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三菱重工主導の造船4社連合にライバル各社が戦々恐々

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三菱重工業が造船事業の抜本改革を打ち出した。対策は大きく二つ。巨額損失を出した大型客船の建造からの撤退と、今治造船などとの提携強化だ。特に重要なのは後者。三菱重工が門外不出だった技術を他社に供与し、資本提携も検討する。“三菱連合”誕生で造船業界はようやく再編へと動きだしそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部・千本木啓文)

 三菱重工業は18日、大型客船の建造から撤退する方針を示した。ドイツのクルーズ会社から受注した2隻の客船で累計2408億円もの巨額損失を計上したためだ。

三菱重工業の宮永俊一社長は18日の記者会見で「日本に世界最高の造船技術を残したい」と述べ、痛みを伴う改革を断行する決意を示した Photo:JIJI

 三菱重工には、クルーズ会社が求める最先端の客船を設計するための経験値がなく、作業のやり直しを繰り返した。内装工事でも、トレンドを追うクルーズ会社のセンスに付いていけず、結局、欧州から専門業者を招くことになったため、建造コストが膨れ上がった。

 クルーズ会社のニーズを満たすには、客船に強い設計陣や内装業者などから成る“客船クラスター”が必要だが、三菱重工とパートナー企業はそのレベルに達していなかった。この問題が解決しなければ、“客船クラスター”を擁するイタリアなどの造船会社には勝てないと判断した。

 一方、日本国内の内装業者で対応できる伝統的なデザインの中小型の客船は失敗のリスクが低いため、引き続き受注する。

 三菱重工の宮永俊一社長は日本郵船から求められている客船「飛鳥2」の後継船の建造についても、交渉がまとまれば受注する意向を示した。

 大型客船からの撤退──。三菱重工が下した苦渋の決断に対して、複数の造船関係者は「巨額損失のみそぎを済ませただけ。想定内の中身でインパクトに欠ける」と口をそろえる。

 むしろ、造船業界にとって重要な意味を持つのは、建造量国内トップの今治造船、名村造船所、大島造船所との提携の方だ。これら造船専業3社は人件費が安く、低コスト生産を強みとする。「三菱重工が3社に技術力を提供することで、“三菱連合”の競争力が高まってしまう」と、早くも競合メーカーは危機感をあらわにする。

 三菱重工は造船の設計陣を分社する方向だ。これまでも三菱重工が省エネ技術を他メーカーに提供することはあったが、設計陣が事業会社として採算を求められれば、門外不出だった新型船の設計図も他社と共有しやすくなる。

 今後、三菱重工が設計や難しい船の建造を担い、3社が比較的容易な建造を行うなど、各社が強みを発揮できる分業体制を構築する。共同調達にも踏み切り、コストダウンも進める。来夏にも、“三菱連合”の体制が発足する見通しだ。

 三菱重工の鯨井洋一副社長は18日の記者会見で、「建造は資本関係をもって共同で行う可能性もある」と踏み込んだ。

 ただ、三菱重工以外の3社は創業家などの発言力が強く、拙速な提携に対しては慎重な声もある。“三菱連合”の成否は、三菱重工が提携のメリットを説明し、3社の警戒心を解けるかどうかに懸かっている。

“三菱連合”誕生で危機感をあらわにする
川崎重工・三井造船

 目下のところ、造船業界は「どん底」の状態だ。日本造船工業会によれば、世界的な新造船の需要減により、日本の造船会社の1~8月の受注量は前年同期の2割に満たない。昨年末からの円高も追い打ちとなって、造船会社の経営は急激に悪化している。

 そのさなかでの“三菱連合”の誕生に、日本の造船会社各社は戦々恐々としている。

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 中でも内心穏やかではないのが、“三菱連合”と並び“双璧”を成すジャパンマリンユナイテッド(JMU)だろう。

 2013年にJFEホールディングスなどが設立したJMUは、国内有数の設計陣を持ち、多様な船を造れる総合力を売りにしてきた。だが、人件費が高い大企業の造船部門同士による統合だっただけに建造コストでは“三菱連合”に分がありそうだ。

 規模や設計陣の厚みにおいて「二大勢力」に劣る造船会社の危機感はさらに強く、生き残りに向けて提携先を模索している。

 川崎重工業と三井造船は共に今年度、海底資源の生産に使う船などの設計や建造の遅延により、50億円以上の損失を計上している。両社は13年に経営統合が破談となり互いにアレルギーが残っているが、経済合理性を考えれば、再度、連携を図る可能性も否定できない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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