する「LaFabric」、Made in Japanのカスタムできるリストウォッチを提供する「knot」などが挙げられます。

 ファッション以外では、植物の通販サービス「HitoHana」、オーガニック農産物を直接仕入れられる「食べチョク」、農家や漁師の方から直接生産物を購入できる「ポケットマルシェ」などが登場しています。

 D2Cとはちょっと違いますが、ファッションブランドの展示会に一般消費者が参加し、直接商品を予約購入できる「Sof DESIGNERS」などのサービスが出てきています。形はどうあれ、生産サイドとユーザーが直接関わるというスキームはこれからも増えていくと思われます。

月額課金で生活に浸透するサブスクリプション

 ビジネスモデルとしての「サブスクリプション」の適切な日本語訳を存じあげないのですが、「月額課金モデル」と考えていただければ差し支えないでしょう。一度だけ商品を販売するのではなく、定期的に体験を提供するのがサブスクリプションです。

 たとえば高級バックをレンタルする「ラクサス」。ハイブランドのバッグはおいそれと買えませんし、シーズンだってあります。そこで月額6800円を支払えば、バッグを借り放題になる、というのがラクサスです。

 また「エアークローゼット」は、登録された好みのスタイルやお気に入りアイテムの情報から、スタイリストが1点1点アイテムを選定し、毎月ファッションアイテムを送付してくれるサービスです。レギュラープラン9800円のサブスクリプションです。

 ほかにも、歯ブラシのサブスクリプション「BYTAPS」、クラウド型トランクルーム「サマリーポケット」などがあります。スーツ類を展開するAOKIがメンズ向けのビジネスファッションを提供したりと大手も参入してきて、今後もこのモデルは増えるかもしれません。

 ところでこれは宣伝なのですが、過去に「生活体験を変えるサブスクリプションに注目」という記事も書いていますので是非こちらもご覧ください。

興味があるテーマがあったら教えてください

 以上、eコマースの新しいカタチを「CtoC」「会話形コマース」「ライブコマース」「D2C」「サブスクリプション」という分類で紹介してきました。1個1個掘り下げても面白いテーマだと思います。ご興味あれば機会を設けますので、Twitterなどで教えてください。(やる気がもっとでます!)

納富隼平(pilot boat)

著者近影 納富隼平

1987年生まれ。2009年明治大学経営学部卒、2011年早稲田大学大学院会計研究科修了。在学中公認会計士試験合格。大手監査法人で大手電機メーカーを中心に会計監査に携わった後、トーマツベンチャーサポート株式会社に参画。毎週開催ピッチイベントMorning Pitchをはじめ、300超のピッチ・ベンチャーイベントをプロデュース。2017年独立して合同会社pilot boatを設立し、引き続きベンチャー支援に従事する。スタートアップ紹介メディア「pilot boat」、podcast「pilot boat cast」、toCベンチャープレゼンイベント「sprout」を運営。得意分野はFashionTechをはじめとするライフスタイル系BtoCサービス。
2016年NHK「日本のジレンマ」出演。
Twitter: @pepepe_pei

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