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首都圏でなぜか人気!本州の最果て「青森」コンセプトの飲み屋

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 本州最果ての地、青森県。名曲「津軽海峡冬景色」で歌われるように上野初の夜行列車に乗り、降りて雪まみれになり「無口な人に囲まれて、ひたすら海鳴りだけを聞いている」といったイメージだろうか?確かにいつも冬で、グレーで、寒くて、雪が降っていて、というイメージが強いかもしれない。



「青森」コンセプトの居酒屋の店内。「ねぶた祭り」のポスターや天井に吊るされた「金魚ねぶた」が青森の臨場感を増している

 しかしここ数年、そんな「青森」をコンセプトとした飲食店が続々と首都圏にオープンしている。また年に一度、東京・中野で行われる「東北復興大祭典」では、本物さながらの「ねぶた」が運行し、まるで本場のような盛り上がりを見せる。

「なぜ、東京でこんなに青森なのか?」。今回は首都圏で青森の飲食店を経営する経営者やスタッフのインタビューと共に、検証していこうと思う。

 まず1軒目は新宿区荒木町で2011年にオープンした居酒屋「りんごの花」。今年はオープンから7年目になる。歴史ある飲み屋街である荒木町は個性的な店が軒を連ね、人気店が多く店の入れ替わりも激しい。

 そんな激戦区にありながらいつも予約でいっぱいのこの店は、真っ向から「青森一本で勝負」している。食材も地酒も青森からのみ仕入れをする徹底ぶりだ。なぜそこまで「青森」なのか?青森県十和田市出身の女将・茂木真奈美さんはオープン当初を振り返る。

「元々は私、食品会社で商品企画の仕事をしておりました。仕事上、全国で多くのメーカーの方とお話をします。よく打ち合わせの後、その土地の名産品を食べに連れて行っていただいたのですが、その度に『これは青森の名産品に似てる!』とか『この食材には青森のタレの方が合うな』とか思うようになっていっちゃって(笑)。おかしなものですね。全国でいろんな食べ物と出会う度に、故郷の青森の食べ物を思い出すなんて。その頃から『いつか青森の名産品を広めるお店をやりたい』と思うようになりました」

 共同経営者の小池政晴さんは茂木さんと同じ会社の同僚だった。神奈川県横浜市の出身で当初は青森には縁もゆかりもなかった。しかし、営業マンであった小池さんの担当地域が青森県になって以来、どんどん彼は青森県の魅力にはまっていく。そして茂木さんと一緒に脱サラをして「りんごの花」を経営することになったのだ。

女将の茂木真奈美さん。素材の新鮮さにこだわる「りんごの花」では「好き嫌いを克服して帰る方」も多いという

「2年間の準備期間を経てオープンしました。『価格競争には巻き込まれたくない。私たちはあくまでも青森産の品質の良いものだけを提供したい』という思いから、敢えて繁華街を避けて専門的な飲食店の多い荒木町を選びました。『りんごの花』のコンセプトは、この店を通して多くの人に青森を知ってもらい、行ってもらうこと。『この店がきっかけで初めて青森に行ってきたよ!』とお客様に言われた時は本当に嬉しかったです」

 茂木さんはその時のことを思い出しながら楽しそうに話してくれた。

青森のソウルフード「ねぶた漬」メーカーが
高円寺に立ち飲み屋を開店

 庶民的で若者が多い街、杉並区高円寺には青森のソウルフード「ねぶた漬」で有名な食品メーカー「ヤマモト食品」が、今年4月に立ち飲み店「ほんずなし」をオープンした。「ねぶた漬」とは海の幸(数の子、スルメ、昆布)と山の幸(大根、キュウリ)の醤油漬けで、地元青森ではご飯にも合い、酒のつまみにもなるということで大人気の食べ物だ。

「ほんずなし」では同社が展開する「ねぶた漬」はもちろんのこと、青森の地酒や焼酎を立ち飲み店ならではの格安価格で飲み食いできる。しかしなぜ若者が集う高円寺に青森コンセプトの立ち飲み店を開店したのだろうか?カウンターの内側でお店の切り盛りをする、東京進出の出店にも携わった青森県青森市出身のスタッフ・山本華奈子さんは言う。

お客さんによって津軽弁と標準語を一瞬で使い分けるスタッフの山本華奈子さん。可愛い猫を2匹飼っている

「実は高円寺は若い頃から私の飲みスポットでもあったんです。やっぱり仕事をするなら勝手の分かる街でしたかったので、すぐに本社に提案しましたよ。大きな街よりも庶民的で温かみのある街で東京進出1店目は始めたかったというのが、高円寺を選んだ理由ですね」

 住宅街の高円寺で、このローカル色の強い店。青森県出身以外のお客さんはどのようなきっかけで入ってくるのだろうか?

「実はお客様が青森出身のご友人の方からお土産で『ねぶた漬』をもらったりすることが結構あるようなのですよ。それで『あれ?ここは「ねぶた漬」の店ですか?あれ大好きです!』といきなりお褒めの言葉をいただいたりして。お店より先に商品が有名だと助かります(笑)」(山本さん)

お店側はあくまでも
マイペースなスタンスが多い

15時よりオープンする「ほんずなし」。「そんな早くから飲みだす人間は『ほんずなし(愚か者)』に違いない」と15時15分頃、青森出身の常連客の1人がホッピーを飲みながら冗談を言っていた

「ほんずなし」とは青森の方言で、「愚か者」という意味だ。しかし、憎しみの意味ではなく愛情を込めて言われることも多いという。大阪人の言う「アホ」のような便利な言葉とのことだ。「酔ったらみんな愛すべき『ほんずなし』ですよ!」山本さんの人懐っこい笑顔が印象的だ。

 ここ数年、首都圏で「青森」コンセプトの飲み屋は確かに増えている。「なぜこんなに青森なのか?」それは「青森の食べ物や飲み物を知ってほしい」というありったけのお店の方の郷土愛や青森愛がカタチになり、首都圏に住む人々にしっかりと届いているからであろう。

 しかしあくまでもマイペースでお店を運営している印象が強かった。自分の気持ちを他人に押し付けることなく、まずは自分から楽しもう。そんな前のめりではない、気楽で楽しそうなスタンスが最近の首都圏での青森人気の鍵なのかもしれない。

(ジャイアント佐藤/5時から作家塾(R))

◎取材店の情報

りんごの花
東京都新宿区荒木町11−24
03-6380-6724
http://www.ringonohana.com

ほんずなし
東京都杉並区高円寺北2-17-4
03-6383-0974
http://www.honz74.com


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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