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ホンダ「N-BOX」刷新、安全装備標準化が業界に与えた衝撃

2017年09月04日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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ホンダが8月31日に発表した新型「N-BOX」。カタログの片隅には安全装備なしの“裏オプション”も記載 Photo by Takeshi Shigeishi

「常識を覆す販売戦略だ」──。9月1日にホンダが発売した軽自動車「N-BOX(エヌボックス)」の新型モデルについて、ある自動車メーカー幹部は驚く。

 エヌボックスといえば、箱型の独特のデザインや広い室内空間が特に子育て世帯に支持され、2011年12月の初代発売から5年間で4度の軽自動車年度販売台数1位を獲得。軽以外を含めた新車全体でも今年上半期(1~6月)の累計でついにトヨタ自動車「プリウス」を抜いた、日本で一番売れている車だ。

 ホンダの国内販売の約3割を占める主力シリーズだけに、今回のフルモデルチェンジでは構成部品の約9割を見直すという力の入れようだ。その結果、従来モデルよりも約80キログラムの大幅な軽量化に成功。室内空間をさらに広くし、助手席のロングスライドによって車内で移動しやすくするなど、もともとの強みだった居住性に磨きをかけた。

業界の販売戦略に影響か

 だが冒頭の幹部を驚かせたのはこれらのモデルチェンジではなく、ホンダが今回、高価格帯の上級車に搭載している最新の安全運転支援システム「ホンダセンシング」を、エヌボックスの全グレードに標準装備したことにある。

 ホンダセンシングとは、単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせて車の前後方の情報を認識し、車両や歩行者を検知してブレーキをかけたり、ステアリング制御で先行車に追従したりできるホンダの独自技術だ。

 競合車では、ダイハツ工業「タント」やスズキ「スペーシア」も衝突軽減ブレーキなどを搭載しているが、いずれも標準装備ではない。軽自動車のユーザーは価格にシビアな傾向があり、「安全装備なしの低価格グレードも用意し、お客さまに選んでもらう」(ダイハツ)ことが軽自動車販売の“常識”とされてきたからだ。

 実際、タントの最低価格が122万0400円(税込み、以下同)、スペーシアが127万4400円なのに対し、新型エヌボックスは138万5640円と高めだ。だがホンダは「価格が高くても安全性能など高付加価値を求めるユーザーは多い」と判断。従来モデルで弱かった安全装備を一気に拡充し、差別化を図る構えだ。

 軽自動車メーカーはこれまで低価格や低燃費を競ってきたが、上級車並みの安全システムの標準装備が軽でも「当たり前」(ホンダ)となれば、各社の販売戦略が大きく変わる可能性がある。

 ただホンダは表立ってPRはしないものの、カタログの片隅には「ホンダセンシングを装備していない仕様も用意しております」との一文も。購入者が安全装備を外すよう強く求めた際の対応だそうだが、システム普及の過渡期における苦肉の“裏オプション”といえそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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