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日本の港に千載一遇のチャンス!国際的な船の燃料補給拠点に?

2017年09月26日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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船の給油拠点として輝くシンガポールを、指をくわえて見ているしかなかった日本。しかし国際的な環境規制の強化が決まり、「クリーンなLNGへの燃料シフト」という千載一遇のチャンスが巡ってきた。LNGの輸入大国である日本は、燃料補給の一大拠点としての地位確立を狙っている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

 LNG(液化天然ガス)バンカリング拠点の形成促進──。8月末、国土交通省が2018年度予算の概算要求に盛り込んだ一つのメニューに、海運・造船業界が沸き立った。

 LNGバンカリングとは、船にLNGを燃料として補給すること。ある国交省幹部が「日本をLNGの補給ハブに押し上げることは悲願だ」と言い切るように、かねて、国交省では横浜港をモデルケースにLNGバンカリング拠点を整備しようと検討会を進めていた。

 今回盛り込まれた予算の詳細は未定だが、「LNGバンカリング拠点創設に必要な費用の3分の1に補助金が付く」(海運関係者)方向で検討されている。補助金の大盤振る舞いに、海運・造船業界は大きな期待を寄せている。

 これまで、船舶燃料のメーンは「C重油」と呼ばれる硫黄分の濃度が高い油だった。そして、重油の補給拠点として確固たる地位を築いているのはシンガポール港である。

 実際、シンガポール港には船の燃料油の約2割を扱う世界ナンバーワンの実績がある。東西の船が行き交う交通の要衝であるシンガポールは、大規模な製油所を整備して安い重油を用意するなど、地の利を生かした施策を講じてきた。

 対する日本は、地理的には「太平洋航路への玄関口になり得る」(別の海運関係者)利点があるものの、製油所の石油精製技術が高いばかりにそもそも船に多く使われる重油が少ない。さらに精製コストの高さなどの複合的な要因が加わって、重油の供給価格はシンガポールより1割程度も高くなる。

「船の運航コストに占める燃料の構成比は高い。価格が1割も高ければお話にならない」(前出の国交省幹部)。日本の港には、燃料補給拠点としての国際競争力はおよそ期待できなかった。

 ところがここにきて、日本に千載一遇のチャンスが巡ってきた。昨年、国際海事機関が船の燃料に対する環境規制の強化を決定。20年1月に導入される新規制をにらんで、環境負荷の低いLNGを燃料とする船の需要増が見込まれているのだ。

 日本は世界のLNG取引量の3分の1を扱う世界最大のLNG輸入国である。すでに、巨額の設備投資を伴うLNG基地が、港のそばに多数ある。これらの既存インフラを利用すれば、今度こそ船の燃料補給拠点になれるに違いない──。国交省はこう踏み、鼻息を荒くしているわけだ。

 そして、今回の予算化が実現すれば日本の「LNG拠点化構想」は国家目標になるとあり、海運・造船業界は商機を見いだそうと水面下でうごめき始めている。

LNG燃料船を
日本の造船各社が建造できるか不明

 そのプレーヤーは下図の通り、日本がLNGバンカリング拠点になるために整備すべき「ツール」を挙げるとおのずと見えてくる。

 まず必要になるのが、船(運搬船)にLNGをチャージするLNG補給船だ。LNG基地のある港湾と運搬船を行ったり来たりしてLNGを運ぶ船で、補助金の対象となることが濃厚になっている。

 船主の代表格は海運会社。今年、日本郵船はベルギーのゼーブルージュ港を拠点に稼働を開始した世界初の補給船を三菱商事などと共に保有しており、積極的だ。

 補給船と並び、新たな受注が見込めそうなのが、LNGを燃料とする運搬船である。

 中でも、トヨタ自動車向けの運搬船を所有する日本郵船などの海運会社は、重油からLNGへ燃料を切り替える次世代船の導入を急いでいる。今後、トヨタなどの荷主と20年の環境規制への対応策を具体的に詰めるとされる。

 最後に、補給船にLNGを積み込むための出荷施設の整備も欠かせない。国交省の検討会では横浜港内や袖ケ浦のLNG基地がLNGバンカリング拠点の最右翼として想定されているが、「トヨタ向けの運搬船がたくさん建造されるなら、トヨタ系工場が集積する愛知県にLNG基地を持つ中部電力、東邦ガスが整備に動くのではないか──」。エネルギー会社の関係者の臆測は絶えない。

 いずれにせよ、補給船と運搬船のダブル特需が見込める造船業界にとって、「LNG基地化構想」は追い風のはずだ。

 もっとも、日系メーカーがその恩恵にあずかれるかどうかはまた別の話だ。というのも、「三菱重工業のドックは2年半ほど先まで埋まっていて新造するキャパシティーがない」(造船関係者)など、物理的に仕事が受けられない場合があるからだ。さらに、船主である海運会社が、価格競争力のある中国、韓国勢に船を発注する選択肢も否定できない。

 久方ぶりの“海運特需”を前に、海運関係者が虎視眈々とチャンスをうかがっている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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