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JDI再建資金5500億円試算も、スポンサーはアップルか中国企業か

2017年09月05日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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写真はイメージです

経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)が、生き残りに向けてスポンサー探しに奔走している。年度内を目標とする資金調達の交渉は時間との戦いだ。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)

「りんごがなかなか首を縦に振らない」(関係者)。ジャパンディスプレイ(JDI)は、米アップルとの交渉が難航している状況だ。

 JDIの東入來信博・会長兼最高経営責任者(CEO)は、経営再建のスポンサー探しを来年3月末までに行う意向だが、その道筋は見通せていない。

 JDIは、産業革新機構の債務保証を得て、期限1年で銀行から1070億円の融資枠を確保したが、こうしているうちにも資金が底を突く懸念はくすぶっている。

 通常の運転資金に加え、構造改革の人員削減費用や工場閉鎖に300億円を予定。さらに、茂原工場(千葉県)に新設した有機ELディスプレーの量産試作ラインなど700億円の設備投資が必要で、資金流出は続く。

 また、昨年12月に本格稼働した白山工場(石川県)の建設でアップルから総額1700億円の「前受け金」を借り入れており、その返済も今年から始まった。

 一方で、キャッシュを確保するための営業活動は停滞。中国製スマートフォン向けの液晶は、華為技術(ファーウェイ)やOPPO(オッポ)への出荷が減少しており、中国向け液晶を生産する茂原工場の8月の稼働率は10%程度まで落ち込んでいるという。

 アップルが今秋にも発売するiPhoneの一部で有機ELディスプレーを採用するため、下期の液晶出荷は一段と厳しくなりそうだ。中国でも売り上げ縮小が続けば、フリーキャッシュフローの赤字(4~6月期に216億円)はさらに拡大し、再び資金繰りの危機に陥る恐れがある。

アップルとの交渉難航
中国メーカーも接近
紆余曲折の展開へ

 JDIのある幹部は、経営再建に必要な資金規模を「5500億円超」と試算している。

 まず、2019年秋に白山工場で量産を開始するスマホ用の有機ELディスプレーの設備投資資金におよそ2000億円が必要だ。

 また、白山工場の前受け金(6月末残高1600億円)の一括返済資金に加え、JDIの運転資金には月商の2カ月分・1200億円の資金も必要になる。

 さらに、JDIに20%以上の出資者が現れた場合は、革新機構が昨年末に決めた金融支援の750億円を返済しなければならない。

 巨額資金を調達するためのスポンサー候補として最有力なのは、JDIの有機ELディスプレーの大口供給先となるアップルだ。

 しかし、アップルには、JDIの有機ELの技術を中国の液晶メーカーに供与させて、複数のサプライチェーンを構築する狙いがあるとみられ、交渉は難航中だ。

 その狙いを背景に中国の京東方科技集団(BOE)や、TCL集団傘下の華星光電(CSOT)がJDIに接近している。JDIはフィナンシャルアドバイザーを起用し、投資ファンドも候補として検討を始めた。

 悩みの種は他にもある。JDIが15%出資する有機EL会社のJOLEDも、「印刷方式」の有機ELディスプレーの量産を能美工場(石川県)で計画しており、この資金確保も課題になっている。

 JOLEDの社長を兼務するJDIの東入來会長は、JOLEDの増資に向けて、国内企業と交渉を始めているが、関係者によると、印刷方式の技術はシャープが関心を示している。

 アップル、中国メーカー、投資ファンドそれぞれの思惑が交錯するJDIのスポンサー探しは混迷の度を深め、紆余曲折の展開になりそうだ。

【東入來信浩JDI会長兼CEOインタビュー】
JDIは複数企業との提携を
JOLEDの増資も考えている

──産業革新機構の債務保証で銀行から1070億円の融資枠を確保しましたが、外部企業からの資金調達は急務です。

ひがしいりき・のぶひろ/1948年生まれ。74年日本鉱業(現JX金属)入社、日本オルボテック会長を経て、2014年11月にJOLED社長(現任)、17年6月より現職。 Photo by Kazutoshi Sumitomo

 JDIの技術に魅力を感じるグローバルパートナーを探していますが、結果的に複数と手を組む感じになると思います。

 融資枠は来年8月までの契約ですが、そこまで引きずるわけにもいかないので、来年3月末くらいまでにめどを付けたい。今、いろいろと動いています。

 2019年秋にも白山工場で有機ELパネルの量産を始めるつもりですが、(巨額の設備資金は)パートナーと手を組んで進めたいと考えています。

──有機ELの量産投資のためにパートナーが必要ということですね。相手はスマートフォンの大口顧客ということになりますか。

 希望としては、お客さまと結び付くのがいいと思いますが、まだ分かりません。グローバルビジネスパートナーは中国や台湾、財務投資家も含めた形で考えています。

──有機ELでは、大型ディスプレーに適した「印刷方式」の技術開発をJOLEDで進めていますが、量産の計画は。

 JDIが液晶生産を停止する能美工場で量産を検討しています。10月中にも詳細を詰めて、量産に向けて準備を始めます。

──能美工場の量産にも資金が必要になるのではないでしょうか。

 JOLEDの増資を考えていて、JDIのグローバルパートナー探しとは別に、JOLEDのパートナー探しを始めています。

 能美工場の量産投資は、白山工場の蒸着方式に比べて小さな資金で済むので、日本国内に相手はいると思います。装置、材料メーカーや財務投資家も入るかもしれません。これも年度内にと考えていますが、JDIより早く決着がつくかもしれません。

──印刷方式の有機ELの本命はテレビ用の大型ディスプレーではないでしょうか。

 能美工場の基板サイズは第5.5世代と小さいので、テレビ用をやるには第8.5世代程度の工場が必要になります。でも、われわれが工場に巨額投資する選択肢は全くありません。他社の工場に技術をライセンスする新しいビジネスモデルを考えていて、中国のディスプレー工場に技術を売る形でテレビ用に参入します。

──JDIはJOLEDの子会社化の計画を延期しましたが子会社化はいつごろになりますか。

 (契約締結予定日の)来年6月までに決断しなければなりません。しかし、JDIの構造改革が終わるまでJOLEDの子会社化は急ぐ必要はないでしょう。JDIとJOLEDのパートナー探しに決着がつくまで待てばよいと判断しました。

──産業革新機構は、JDIに20%以上の出資者が現れた場合は、750億円の支援資金を返済する条項を付けました。革新機構との今後の関係をどう考えますか。

 保証を頂いたばかりでおこがましいのですが、JDIは新たなパートナーと手を結んで、最終的には「自立」できるようにしなければならないでしょう。本来はJDIが(14年に)上場したときに実現していなければならない姿だったのかもしれません。パートナーを探した結果として、その姿を目指すようにしたいと思っています。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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