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ユニクロが米国で自販機展開、地域性を意識しなければ自滅する

2017年08月17日 06時00分更新

文● 森山真二(ダイヤモンド・オンライン

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ユニクロも他の日系流通会社と同様に、米国では苦戦している。写真は米国・ニューヨーク5番街店 Photo:FAST RETAILING

「ユニクロ」が米国で自動販売機の設置を始めた。米国内の空港やショッピングモールなど約10ヵ所に設置し、ユニクロ製の衣料品を販売していく計画だ。ユニクロはアジア、とくに中国本土をはじめとした中華圏では順調に事業を拡大、そろそろ国内と海外の売上高が逆転しそうな勢いだが、こと米国では苦戦している。柳井正会長兼社長が掲げる2020年に3兆円、その先の5兆円という、真のグローバルプレイヤーの地位を築くためには米国や欧州での成功は不可欠。自販機の設置は米国戦略巻き返しの呼び水になるか――。(流通ジャーナリスト 森山真二)

空港やショッピングモールで
自販機を設置

 ユニクロの自動販売機は約14.90ドルの機能性肌着である「ヒートテック」、また約69.90ドルの「ウルトラダウンジャケット」が売られている。両商品ともに日本国内だけでなく、東南アジアでもヒットした商品。

 ウルトラライトダウンは箱に入って、商品が見える窓が開いている。ヒートテックは円筒状の缶に入っている。ユニクロらしさというか、商品の機能性が最もよく打ち出されている商品であり、これから秋冬に備えた商品展開といえる。

 ユニクロでは8月からロサンゼルス近郊のショッピングセンターやニューヨーク州クイーンズのショッピングモール、さらにテキサス州のヒューストン空港など全米10ヵ所程度に設置するという計画だ。

 広大な米国で気候の違いを感じる空港内では重宝しそうだし、ユニクロ店舗がないショッピングモールでは「何コレ?」と興味を惹かれる商品だと思うが、ネット上では自販機で衣料品を販売して「売れるのか」とか、「失敗するだろうな」などと悪評ふんぷんである。

 ではなぜ、ユニクロがあえてこんな評判の悪い自動販売機の設置に踏み切ったのだろうか。

 一つ考えられることは、自販機で本気で儲けようと思っていないのではないかということである。自販機はユニクロの文字が全面に強調された作りになっており人目を惹く。そして自販機のなかには商品が整然とカラーリングされて並んでいる。

 ユニクロは米国では知名度がまだ低く、自販機の商品で「こんなカラーの商品を売っているのか」などと関心を引き、「今度試してみるか」と購買の動機付けになる可能性もあるからだ。

 ユニクロの米国の店舗数は前期(2016年8月期)末で45店にとどまっている。米国が本拠とはいえ、米GAP(ギャップ)の米国内の店舗数の10分の1以下、またフォーエバー21に対しも10分の1以下となっている。

米国に進出する
日系流通は相次いで失敗

 米国にユニクロが進出したのが2006年。すでに10年以上が経過した。にもかかわらず、米国事業は赤字続きである。16年8月期では店舗の減損損失57億円を計上、5店の閉鎖に伴う除却損など計74億円を計上したことから、営業赤字が拡大した。

 10年も赤字が続けば、展開の存続すら危ぶまれ、「撤退」の2文字が浮かんできそうなものだが、やはりグローバルプレイヤーを目指す道のりのなかでは、消費大国米国では是が非でも成功させたいところだろう。

 そこで、考えられたマーケティング戦略が、さほどコストのかからない自販機という"宣伝塔"を全米の主要地点に設置してユニクロの知名度を高めるというものであろう。ただ、米国は日本のように自販機大国ではなく、設置場所も今後は限定されていくと見られている。

 実のところ、外食産業を除く日系流通業の米国展開は非常に厳しい。たとえるなら連戦連敗、百戦して百敗という有り様だ。2年前の15年8月にはファミリーマートが米国から撤退しているし、国内では飛ぶ鳥を落とす勢いのニトリも13年に米国に進出したが、まだ6店(17年2月期)とまったく出店に弾みがついていないのだ。

 逆もまた真なりで、日本に進出した流通外資で順調に事業を拡大しているのは、元々競合がなく、流通自体が成熟していなかった玩具専門店チェーンのトイザらス、ご存じネット通販大手の米アマゾン・ドット・コムくらいである。

 日本に進出した流通外資では米「ウォルマート・ストアーズ」も西友を買収して上陸しているが、これがまた、決してうまくいっているとは言い難いしフランスの「カルフール」、「セフォラ」、英国のドラッグストア「ブーツ」、はたまた英国のスーパー「テスコ」など死屍累々だ。

 アマゾンは店舗を構える小売業と違い、ネット上での商品政策や価格政策で即座に修正が効くところが大きい。世界で蓄積してきた利便性を武器にネット通販では後進国の日本ではさして強力な競合相手もなく、成長しているといっていいだろう。

 では、なぜ日系小売業が米国でうまくいかないのか。

日本で成功したビジネスモデルを
そのまま持ち込んでもダメ

 ある流通コンサルタントは「日本で成功したビジネスモデルをそのまま持ち込んでいるからだ」と話す。

 例えばロサンゼルス発祥のフォーエバー21は元来、韓国系アメリカ人のドン・チャン氏が米国の韓国系アメリカ移民のために作ったブランドであることは知られている。

 つまり、アメリカのファッションや文化を知り尽くしているといっていい。アメリカ人として土着しているから、アジア系移民でありながら一気に店舗を拡大できた。しかも国土が広大な米国では地域性も重要だ。

 ユニクロにしても、ニトリにしても日本や東南アジアで軌道に乗っているモデルで米国に進出したきらいは強い。中国など東南アジアでうまくいっているからといって、アングロサクソン文化圏でも同じようにうまくいくとは限らないのである。

 今回、ユニクロが自販機で販売するヒートテックにしても、ウルトラライトダウンにしても機能性が高く、日本などでヒットした商品だ。機能性よりもむしろ、ファッション性を好む米国人は多いし、黒人は、日本人から見ると、「こんなハッキリした色を買うのか」と思うくらい赤や黄色、グリーンなど原色を好む。果たして、米国のユニクロやニトリでは、そのあたりの地域的なニーズや嗜好性はうまく取り込んでやっているのだろうか。

 日本や東南アジアでいう地域性とは「気候の差」である。つまり、気候の差で売れる商品が違うことはある。その気候の寒暖差を見ても、寒い地方と比較的温暖な地方の差はあるものの、それほど極端な差であることは少ない。しかし、米国では地域によって気候の差はもっとハッキリしているし、流行のデザインなどを見ても地域性の違いが明確にあるのだ。

H&Mは
なぜ成功しているのか

 そのあたりをうまくとらえたH&Mはスウェーデンが母国でありながら、米国でも400店近くを展開し、ドイツ、中国、英国などでも数百店規模で多店舗展開している。

 小売業はやはり、ドメスティックな産業である。地域を知ることが重要なのである。

 今や、米国ではアマゾンの衣料品の売上高が来年には3兆円に達するというレポートまで出ている。

 ユニクロの競争相手は何も店舗を持つ、H&Mやギャップなどだけではない。見えない相手とも対峙しなければならない。これまで以上に米国をよく知って地域性を反映した商品を作らない限り、グローバルプレイヤーとして地位は遠のくばかりである。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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