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パナのテレビ事業が黒字化でも手放しで喜べない理由

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韓国LG電子など、他社からテレビ用パネルの供給を受ける中で、製品としての優位性をいつまで保つことができるか Photo by Masaki Nakamura

 あまりにも長く暗いトンネルだった──。2008年3月期以来、実に8期ぶりに営業損益が黒字に転換したパナソニックのテレビ事業。中国やメキシコでの生産撤退や、欧州やアジアを中心とした販売地域の絞り込みなど構造改革を進め、16年3月期の営業利益は13億円と、赤字だった前年同期に比べて162億円も改善してみせた。

 悲願達成に本来なら社内が大いに活気づいていいはずだが、トンネルを抜けた先に待ち受けていた景色は、当初想定していたものとは全く異なり、そこにあるはずの熱気は消えてしまっていた。

 それもそのはずだ。16年3月期のテレビの世界販売台数は、前年同期比27%減の636万台。5年前と比べると1000万台以上も減少した。

 売上高は同22%減の3508億円まで落ち込み、かつて花形だった事業は、完全な「縮小均衡」のビジネスに変容してしまっていたからだ。

 パナのテレビは10年前まで、世界でトップシェアを誇っていたが、今となっては3%前後しかなく、トップ10からも転げ落ちそうな状態にある。

 パナよりも一足早く15年3月期に、11期ぶりにテレビ事業が黒字転換したライバルのソニーと比べても、販売台数は2倍近い差をつけられ、平均販売単価は1万円超も少ない。

シェアと利益で揺れる戦略

 年々競争力が落ちる状況でもなお、パナがテレビ事業を続けるのは、東南アジアをはじめ新興国では、テレビは依然として「家電の王様」であり、電機メーカーとしてのブランド価値を容易に訴求できる製品だからだ。

 他の家電製品への波及効果も大きいため、縮小均衡に陥る中でも「テレビは価格で競争するつもりはない、などと言ってボリュームのあるゾーンから逃げるとビジネスにならない。中期的には市場シェアの5%、1000万台というのは視野に入れていきたい」(品田正弘事業部長)というスタンスを、少なくとも昨夏までは取ってきたわけだ。

 気掛かりなのは、その姿勢がここにきて微妙に変化していることだ。テレビ事業を統括するアプライアンス社の本間哲朗社長は6月、「もはやコストを割いてチャレンジをするような領域ではない」と報道陣に話し、1000万台の販売目標にはこだわらず、利益重視の運営を示唆している。

 店頭での存在感を踏まえ、市場シェアの維持・向上にこだわれば損益が悪化し、利益を重視し過ぎると販売台数が伸びず、存在感の低下につながる。

 そのジレンマの中で、今後事業をどうかじ取りしていくか。足元では、まるでテレビ事業の黒字継続を阻むかのように、新興国を中心とした景気減速というトンネルが迫っている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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