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郵政株の2次売却、入念な「値崩れ防止策」に見る売り主の苦悩

2017年09月20日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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財務省が保有株式の追加売却を発表した日本郵政だが、今後の株価上昇を見込んだ話をする市場関係者は見当たらない Photo by Ryosuke Shimizu

 “商品”に自信はないが、不人気で値崩れしては困る。売り主のそんな苦悩が表れた大型取引の幕が上がった。

 9月11日、財務省は保有する日本郵政株式の追加売却を発表。2015年11月の新規株式公開(IPO)以来2度目で、最大1.4兆円分を9月中にも売り出す。

 しかし、発表の前週における郵政株の平均株価1317円は、IPO時の売り出し価格1400円を下回る。そこへさらに株が市場に出回れば、需要と供給の関係で株価の下落は目に見えている。そこで郵政株の売り主である財務省は、「直前までスキームの検討を繰り返し、何重にもわたる厳重な対策を講じた」(財務省幹部)。

 まず、郵政による1000億円の自社株買いというプチサプライズを組み込むことで株の需給悪化を和らげ、株価の下支えを狙った。

 また、株の売却規模に1000億円のバッファーを設けた。これは、投資家の人気に応じて株の売却数をコントロールすることで値崩れを防ぐ試み。国有株では初となるスキームを盛り込んだ。

 一方、財務省が売り出す郵政株を投資家に販売する、「2次売り主」である証券会社からは、「『10年持つ気で買ってください』とセールスする」(主幹事証券会社幹部)といった声が聞こえてくる。

 郵政は今期の1株当たりの年間配当金を50円と予想しており、配当利回りは3%台後半。これは、東京証券取引所の上場銘柄の単純平均値である約1.6%と比べて高く、「10年郵政株を持っていれば、株価が1~2割下がっても配当で元が取れる。そう考えて買う投資家がいる」(同)というわけだ。

成功体験を提供できず

 しかし、売り主たちが編み出した巧妙なスキームやセールストークの存在は、皮肉なことに誰もが郵政株の値崩れ恐怖症に陥っていることの裏返しでもある。郵政の展望が明るければ、そんな“テクニック”は必要ないからだ。

 ところが、当の郵政は、IPO前に景気付けとばかりに6200億円も投じて買収した豪物流子会社トール・ホールディングスが業績悪化に陥り、4000億円もの減損損失を計上。その結果、17年3月期は07年の郵政民営化以降で初となる最終赤字に転落した。

 その後に浮上した野村不動産ホールディングスの買収案も立ち消えとなり、これといった成長戦略を投資家に提示できていない。

 郵政株の売却には、民営化の推進と東日本大震災の復興財源の確保という目的の他に、国が掲げる「貯蓄から資産形成へ」という方針の実現を後押ししてほしいという期待もある。多くの人が郵政株を買って成功体験を積み、さらなる資産運用への道を歩んでほしいということだ。

 しかし、現実は前述の通りで、株価は低迷し、投資家にトラウマを残しかねない苦境に陥っている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 郵政取材班)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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