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世界的EVシフトの中、燃料電池車も捨てきれない経産省の無策

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EVとFCVの二刀流を唱える経産省。二兎を追う者は一兎をも得ずという結果にもなりかねない Photo by Ryo Horiuchi

 ここぞというタイミングでの決断力の欠如は、後世の汚点になりかねない。経済産業省・資源エネルギー庁は2018年度予算の概算要求に、電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)の関連予算として284億円を計上した。

 世界を見渡せば、欧州の主要国や中国、インドが政府主導で「EVシフト」を加速させている。なぜ、日本だけが二つの次世代車を同時に追い続けるのか。

 そもそも、経産省の外局・エネ庁では、エネルギー供給源の多様化の観点から水素の利用を推進しており、燃料電池による水素と酸素の化学反応で発電して走るFCVを推進してきた経緯がある。

 “水素元年”ともいわれる15年度の2年前から、FCVの購入費をはじめ、燃料を充填する水素ステーションの整備費などの補助金メニューを取りそろえてきた。今もなお、エネ庁の水素・燃料電池戦略室の担当者は、「EVバブルに踊らされることなく、FCVを排除すべきではない」と主張する。

 一方、ガソリン車が減れば打撃を受ける石油元売り業界は、FCVに乗り気ではない。

 FCVの普及には、水素を充填する水素ステーションの整備が欠かせないが、全国91カ所のうち40カ所を整備した最大手のJXTGエネルギーですら、社内のFCVに対する賛否は割れている。

「利用は1日に10台もない」とある業界関係者が嘆くように、整備に5億円、運営に年間5000万円も掛かる水素ステーションのコストはかさむばかりだ。

世界潮流から外れた日本

 日本がFCVよりも普及期が近づいたEVにシフトしようにも、自動車業界を所管する経産省本省に重い腰を上げるつもりはない。

 ガソリン車の販売禁止の検討に入った中国は、「EV量産で自動車業界の覇権を握ろうとするだけではなく、ひそかにFCVの技術吸収も進めている」(ある関係者)。日系メーカーに優位性があるFCVを国策として援助しないわけにはいかないという事情があるのだ。

 それに加えて、経産省はガソリン車の時代をできるだけ長引かせたいトヨタ自動車などの日系自動車メーカーに配慮してもいる。その「本音」が、EVとFCVの中途半端な予算配分に表れている。

 世界の潮流はEVへ急速にシフトしている。ガソリン車で世界市場をけん引してきた日本の自動車業界にとって、今は大きな転換期。裾野が広い国内自動車産業がEV競争で負ければ、国内経済に与えるインパクトは甚大だ。

 欧州を起点に始まったEVドミノは、各政府にエネルギー政策と産業政策を合わせた戦略を描かせ、EVで勝つという強い思いを世界に発信させた。翻って、EVとFCVの両立というあいまいな政策を続ける経産省。戦略なきビジョンで乗り切れるほど、EV競争は甘くない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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