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偶然から生まれた「高栄養もやし」は業界の窮状を変えるか

2017年09月21日 06時00分更新

文● 真島加代(ダイヤモンド・オンライン

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青果の中でもっとも安く、節約食材の定番として食卓に並ぶ「もやし」。しかし、その安さがアダとなり、今年の3月にはもやし生産者協会が「もやし業界の窮状」を訴えて話題になった。そんななか、機能性表示を届け出て小粒大豆を発芽させたもやしを販売し、他社と一線を画する企業があるという。

1袋70円でも売れる!
「子大豆もやし」とは?

「もやし」と聞くと「安くておいしい」「節約食材」といったイメージを持つ人が多いだろう。しかし、その安さが、もやし生産者全体を窮状に追い込んでいるという事実が、もやし生産者協会の声明により発覚。生産者の減少なども相まって、もやしが食卓から消える可能性もあるという。

間違えて届けられた小粒の大豆を試しに発芽させたことがきっかけで誕生した子大豆もやし。一番売れている緑豆もやしとは異なる食感で、調理法も工夫が必要だが、栄養価の高さは折り紙付きだ

 そんな状況にあっても、1袋70円前後という強気な価格(それでも充分安いが)でもやし商品を販売し、人気を博しているのが発芽野菜を扱うサラダコスモの「大豆イソフラボン子大豆もやし(以下、子大豆もやし)」だ。

 同社の「子大豆もやし」は、静岡県の三ヶ日みかんとともに、生鮮食品初の「機能性表示」の届出が受理された商品だ。

 機能性表示食品とは、安全性や機能性の根拠に関する情報について、消費者庁長官に届けを出して受理された機能性を表示できる食品のこと。この「子大豆もやし」には、大豆イソフラボンが多く含まれており、骨の成分を維持する働きがあることがサラダコスモの研究で判明し、機能性表示の届出が受理されたという。

発芽すると大豆の栄養価がUP!
「子大豆もやし」の不思議

「『子大豆もやし』は、大豆を発芽させて、大豆ともやしのいいところを凝縮したハイブリット野菜なんです。今は大豆イソフラボンによる骨の健康を維持するはたらきをパッケージに表示しています。じつは、発芽前の大豆に比べて、大豆イソフラボンがとても豊富に含まれているのも、大豆もやしの特徴なんです」

 そう語るのは、株式会社サラダコスモ営業本部長・宮地隆彰氏。同社の子大豆もやしは、小粒納豆などに使われる小粒大豆が発芽したものなので、栄養成分は大豆とほとんど同じとのことだ。

まだ認知度は低いものの、実は高い栄養価を誇る子大豆もやし。1袋40円の適正価格さえ割ることが多いもやしだが、サラダコスモの子大豆もやしは、1袋70円という強気の価格で勝負している

「大豆を発芽させると、ビタミンCが生成され、食物繊維は1.7倍、葉酸が4.5倍(3.6倍)、GABAが6倍に増加します。抗酸化力も高く、大豆を発芽させてもやしにすることでパワーアップし、かなり優れた栄養成分が豊富に含まれている野菜なんです」

 高い栄養価を誇る子大豆もやしだが、日本のもやし市場の中で大豆もやしが占める割合は、とても小さいという。

「現在、スーパーなどで売られているもやしは3種類あります。ざっくり分けると、緑豆を発芽させた『緑豆もやし』が市場の8割を占め、子大豆もやしを含む『大豆もやし』と、黒豆を発芽させた『ブラックマッペ』が1割ずつといったところ。そもそも、もやしに種類があることを知っている人のほうが少ないと思います。今でも、認知度の低さは市場拡大のネックになっていますね」

 身近な野菜であるがゆえに、もやしの種類に目を向ける消費者は少ないのだ。

偶然が重なって生まれた
「子大豆もやし」

 サラダコスモの「子大豆もやし」は、一般的な大豆もやしよりも小粒な大豆を使用しているため、認知度はさらに低い。何ゆえ、子大豆もやしを主力商品として生産するようになったのだろうか? 

「じつは、子大豆もやしは偶然の産物なんです」

 同社ではもともと、他社と同じく一般的な大きさの大豆もやしを販売していた。しかしあるとき、誤発注によって小粒の大豆が届けられたという。

「普通ならば返品して終了なのですが、とりあえず育ててみることになったんです。すると、しっかりもやしに成長し、シャキシャキ感は大きな大豆もやしに引けを取らないことがわかり、1991年に『子大豆もやし』の生産がはじまりました。戦後初めて小粒大豆を使用したもやし商品といわれていますね」

 サラダコスモは、もやし栽培において初の漂白剤不使用の栽培を行い、ブラックマッペが主流だった日本のもやし市場に、緑豆もやしを広めた企業でもある。新たなことに挑戦する姿勢は、同社の社風なのかもしれない。

 ただ、子大豆もやしの販売という前人未到の試みは、販路の開拓に時間を要したという。

「まず“子どもの大豆”という名前で商標を取得して、さまざまな角度からアプローチをしていったのですが、販路の確保には骨を折りましたね。大きいスーパーで扱ってもらえるようになってから、少しずつ広がっていったような状況です」

 認知度の低さにも負けず「子大豆もやし」の生産を続けた背景には、同社の研究開発本部研究開発部部長・中田光彦氏の熱意があったという。

「中田部長は、野菜で健康になる食品を提供していくために、『医食同源』を掲げる当社に転職してきた人物。彼は、研究結果から得られた子大豆もやしの有効成分の多さに驚き、より多くの人に食べてもらうために子大豆もやしの普及に務めています」

今後の課題は“メニュー提案”
緑豆もやしと異なる調理方法が必要

同社の粘り強い研究のすえ、機能性表示の受理と同時に、全国的認知度も上がった「子大豆もやし」。しかし「まだブランディングが確立されたとはいえない」と、宮地氏は語る。

「子大豆もやしが市場に定着しない理由は、価格と調理時間です。やはり、価格の安さや調理時間の短さについては緑豆もやしに軍配が上がるので、子大豆もやしの市場を拡大する際のハードルとなっていますね」

 市場のほとんどを占める緑豆もやしは、30秒ほどの調理ですぐに食べられるのに対し、大豆もやしと子大豆もやしは茹で上がりに3分ほど要する。これらの差が、大豆もやし、子大豆もやしの定着を阻んでいるのだ。

「緑豆もやしと同じ感覚で調理をすると、豆が硬く青臭さが残ってしまいます。そのため『大豆もやしはおいしくない』という消費者の声があるのも事実です。大豆もやしは、ナムルやビビンバとして食べるのが一般的ですが、より食べやすい新たな調理法を提案できていなかったのが、我々の反省点ですね」

 今後、サラダコスモでは子大豆もやしの新メニュー開発に力を入れ、より食べやすくする工夫をしていくとのこと。

「子大豆もやしのパッケージには特別な加工を施しているので、袋のままレンジでチンすることができます。下処理が簡単なだけでなく、電子レンジで温めると栄養素が壊れにくいので一石二鳥。そのほかにも、子大豆もやしの加工品の開発にも力を入れていく予定です」

 同社が子大豆もやしの市場拡大に尽力している一方で、もやし生産者たちは「もやし危機」に直面している。宮地氏はもやし危機は業界の縮小につながりかねない、と危惧する。

「もやしは、青果の中でもっとも原価が安い野菜。小売店にとっては、原価を割ってもあまり痛手にならないので“目玉商品”になりやすいんです。しかし、私たちとしては、強い思いを持って育てた我が子のようなもやしなので、適正価格でみなさんに購入していただきたい。それが、もやし市場の活性化につながるはずです」

 もやしの適正価格は1袋40円ほど。この価格を高いと見るか、安いと見るかは個人の自由だが、もやし農家の窮状を考えれば決して高いとは思えない。長らく、私たちの節約メシの味方をしてくれている“もやし”。これからも食卓を支えてもらうためにも、消費者の意識を変えなければならないのだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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