落としたら警告音が鳴る「電子鈴」
さて、今回紹介する「電子鈴」は昨今の極めて論理的なアプローチで考えられたBluetoothタグや、すでに30年以上前から存在した、レトロテクノロジーを活用した遺失物防止電子グッズの時代をさかのぼること1500年。最も長い歴史ある「鈴」を電子的にナチュラルエクステンション(自然拡張)しただけの「電子鈴」だ。
モノを失くさない方法や見つける手段は昔からいろいろあるが、一番大事なのは、まず落とさないこと、忘れないことだろう。
しかし、人の注意力にも限度があるので、最悪でも落とした瞬間に当事者がそのことを理解できることだ。紐や鈴は昔からその為の道具でもある。
電子鈴も落とした時点で警告音が鳴り、落とした当事者にその事実をいち早く伝えるだけのシンプルな道具だ。
奇しくも今回の電子鈴のサイズは、筆者も使っていた現代テクノロジーの集積である「CHIPOLO」とほぼ同サイズ。誰が見ても鈴だとわかる外形デザインだ。
余談だが、筆者の知人から「これで鈴の色が黄色だったらドラえもんの鈴だったのに惜しい」とのコメントもらったが、たしかにその通りだ。見かけが一番の現代のマーケティング的にはその波に乗っても良かったのではと思われる。
この電子鈴、内部をユーザーが開けることができず、電池交換も含めて内部構造を知ることは不可能だ。昨今では珍しいユーザーアンフレンドリーな構造だが、たしかにエンドユーザーにとって内部構造は無縁のものであったほうが良いモノも多い。
パッケージ表面の記述に、昨今の“人の三種の神器”にもなっている“スマホ必須”の時代に、“スマホ不要”と書かれていることが最も注目すべき点だ。
そして、この手の商品のお約束である加速度センサーを搭載。駆動バッテリーは内部にはめ殺しで交換不可、電池封入時から約1年の寿命らしいが、頻繁に落としていると短くなるのは必至だ。
落とせば鳴るし、拾えば止まる……きわめてシンプルだが確実
実際に筆者は電子鈴をCHIPOLOに代えて自分のキーホルダーに取り付けてみた。何度も落下試験をやってみたが「電子鈴」は確実に「リンリン」「リンリン」と確実に耳に届く音を毎回発信する。
そして、キーホルダーを拾い上げると自動的に音は止む。キーホルダーをポケットに入れて走ったりしても振動では決して発信しない。あくまで「リンリン」「リンリン」と鈴の音が鳴るのは落とした時のみだ。
この電子鈴、筆者の持ってるほかの何かに似ているな……とぼんやり考えていたらやっと思い出した。スマホを入れるだけで、スマホにいっさい手を付けることなく、即、スマホの設定を圏外と同様の環境にしてしまう筆者勝手に命名の「スマホ圏外くんポシェット」だ。
未来のまだその前を見たり考えたりすることが得意な人間は、時代の先を進みすぎると、すべてのものを過去の蓄積や実績を組み合わせることで将来を考えてしまうきらいがある。
“最終的な目的”をクリーンな頭で再定義し直して、ついでに時には過去や実績を忘れて別のおバカな解決方法を模索してみる良い機会かもしれない。
“できる”と“便利”の違いに気づかされる一品
連携したすべてのハードウェアとソフトウェアが寸分の狂いなく順調に動作した場合にのみ確実に動作する現代のBluetoothダグ。
もちろん遺失物防止、追跡システムなど個々の技術の優秀性や複合物であるガジェットとしての面白さは否定しない。しかしその半面、運悪く風が吹いただけで遅れたり止まったりするタイトロープ的な統合型の連携物であることも事実だ。
筆者はより確実な動作を目指して“落とした時にだけ気がつく”警報道具である電子鈴の登場にやけに惹かれてしまった。
“理屈は凄いぞ!”とばかりに何でもできるBluetoothタグと、目的に忠実で一直線の便利な電子鈴の違いを見た気がする。
もちろん、ユーザーによるバッテリー交換など、まだまだ電子鈴にも改善の余地は多い。しかし、技術も市場も手詰まり感満載のBluetoothタグの世界に立ち止まることを示唆した電子鈴の意義は大きいだろう。
できるエンジニアなら、流行りのBluetoothタグの右上ばかりではなく、たまには斜め右下や左下も見てみてほしいものだ。きっと“できる”と“便利”の違いが分かってくるだろう。
今回の衝動買い
アイテム:
電子鈴
価格:アマゾンにて2400円で購入
T教授
日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。
T教授も関わるKOROBOCLで文具活用による「他力創発」を実験中。
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