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地元ドイツ勢からはEVコンセプトカーの出展が目立ち、「EV祭り」の様相を呈していた Photo by Kenichi Suzuki |
9月中旬に開催されたフランクフルトのモーターショーでは、「電動化」を意識したEVのコンセプトカーの出展が目立ち、“EV祭り”の様相を呈していた。ただし、そこには“EVの先駆者”として知られる日産自動車や三菱自動車工業の姿はない。そもそも国際モーターショーの意義やあり方が問われつつある中で、参加を厳選する自動車メーカーが増えているのだ。(モータージャーナリスト 鈴木ケンイチ)
フランクフルトのモーターショーに
日産、三菱の姿なく
2017年9月12日にフランクフルトのモーターショー(IAA:International Automobil Ausstellung)が開催された。メルセデスベンツやBMW、フォルクスワーゲンの地元ドイツで開催された今年のIAAは、さながら“EV(電気自動車)祭り”の様相を呈していた。「電動化」「コネクテッド」「自動運転」という三つのキーワードを押さえた数多くのEVコンセプトカーが出展され、「今後はEV(電気自動車)に力を入れる」という声をあちらこちらで耳にすることができたのだ。
しかし、そこには居てしかるべき2社の姿がなかった。“EVの先駆者”であるはずの日産自動車と三菱自動車工業だ。三菱自動車は2009年に「i-MiEV」、日産は2010年に「リーフ」というEV(電気自動車)を発売。日産は、フランクフルトモーターショーの前週である9月6日に第2世代の「リーフ」まで発表している。ドイツ勢が「これからEVをやる!」というのに対して、日産と三菱自動車はすでに1世代分のアドバンテージがあるのだ。フランクフルトでの“EV(電気自動車)祭り”では、主役になってもおかしくない。しかし、日産と三菱自動車はフランクフルトへの参加を見送っている。
だが、フランクフルト参加を見送ったのは日産と三菱自動車だけではない。GM やFCA、プジョー、DS、ボルボもいなかった。ブースはあるものの、フォードとマツダは肝心なプレスカンファレンスを行っていない。世界屈指のモーターショーであるはずのフランクフルトでも、世界中の主要メーカーすべてが顔を並べることはない。実は、それが最近のモーターショーの“常識”となっているのだ。
激増した
世界のクルマ関連イベント
かつてはアメリカ(デトロイト)、ドイツ(フランクフルト)、日本(東京)という主要な自動車メーカーの本国で開催されるモーターショーは世界3大モーターショーと呼ばれた。その後、パリとジュネーブを追加した世界5大モーターショーといえば、世界のトップクラスのモーターショーと認知されていた。ところが、最近になって事情が大きく変化している。
まず、中国市場が巨大になった。当然、中国市場に参戦する自動車メーカーは北京/上海(毎年、2都市のどちらかが交互に開催する)のモーターショーに力を入れることになる。
さらにアセアン市場も拡大。中心地であるタイのバンコクのモーターショーも盛大になる。その一方で、アメリカではニューヨークやロサンゼルスでもショーを開催。さらにモーターショーではないものの、ラスベガスで開催される家電ショーであるCESにも、数多くの自動車メーカーが参加している。それ以外にもイギリス開催のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードというクルマ系の人気イベントにも自動車メーカーが顔を出す。
気がつけば世界の自動車メーカーは、年間を通して毎月のように、世界のあちこちで開催されるイベントに参加するようになっている。もちろん、参加イベントの増加は自動車メーカーの大きな負担となる。
「選択と集中」が進むモーターショー
全ブランド揃うのは上海/北京のみ!?
そうとなれば、「選択と集中」に進むのは、当然の流れだろう。結果、モーターショー開催地でのシェアが低いブランドは、参加から遠ざかる。また、一つの地域には、一つのモーターショーだけに参加するというブランドもある。たとえばボルボは、デトロイト、中国、ジュネーブ、東京に出展を絞っている。欧州はジュネーブだけだ。
今回のフランクフルトでは、アメリカ勢とフランス勢が減っている。そうなれば来年のパリでは、逆にドイツ勢の参加が減るのかもしれない。つまり、フランクフルトとパリは、国際的ブランドが一堂に会する場ではなく、ドイツとフランスの、それぞれのブランドのためのショーになる可能性が高い。ちなみにデトロイトと東京は、すでにその傾向が強まっている。
2017年開催の東京モーターショーの出展リストを見ると、アメリカ勢とイタリア勢(GM、FCA、フォード、フェラーリ、ランボルギーニ、マセラティ)の名前はない。さらにミニ、ジャガー/ランドローバーといった英国ブランドも不参加。正直、日本とドイツとフランスだけなのが、東京モーターショーなのだ。
デトロイト、フランクフルト、パリ、日本といった自動車メーカーの存在する地のモーターショーは、地元ブランド中心に。一方で、ドイツとフランス、イタリアがイーブンの場となるジュネーブ、そして“世界最大の市場”である上海/北京は、世界中のブランドが集まるモーターショーになる。
そんな未来が、2017年のフランクフルトのモーターショーから垣間見えた。
※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら
