AWSを激しく攻撃するクラウド担当幹部に「なぜAWSは成功できたのだと思うか?」を聞く
オラクル発表の新クラウドDB、価格と自動化「以外」のメリットは?
2017年10月11日 07時00分更新
――今回の発表は、既存のオラクル顧客がAWSを選ばないようにするためのものでしょうか?
ダヘブ氏:18cが狙うのは既存の顧客だけではない。まだオラクルを使っていない顧客で、データベースを探している顧客も潜在ターゲットだ。Oracle DB 18cならば、クラウド移行するにあたって妥協をする必要がなくなる。中小規模の企業であっても、オラクルは高価すぎて買えないということはなくなった。
クラウドは企業の競争条件を同等のものにしている。(クラウドを通じて)あらゆる企業が「Exadata」の技術を利用できるようになった。数多くのスタートアップもOracle Cloudを導入しており、今回のOOWでも20社近くを紹介している。われわれはSMB市場にも大きな投資をしており、クラウドアプリケーション(SaaS)では、Oracle DBを利用していない顧客を多数獲得している。
――顧客がパブリッククラウドでオラクルを選ぶ理由は何でしょうか?
ダヘブ氏:オラクルでは、クラウド事業をSaaS、そしてIaaS+PaaSの2領域として見ている。現実には「コンピュートリソースだけが必要」という顧客はいないからだ。ワークロードをクラウド移行するにあたっては、オンプレミスのシステムとどう統合するのか、どう安全に管理するのかを考えなくてはならない。マルチクラウドやハイブリッドクラウドを構築/運用するためにはPaaSが必要となり、ERPやHCM(SaaS)がその入り口になることもある。われわれはこのように(顧客システムを)包括的に見ている。単にコンピュートとストレージだけを考えるのは、クラウドのスコープを狭めている。
アプリケーションにおいても同じだ。オラクルの場合、Salesforce.comのように営業支援とマーケティングだけではなく、ERPやSCMもある。われわれはクラウドを、より大きな視点から定義している。そして、それは顧客も同じだ。
クラウドを手軽かつ簡便に利用できるように、われわれはクレジットカード決済を提供しており、リフト&シフトでのマイグレーションなど6つの移行シナリオを揃えている。どの入り口から入っても、クラウドへの移行を支援できる。これはオラクルだけだ。インフラが必要なら価格で競合できる設定にしている。
目標は、継続してイノベーションすること。新しいワークロード向けの次世代インフラを提供することだ。
――クラウド市場では、製品(クラウドサービス)の開発サイクルも、営業アプローチも従来とは違うものになるでしょう。オラクル社内で“クラウドカンパニー”になるための変革は進んでいるのでしょうか?
ダヘブ氏:少し前から進めている。アプリケーションは、数年前にすべてクラウド向けに書き直した。オラクルのSaaSはすでに、クラウドのDNAを持っている。
(営業アプローチについては)単に新しいデータベースを導入するというのではなく、どうやってシステムのモダナイズを進めるのか、新しい売上の流れを見いだすのか、アナリティクスからメリットを得るのか、安全にするのかなど、顧客の「ビジネス上の価値」にフォーカスしたうえで、最終的に手段を決めていくことになる。あるワークロードをクラウド移行するとなったとき、PaaSレイヤーに移行させ、データベースをリフト&シフトしてDBaaS(DataBase-as-a-Service)を使うのか、それともレガシーDBをいったんIaaSで動かしたうえで、次にPaaSに移行するのか、方法はさまざまだ。顧客に対して「クラウドジャーニー」がどのようなものになるのかを提案できるよう、営業をトレーニングしている。
今では営業チームもクラウド思考に変化している。これは、オラクルのような大企業では考えられないような変化だ。オンプレミスではなくインターネット経由で提供するといいう点で、技術のデリバリーメカニズムが変わった。
(クラウド的なスタイルになるよう)契約も簡素化した。またOOWの前週にはBYOL(Bring Your Own License)を拡大し、クラウド型のコンサンプション(購入と利用)ができる「Universal Credit」も発表している。
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なお、OOW 2017の会期中には、今年7月に日本オラクルのCEOに就任したフランク・オーバーマイヤー氏氏の話を聞く機会も持つことができた。オーバーマイヤー氏も、エリソン氏らと同様に「AWSと激しく戦う」ことを宣言した。