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自治体PR動画がアツい!佐渡島はヘビメタで「殺戮したての魚貝類ども」

2017年09月27日 06時00分更新

文● 青柳直弥(ダイヤモンド・オンライン

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近年、日本全国・各地方自治体のPR動画がかなり面白いことになっている。「おおっ!」と度肝を抜かれるものや、思わずニヤッとしてしまうものも多い一方で、タレントの壇蜜を起用して最近話題になった宮城県の観光PR動画のように、行きすぎた内容に批判の声が殺到して配信中止に追い込まれた動画も…。各地方自治体がしのぎを削るPR動画は、一体いつからこんなことになっているのか?(フリーライター・青柳直弥)

佐渡島は絶叫メタル!
自治体のPR動画がアツい

今年3月の配信開始以来、確実に観光客増をもたらした新潟県佐渡島のPR動画「SADOMETAL」。佐渡×ヘビメタという斬新さがネット民にウケている。(佐渡市公式観光情報サイト「さど観光ナビ」HPより)

 自治体のPR動画といえば、主に「地方創生」「移住促進」「観光客の誘致」などを目的につくられる、おらが街(市)をPRするための動画のこと。そのほとんどはYoutubeで観ることができるのだが、ここ数年、映画や音楽のPV顔負けの凝りまくったPR動画が話題になることが多くなった。

 たとえば、新潟県佐渡島の観光PR動画は、プロのメタルバンド『THE 冠』が佐渡島の魅力をメタルのオリジナル曲で表現した、その名も『SADOMETAL』。佐渡の朴訥とした光景の中、メタラーたちが歌い叫ぶPV風の動画は、「殺戮したての魚介類ども」など歌詞も強烈でインパクト絶大だ。

 また、現時点で110万超のアクセスを記録している宮城県登米(とめ)市のPR動画『Go! Hatto 登米無双』は、一般家庭のおばあちゃんが、ジャッキー・チェンの映画ばりに敵をバッサバッサとなぎ倒すアクション動画。ただのオフザケ動画のようにも思えるが、市民に愛される「はっと」というソウルフードをつくる際の手の動きで、ジャッキー・チェンの蛇拳や酔拳のように敵を追い詰めていくところに、きちんと登米市の特色も盛り込んだ動画となっている。

 どれも観ているだけでニヤニヤしてしまうが、自治体のPR動画は、一体いつからこんなことになっているのだろうか?

「各自治体が凝ったPR動画をつくり出したのは2013~14年くらいからで、その火付け役となったのは大分県です。いまも『シンフロ部』のシリーズが話題ですが、13年から立ち上がった『おんせん県おおいた』の一連のシリーズや、高知県が広末涼子を起用して作成した『高知家』というPR動画も話題になりました。このくらいの時期が、自治体プロモーションの目先がゆるキャラからPR動画に移った潮目の時期といえます」

 こう語るのは、CM戦略アナリスト・マーケティングディレクターにして、秀逸な地方CMと地方PR動画を紹介するサイト『ぐろーかるCM研究所』所長の鷹野義昭氏。自治体にとっても、こうした動画を制作するメリットは多いという。

「メリットとしては、まずテレビCMのように広告媒体費がかからないこと。それどころか申請が通れば、国からの助成金も受けられます。15年に総務省が移住促進のためのプロモーション動画制作の助成金を打ち出したのですが、最大500万円の助成金が国から地方自治体に交付されました。『まちのムービーをつくるなんて、県単位くらい大きくないと予算確保ができない』と思っていた市町村が大きく動き出した瞬間です」(同)

配信開始以降、経済効果は
3億円を超えた広島県呉市

 地方自治体がプロモーション動画を制作するメリットは、まだほかにもある。

 PR動画はネットで流すので、一般的なテレビCMのようなテレビ局側の厳しい規制がなく、15秒、30秒といった尺の制約もないので、地域特色のメッセージを自由に、より多く盛り込める。テレビ局に頼る必要があった一昔前と違い、今ではYouTubeのような全国はもちろん、全世界に向けて動画を配信できるプラットフォームが既に整備されている。

 さらに、一度制作してしまえば「ゆるキャラ」のように、その後の維持費はほとんどかからないといった点もメリットだ。

 実際にオリジナル動画を制作し、話題を呼ぶことに成功した自治体にも話を聞いてみた。先に触れた『SADOMETAL』を制作した新潟県佐渡島は、今年3月末の配信開始以降、観光客がかなり増えたという。

「新潟は広告の打ち方がヘタだとよくいわれていたのですが、『SADOMETAL』は斬新でいいという意見を多数いただいています。助成金は受けずに、制作は電通さんに委託したのですが、それまでヘビメタ風の自治体PR動画はなかったとこともあって、GOを出しました。メタラー役で出演されている『THE冠』の冠徹弥さんご自身も『ああしよう』『こうしよう』と自らアイデアを出してくださって、私どもとしても非常に満足のいく動画になりました。おかげさまで、今年のGWだけを見ても観光客がかなり増えましたね」(佐渡島観光局)

 一方、1990年代のTRFの大ヒット曲「CRAZY GONNA CRAZY」の替え歌「呉ー市ー GONNA 呉ー市ー」という曲に乗せて、ご当地のゆるキャラ呉氏(くれし)がダンサーとともにキレッキレのダンスを踊る動画が人気を呼んでいるのは、広島県呉市のPR動画

 こちらの動画もかなりのクオリティで、アクセス数は現時点で56万超。反響は、仕掛けた側の予想を遥かに上回っているという。

「2月1日の配信開始以降、テレビなど複数のメディアさんに取り上げていただき、3月までの経済効果は試算では3億円以上です。納税額も前年より増えましたし、県外から呉に来られる方も増えています」(呉市企画課)

 助成金は使わずに制作したそうだが、それを補って余りある費用対効果を生んでいるようだ。

「うなぎのうな子」や壇蜜起用の宮城県など
やりすぎると公開中止のケースも

「地方PR動画を作成する以上、やはり多くの人に観てもわらないと意味がないですから、最近は、より広い拡散を目指して、人気ユーチューバーを主役に置いたりするケースも増えてきました。彼らを起用することで、20~30代の若年のターゲット層へのアプローチも容易になるからです」(前述の鷹野氏)

 もはや「いいことづくめ」に思える地方PR動画だが、一方では失敗例も当然あり、なかには数百万円単位の費用をかけて制作したものの、再生回数が1000回にも満たない「とんでもなく経済原理を逸脱している」動画や、ほかの自治体と少しでも違う動画をつくろうと“攻めすぎた”結果、その内容に「女性蔑視」「犯罪想起」といった批判が殺到、公開からわずか5日で動画が削除されてしまった鹿児島県志布志市のふるさと納税PR動画「うなぎのうな子」のようなケースもある。

 前提として、話題になって多くの人に観てもらえないことには意味がないPR動画だが、ただ再生回数を稼げればいいというものでもない。つい最近では、タレントの壇蜜を起用し、7月5日からの公開で466万8559回という脅威の再生回数を記録した宮城県の観光PR動画が話題となったが、こちらは女性県議や女性団体から「性的描写を連想させる」という物言いがつき、9月末までの配信予定が8月末で終了となった。

 鷹野氏は「PR動画を広く拡散してもらうには、唯一無二の独自性を持つPR動画を作成しなければいけませんし、良い意味での“カド”があることが必要」というが、“カド”が“過度”になっては元も子もない。

 内容次第では、おらが街のイメージアップ戦略として大きな可能性を秘める自治体PR動画。今後も各自治体は良質な動画を多く作成して、多くの人を楽しませてほしいものだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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