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金融庁が地銀の「貸し剥がしで決算“お化粧”」に厳重警告

2017年09月25日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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金融関係者が毎年公表を待ちわびるレポートがある。監督官庁である金融庁が行政における1年間の進捗や実績をまとめる「金融レポート」だ。そこで示される“ご当局”の問題意識を解読しようと金融関係者は読みあさるのだが、その中で今年初めて、貸し剥がしによる決算の数字づくり疑惑が言及される見通しだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

 5割超の地方銀行がすでに実質赤字に陥っているという厳しい現状分析。そして、その中で地銀が取った苦肉の利益確保策に対する警告──。

金融庁が事務年度の初めに打ち出す「金融行政方針」に対して、その進捗と実績をまとめたものが「金融レポート」。PDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを意識した一対の資料となっている Photo by Takahisa Suzuki

 本誌が入手した最新版「金融レポート」案には、地銀関係者が目を覆いたくなるような内容が並んでいる。

 金融レポートとは、金融庁が金融行政における1年間の進捗や実績を公表する資料のこと。読めば監督官庁である金融庁の考えがうかがい知れるとあって、金融関係者の注目度は高い。中でも、地銀のパートは毎年、金融業界のみならず世間をにぎわせてきた。

 金融庁は地銀に対して、「今のビジネスモデルでは将来立ち行かなくなる」と何年も警告し続けてきた。その金融庁が危機感を抱く理由である、厳しい現状分析と未来予測が盛り込まれるのが地銀のパートなのだ。

 本稿執筆の9月19日時点では未公表だが、金融レポートの最新版が9月中にも公表される。冒頭の内容は、その案段階からの抜粋だ。

 詳細について、収益の現状分析から見ていこう。ここには、日本銀行の金融緩和策による超低金利環境が続き、収益悪化が止まらない地銀の実態が描かれている。

 金融庁は昨年の金融レポートで地銀の収益予測を行った。融資業務と手数料ビジネスの収益から、営業経費を差し引いた値を「顧客向けサービス業務利益」とし、一定の仮定を置いて2025年3月期における予測値を算出。約6割の地銀で中核ビジネスが赤字になるという驚きの予測を示した。

 ところが、現実はその“予言”を上回る厳しさだった。金融庁は17年3月期の決算数値を基に各地銀の顧客向けサービス業務利益を再び算出し、すでに5割超の地銀が赤字に陥っていると記している。

 さらに、最新版金融レポートでは、そうした苦境にある地銀の苦肉の利益確保策3パターンを解析。それらに警鐘を鳴らしている。

 一つ目は、債券や投資信託といった有価証券の運用による収益に過度に依存するケースだ。運用やリスク管理の体制が不十分な“素人”地銀などにくぎを刺している。

 二つ目は、アパート・マンションや不動産業向け融資の拡大などで融資量増加に走る事例を挙げ、人口減少が続く中で全ての地銀がそれを実現するのは難しいと指摘。さらに、アパマンローンの借り手に対する貸家業のリスク説明や、賃貸物件の目利きが不十分なケースに触れ、改善を促す。

与信費用低下による利益への貢献が
純利益を超す異常値

 三つ目は、前述の二つと違って今まで公には物議を醸してこなかった方策、与信費用の低下だ。

 与信費用とは、融資の貸し倒れに備えて積む「貸倒引当金」などのことだ。融資先の倒産や業績悪化が想定よりも少なければ与信費用は低下。貸倒引当金の戻り入れ益として利益が計上できる。

 最新版金融レポートでは、17年3月期決算での当期純利益に占める「貸倒引当金戻入益」の割合を算出。その値が3割以上にも及ぶ地銀があることに言及している。

 戻り入れ益の発生原因は主に3パターン。ベストは、銀行が融資先を支援して再建を果たし、貸し倒れリスクが低くなることによる発生だ。また、企業の自助努力や景気改善による発生もある。

 問題は、銀行による貸し剥がしや貸し渋りが原因の場合だ。銀行がリスクの高い企業から融資を引き揚げれば、戻り入れ益で目先の利益は潤う。ただ、中長期的には飯の種をなくすリスクもはらむ。

 また、金融庁は地方創生の観点などから地銀に対して、リスクが高い企業にも事業の将来性の目利きによる融資を求めている。しかし、貸し剥がしや貸し渋りは、その要求とは真逆の行動だ。

 そこで本誌は下表のように、17年3月期決算の当期純利益に占める貸倒引当金戻入益の割合で、地銀のランキングを作成した。

 1位の福邦銀行(福井県)は当期純利益7.2億円を上回る8.3億円の戻り入れ益があり、割合は100%を超える異常値を示す。

 ただ、前述の通り、ここに名前が並ぶ地銀は玉石混交の可能性がある。融資先の経営再建に尽力する“玉”と、自らの利益のために貸し剥がしや貸し渋りによる戻り入れ益でひと息ついた“石”が混在しているかもしれない。

 とはいえ、金融庁関係者は「名前を見れば、どちらの銀行かすぐに分かる」と断言。金融庁は近年、地銀の融資先へのヒアリングやアンケート調査に注力していることもあり、地元企業の評判で“玉”か“石”か判別できるというのだ。

 そちらの決算“化粧”術は全てお見通しだ。次はない──。金融庁が最新版金融レポートの中で与信費用について言及するのは、“石”の地銀に対するそんな最後通告に他ならない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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