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空き家をホテルに!大阪に誕生したユニーク宿泊施設

2017年09月28日 06時00分更新

文● 吉田由紀子(ダイヤモンド・オンライン

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街に点在する空き家をホテルとして運営している大阪の「SEKAI HOTEL」。フロントは居酒屋の店舗を改装した建物だ

 ここ数年、外国人観光客が増えている大阪。ホテルの稼働率は84.1%で、2位の東京(79.4%)を抜いて日本一になっている(2016年観光庁統計)。

 この夏には、ヒルトンの高級ブランド、コンラッド大阪が誕生し、星野リゾートが大阪への進出を発表した。伝統ある寺院にホテルが進出したり、ベイエリアにある高層ビルを丸ごとホテルに改装する計画も進んでいる。2020年までに30軒近いホテルが開業を予定しており、まさにホテル建設ラッシュに沸いている状態だ。

 そんな大阪で、この6月にちょっと風変わりなホテルが誕生した。場所は大阪市の西部、此花区の西九条。JR大阪駅から電車で6分、人気のテーマパーク・ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)のあるユニバーサルシティ駅から電車5分というアクセスの良さで、駅を利用する観光客は多い。

 オープンしたのは、SEKAI HOTEL(セカイホテル)というユニークな名前のホテルだ。造りも斬新で、空き家をリノベーションして客室にしている。普通のホテルのように、ひとつの建物にフロントや客室が集まっているのではなく、町そのものを利用した宿泊施設なのだ。

 フロントは、居酒屋の店舗を改装した建物。客室は近隣の一軒家。食事は商店街の飲食店、風呂は近所の銭湯といった具合に、町そのものを楽しむコンセプトである(客室にはバストイレ完備)。

 さっそく客室に案内してもらった。西九条は昔ながらの商店が立ち並ぶ、古きよき下町といった趣である。住宅地の中に細い路地が何本もあり、一軒家が並んでいる。どれも外観は古いものの、一歩中へ入ると、きれいに改装されている。リビングルームには洒落たソファやテーブルが置かれ、キッチンには調理器具が完備。ベッドルームも清潔で申し分ない。洗濯機もあるので長期滞在にも便利だ。部屋は広々としているので、家族連れや友だち同士で泊まるのに最適だと感じた。現在、町内の4ヵ所に客室が点在しており、これからさらに増やしていく予定だという。

増え続ける空き家を
逆転の発想で活用

 しかしなぜ、通常のホテルではなく、こういうスタイルになったのか?

客室は空き家をリノベーションして洒落た空間に。キッチン、バス、トイレ、洗濯機が備わっている

 実はSEKAI HOTELのある西九条は古い一軒家が多く、空き家率が高いエリアである。にもかかわらず、建築基準法による「再建築不可物件」が多いのだ。建築基準法では、原則として建築物の敷地となる土地は、「幅4m以上の道路に2m以上接していなければならない」といった規定があり、それを満たしていない物件は、建築申請が通らない。そのため、取り壊して新築するのが難しく、大手のデベロッパーがホテルを開業するのが困難なのである。

 しかし、空き家は増え続けている。ホテルの需要も高まっている。そこで動いたのが、地元にあるベンチャー企業だった。

「西九条の空き家は、2033年には30%を超えると予想されています。空き家問題をなんとか解決したいと考え、不動産会社、デザイン会社、弁護士事務所、語学スクールなどの地元の5つの企業と合同で、SEKAI HOTELの実現に取り組みました」(運営責任者の山岡啓一朗さん)

フロントでは英語、中国語に対応。地域の住民と宿泊者が交流できるスペースもある。左は運営責任者の山岡啓一朗さん

 ホテルの運営に関してもユニークである。客室や道路の清掃業務は、障がい者施設の通所者が、週に2回行っている。インターンとして大学生や留学生も働いており、彼らが宿泊客に観光ガイドサービスを行っている。いずれは通訳案内士の公的資格を取得する予定で、そうなれば本格的にガイド業務を任せていける。また、地域の子どもたちには、無料で語学教室を開く予定もある。

 現在、コンシェルジュサービスのアプリを開発しており、それがリリースされれば、予約の段階からお客さんと交流をしていきたい。そんな構想もある。

「西九条は静かな住宅街ですので、当初は近隣の皆さんからかなり反対されました。客室が隣の家と接しているので、夜に騒いだり、出入りの音がうるさいといったクレームが多かったんです。でも、チェックインの際にお客様に丁寧に説明をするなど工夫を重ねていき、クレームも減っていきました」

 近隣の住民は、いまでは打ち解けて、コーヒーを飲みに訪れたり、一緒に改善策を考えてくれるようになったという。フロントの2階にあるコミュニティスペースでは、宿泊客と住民の交流も行われている。

「SEKAI HOTELが目指すのは、“No Border”です。国境も年齢も超えてさまざまな人が交流する、名実ともに世界への入り口になりたいと考えています。この西九条だけではなく、問題を抱えている町はたくさんあります。地方のシャッター商店街や、営業できなくなった旅館などを宿泊施設として再生していきたい。そんな構想も抱いています」

 地域の社会問題を解決したい。そんな思いから、SEKAI HOTELでは、宿泊料金のうち1泊あたり200円を途上国の就労、雇用、教育支援に当てている。西九条の施設が軌道に乗れば、運営は住民に任せて、また別の困っている町で宿泊施設を立ち上げ、町を活性化していきたいという。地域活性、そして異文化交流の拠点として、SEKAI HOTELの今後に期待したい。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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