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ブーム秒読み「ハンドスピナー」の魅力、米国の学校では使用禁止令も

2017年08月15日 06時00分更新

文● 末吉陽子(ダイヤモンド・オンライン

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古今東西、遊び道具は数あれど、「ハンドスピナー」ほど、“いま”“なぜ”人気を博しているのか合点がいかない玩具は類を見ないかもしれない。丸みを帯びた手裏剣のようなフォルムで、基本的には親指とその他いずれかの指で中心を挟み、外周をくるくると回すだけ。そんな極めてシンプルな玩具が、世界中で爆発的に愛好者を増やしているという。(フリーライター 末吉陽子)

ブームに火をつけたのは
アメリカのビジネスパーソン

 子どもだけではなく、大人も巻き込んでブームを巻き起こしているハンドスピナー。軸となるボールペアリングを中心に外部が回るという単純な構造だが、その人気ぶりは米国の学校では持ち込み禁止令が出るほどだという。

片手が使えなくなるからか、スマホ中毒緩和やタバコの本数減に役立ったという意見も寄せられるハンドスピナー。ハマる、ハマらないが、人によってくっきり分かれる玩具なのだという

 極めて地味な玩具がなぜここまで人気になったのか、秘密を探るべく訪れたのは、自身もハンドスピナーの謎な面白さに魅了されたと語る日本ハンドスピナークラブの山本智也代表。ハンドスピナーの誕生の背景は意外なものだった。

「1993年に米国フロリダ在住のキャサリン・ヘッティンガーさんが、重症筋無力症を患ったことをきっかけに、娘と遊べる玩具として開発しました。ライセンスフリーになってからは医療用の道具として、2005年以降は多動性障害の患者さん向けに、手持ち無沙汰を解消するために用いられてきました」

 もともとは医療用玩具の色合いが濃かったようだが、それがなぜ世界的なムーブメントにつながったのか。実は今のブームには前兆があったという。

「16年9月に米国で『フィジェットキューブ』というサイコロ型の玩具がリリースされ、クラウドファディングで6億8000万円を集めました。米国はクラウドファンディングが集まりやすいお国柄ではあるんですが、ここまで多額のお金が集まることは珍しくて話題になりました。サイコロみたいな玩具になぜお金が集まったのかといえば、6面サイコロの面のそれぞれに6種類の仕掛けを施した『フィジェット』と呼ばれる手持ち無沙汰解消をコンセプトに打ち出していたからです」

ハンドスピナーに先駆けてヒットした「フィジェットキューブ」。クラウドファンディングで6億8000万円を集めた

 これが多忙を極めるビジネスパーソンの心を捉え、フィジェット旋風が巻き起こることに。「手持ち無沙汰を解消するグッズが時代に求められている」という気づきのきっかけとなるリリースだったと山本氏は考察する。

「その後、16年12月に米国の中高年エグゼクティブ向け雑誌『Forbes』に、フィジェットブームが来ているという文脈の中で、ハンドスピナーが取り上げられ、今年注目のアイテムとして紹介されました。子どもではなく、ビジネスパーソンが火付け役になったという点もハンドスピナーの特筆すべき点ではないでしょうか」

スマホ中毒緩和から減煙まで
ハンドスピナーの効能あれこれ

 瞬く間に米国全土に広まり、いまでは老若男女問わずハンドスピナーを使っている光景が珍しくなくなっているという。かくいう山本氏が最初にハンドスピナーを目にしたのは、自身がメインビジネスにしている、スマホケースの買い付けで中国を訪れたときだそう。

「ハンドスピナーの生産拠点のメインは中国なのですが、たまたま仕事で足を運んだときに現地で売られているのを目にしたんです。何が面白いんだろうと思いながらお土産として試しに買ってみました。帰りの飛行機でちょっと遊んだら飽きるだろうと思っていたら、まったく飽きずに、むしろ今やハンドスピナーを回しているのがデフォルトになっているほどです」

 基本的には指の間でシャーっと回る様子を眺める、また回すこと自体でリラックス効果を期待するアイテム。いわば“ペン回し”のように、“ながら作業”の一環として、複数のことを同時並行している中、無意識レベルで遊べることが最大の特徴だという。また、他にも意外な場面で効能を発揮するという。

「コミュニケーションツールとして、ビジネスシーンで使用すると非常に上手くいくと実感しています。すごく気が張った打ち合わせをしなきゃいけないときに、ハンドスピナーをくるくる回していると、それだけで場が和むんです。実際、僕もミーティングで、ハンドスピナーを回していることがよくあるんですが、どう考えても堅めなクライアントであるにもかかわらず、フランクな感じで打ち合わせができる。大人ならではの緊迫した空気をかき消してくれる効果があるんじゃないかなって思っています」

 また、ハンドスピナーで片手が埋まるため、タバコの本数が減る、スマホをいじる頻度が減ったという声も多く寄せられているという。中毒性は高いとはいえ、ハマるかどうかは人それぞれだとか。

「実際回してみても『何が面白いの?』って言う人もいますし、『気持ちがかなり落ち着く』と話す人もいます。僕は落ち着く側の人間ですが、回しているとソワソワするという人もいますね」

日本でのブームはこれから
進化系のハンドスピナーも続々登場

 なお、素材によって価格帯は400円から1万円と幅広い。日本ハンドスピナークラブのオンラインショップをはじめ複数のオンラインストアで販売されているが、ロフトやヨドバシカメラなどで定期的にポップアップショップも出すことがあるという。

「大人のコレクター心をくすぐるデザインの豊富さも魅力です。デビューは安価なプラスチック製のものでも、徐々にメタリックなものやブロンズ調のものなど、変わり種を手に入れたくなるんです。あとは、個人のニーズに沿って、たとえばリップグロスを内蔵したハンドスピナーなんかも登場しました。また、アーティストのライブとも親和性が高くて、最近はLEDを搭載した光るハンドスピナーをライブグッズに採用するケースも出始めています。他にも、プロモーションに使いたいと、企業からサンプルを求められる機会も増えていますね」

 進化形のハンドスピナーは続々と出ているが、同じくリラックス&ストレス解消系のアイテムとして、07年に販売されて話題になった気泡緩衝材(通称「プチプチ」)をつぶす『ムゲンプチプチ』のように、ブームは一時的だろうと分析する山本氏。

 単純な玩具なのに、ではなく単純だからこそ、脳を休める道具としてストレス多き現代人に幅広く受け入れられているのかもしれない。山本氏の元には今、雑誌やテレビの取材が殺到しているという。日本での本格的なブームも目前だ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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