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医師会配慮で自虐的販売規制 医療用大衆メタボ薬の悲惨

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店頭では「認定薬剤師にお気軽にご相談ください」というポスターやチラシがあっても、「条件」をクリアして購入できる客はほとんどいない
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 大正製薬と日水製薬が今年4月から発売した中性脂肪異常改善薬「エパデールT」がまったく売れていない。当初は「適正使用調査」という名目で薬剤師の問診や症例報告などを義務づけて発売されたものだが、9月までに両社合わせて、300例を厚生労働省に報告した後、全国一斉発売というスケジュールだった。

 しかし、現時点でまったく届かず、「年内に300例集めるのは絶望的」(関係者)という。早くも業界内では「全国一斉発売は無理」との声が聞こえてくる。

 エパデールTは、持田製薬が医療用医薬品として製造販売していた高脂血症・閉塞性動脈硬化症治療剤「エパデール」を大衆薬に転用した薬剤。いわゆる、「スイッチOTC」と呼ばれる薬の一つだ。

 生活習慣病を対象とした医療用医薬品を日本で初めて大衆薬に転用した薬として、鳴り物入りで発売された。厚生労働省としては医療費削減の“切り札”として、大衆薬業界や薬局側でも話題の新製品として、期待されていた。

極めて厳しい購入条件

 それがなぜ、まったく売れないのか。理由は明白だ。購入のハードルが極めて高いからだ。

 まず、発売している店舗数があまりにも少ない。大正製薬で定めた講習を受講して試験をクリアした認定薬剤師がいない店は販売できない。大正製薬によれば、認定薬剤師は全国で約4000人に対し、店舗数は約1800店。単純計算すれば満遍なく認定薬剤師を配置できそうなものだが、実際には偏りがあり、基準をクリアした店舗は首都圏に集中している。

 次に問題なのは、「購入条件」の厳しさだ。血液検査を受けて、中性脂肪値が一定基準(150ミリグラム/デシリットル)以上と異常値ではあるが、医師の診断で、「すぐに通院して治療するほどではない」という人でなければ購入できない。しかも、初回に購入して3カ月後には、再度の血液検査が必要になる。

 つまり、医師の受診は必須であり、なおかつ「症状は異常だけれど、わざわざ通院するほどではない」と医師に告知された、極めて限定された人しか購入できないのである。

 加えて値段は、医療用より、大衆薬のエパデールTのほうがはるかに高い。

 なぜ、これほどまでも売れない、極めて“自虐的”な仕組みをつくってしまったのか。

 それは、日本医師会の強力な反対によるものだ。エパデールの対象になるような生活習慣病の患者は、医師にとっては長期に通院して、薬を処方する“常連客”だ。エパデールが「アリの一穴」となり、なし崩し的に生活習慣病治療薬の大衆薬への転用が進むことを恐れたのだ。

 そこで、医師会側はエパデールTの発売を渋々認める代わりに、“乱用”を防ぐために、極めて異例の「適正使用調査」を実現させた。

 医師会は既得権益を守りたい。一方の製薬業界は、立場上、医師会に逆らうことはできない。そこには、生活者側の視点、利便性というものが配慮されている気配はない。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 山本猛嗣)

週刊ダイヤモンド


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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