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旭化成、転ばぬ先のリストラに外野が「もっと儲かったはず」

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旭化成は、自前のエチレン装置を停止するなどの構造改革を進めて筋肉質な経営体制の実現を目指す(写真は岡山県にある水島製造所) 写真提供:旭化成

 雨の日に傘を買うのではなく、晴れの日に備えとして傘を買ったところ、周囲の人々から「雨が降ってから買えばよいではないか」と責められているような話である──。

 8月3日に発表された旭化成の2017年度第1四半期決算の場で、坂本修一取締役は「全く後悔していません」とあらためて強調せざるを得なかった。17年4~6月期の連結営業利益は前年同期比で26.7%増、純利益は同24.8%増と好成績だったが、「16年2月に水島製造所の設備を止めなければ、もっともうかったはず」との臆測が再び出てきたからだ。

 設備とは、石油化学工場でナフサ(粗製ガソリン)を分解・精製してエチレンなどの基礎化学製品を生産する装置を指す。ここから取り出されたエチレンやプロピレンなどの製品より、誘導品としてのプラスチック(樹脂)や合成ゴムなどが作られ、自動車部品や包装材などのさまざまな製品となる。

 石油化学工場にとって、エチレン生産設備は、各種の原料を生み出す“大本(おおもと)”ではあるが、積年の構造問題も抱えていた。基礎化学製品は、汎用品であるが故に、価格の振れ幅が大きく、常に市況に振り回されて業績はアップダウンを繰り返すという宿命がある。

 そうした問題に頭を悩ませてきた旭化成は、11年2月に岡山県の水島コンビナートで道路を一本隔てて隣接する三菱ケミカルホールディングスのエチレン生産設備との統合運営を模索し始めた。もともと、両社の装置の配管はつながっており、定期修理期間中に製品を相互に融通して助け合う“ご近所関係”にあったことから双方に実務上のメリットがあったのだ。

 16年4月以降は、共同運営会社が動きだし、生産で協業しながら各種の製品を分け合っている。

汎用品は需給が緩む

 ところが、中国やアジア経済の成長を背景に石油化学製品の市況が良くなってきたことで、「構造改革は少し早過ぎたのではないか」などと、事あるごとにお節介(せっかい)を焼かれるようになったのである。

 確かに、足元の状況を見れば、国内にあるエチレン生産設備(12基)は20カ月連続で稼働率95%以上の“フル生産”を続けている。

 しかしながら、そう楽観してはいられない。16~17年は、中東や中国などで大型設備が動きだした。さらには、17年後半から18年にかけて、米国のダウ・ケミカルやエクソンモービル・ケミカルなどがシェール由来の原料を使う石油化学工場を続々と立ち上げる。

 旭化成は、エチレン生産設備にとどまらず、世界シェア2位のアクリロニトリル(合成繊維の原料)や、アジアで1位のスチレンモノマー(合成樹脂の原料)などでも需給を見越した事業規模の縮小を進めてきた。

 汎用品ではなく、高付加価値品へのシフトを急ぐ旭化成に余念はなさそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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