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北ミサイルで防衛関連株高騰、市場は次の「Xデー」に注目

2017年09月04日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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北朝鮮のミサイル発射を受け、日本国内では12道県に全国瞬時警報システム「Jアラート」の不穏な警報音が鳴り響いた Photo:REUTERS/アフロ

北朝鮮のミサイル発射直後こそ混乱に見舞われたものの、ひとまず落ち着きを取り戻した金融市場。それでも危機が去ったわけではなく、潜在的な不安は付きまとう。こうした中、市場の目線は次の「Xデー」の行方がどうなるかに移り、固唾をのんで見守っている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田幸平)

「正直、騒ぎ過ぎじゃないかな……」。米国駐在の大手証券会社の営業マンが、8月29日の北朝鮮のミサイル発射を受けた日本の報道の様子を見て思わず漏らした言葉だ。

 当日は発射直後からテレビ各局が臨時報道態勢を敷く厳戒ぶり。全国瞬時警報システム「Jアラート」の不気味な警報音を耳にした人としては、「身の危険を感じない外野から何を」と怒りたくなるかもしれない。

 だが、実際のところ、米国では南部を襲ったハリケーン「ハービー」の被害が大きく、米国内の報道やトランプ大統領の対応もそちらに集中していた。何しろ今回のミサイル発射に対し、トランプ大統領が声明を出すまでに14時間超もかかっている。米領グアム島周辺への攻撃計画が伝わった際に、「炎と激怒」で打って出ると威圧したのとは対照的だ。

 米国の関心の低さとは裏腹に、金融市場はミサイルの発射直後から混乱の渦に巻き込まれていた。

 午前5時58分ごろ。弾道ミサイル(後に「火星12型」と判明)が北朝鮮西岸から日本の東北地方の方向に発射されたと伝わると、次第に円買い・ドル売りの動きが強まり、一時は1ドル108円台前半と約4カ月ぶりの円高水準に上昇。米シカゴ先物市場では日経平均先物が急落したほか、国際商品市場では「安全資産」とされる金に逃避的な買いが集まった。

 東京株式市場では売りが集中し、日経平均株価は一時1万9280円を付け、約4カ月ぶりの安値に下落。一方で長期金利は低下するなど、投資家が運用リスクを避ける姿勢が広がった。日経平均は取引終了にかけて下げ幅を縮めたものの、前日比87円安の1万9362円に沈んだ。

 利に聡い株式市場では、混乱に乗じ、ちゃっかりもうけを狙った“投機家”も動いていた。下表に示したように、「防衛関連」とされる幾つかの銘柄が急騰劇を演じたのだ。

 電気雷管や導火線などの火工品メーカー、細谷火工は防衛省や海上保安庁と取引していることもあって、29日に一時前日終値と比べ283円高(25%上昇)の1408円まで急伸。機械メーカーの石川製作所、興研や重松製作所といった銘柄の株価も大きく伸びた。

 あえて理由付けすれば「需要が増えるとの見方」が買い材料との言い方になるが、むろんこれらは「思惑買い」によるもの。ミサイルが日本上空を通過したからといってこれらの会社の商品の引き合いが膨らむ根拠はなく、相場全体が地政学リスクを意識した売りに押される局面で、北朝鮮からの発射が買いの手掛かりとされた形だ。

 発射当日の動揺は大きかったが混乱はすぐに一巡。日経平均株価は発射翌日の30日には前日の下げ分を挽回し、反発して取引を終えた。ただ、市場の動きがいったん落ち着きを取り戻したとはいえ、日本にとって北朝鮮をめぐる危機が去ったかといえば、多くの専門家も指摘するように、答えはもちろん「ノー」だ。

残る軍事衝突の公算
米国内にも不安要素
見定め難しい買い場

 さまざまな爪痕を残した北朝鮮のミサイル問題をめぐっては、日本時間30日に国連の安全保障理事会による議長声明が採択されたほか、石油禁輸措置を含めた北朝鮮への追加制裁も検討されている。刻一刻と新たな動きが浮上する中、市場に再び混乱を及ぼしかねない次の「Xデー」はいつなのか。

 それは、北朝鮮の建国記念日に当たる「9月9日」というのが市場関係者のほぼ一致した見方だ。北朝鮮は、昨年の同日には5回目の核実験を強行。米大統領がトランプ氏となった今年は、例年になく緊張感が高まっており、米国の出方に関心が集まる。市場では短期的に、少なくとも9日までは売買を手掛けにくい状況が続く。

 また市場関係者の多くは「米国と北朝鮮の軍事衝突には至らない」とみているが、事態悪化が続けば、米国が軍事オプションを行使したり、北朝鮮からのミサイルが日本列島に着弾したりする可能性も依然、消えたわけではない。

 北朝鮮問題のほかにも、米国の連邦債務上限問題が不安要素として浮上している。この問題を抱える中、FRB(米連邦準備制度理事会)が量的金融緩和からの出口戦略を首尾よく進められるかどうかについても、不透明感が指摘される。出口戦略が足踏みすれば、円高が進行し、日本株が下落する展開となる公算が大きい。

 相場格言「5月に売り抜けろ」には、「9月に買い戻すのを忘れるな」という続きがある。日本企業の業績は良好であり、「下げ切った先は絶好の買い場になる」(マネックス証券の広木隆チーフ・ストラテジスト)との声もあるが、そのタイミングを見定めるのは極めて難しい局面が到来している。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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