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横浜銀行で初の生え抜き頭取、地元密着・顧客目線の改革を語る 川村健一・横浜銀行頭取に聞く

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日本最大の地方銀行である横浜銀行。神奈川県に本店を持つこの銀行に、2016年6月、初めてとなる生え抜き頭取が誕生した。大蔵省(現財務省)の出身者が代々務めてきた頭取の地位が生え抜きに代わったことで、どのような変革をもたらしたのか。川村健一頭取に話を聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)

かわむら・けんいち/1959年生まれ。横浜国立大学卒業。82年横浜銀行入行。リスク統括部長、取締役常務執行役員などを経て、2016年4月にコンコルディア・フィナンシャルグループ取締役、6月より現職。 Photo by Toshiaki Usami

──横浜銀行で初めての生え抜き頭取に就任してから、1年が経過しました。これまでに、どのような改革に取り組まれましたか。

 この1年間で、生え抜き頭取のあるべき姿を示そうと試みました。これまで当行は、大蔵省(現財務省)など銀行ではない外部組織から頭取を招聘してきました。それ故、今までの頭取は、マクロな経済環境について話すことはできても、製品や海外取引について個々のお客さまと話すといったことは、大蔵省時代に経験していません。

 そこで、過去にそうした経験を積んできた生え抜き頭取として、1年間で250~260社ほどの地元企業を訪問し、お客さまの事情に踏み込んだ話をすることに力を注いできました。

 また、地元市民の皆さまとの距離を縮めるため、お祭りや花火大会といった地域行事に積極的に参加しました。節分の豆まき行事は、他の地方銀行はどこも参加しているようですが、当行はそうではなかったのです。今年は、私も裃(かみしも)を身に着けて、鎌倉市の鶴岡八幡宮で豆まきをしてきました。

 一方、銀行内部に向けた取り組みで重点を置いたのは、職員との一体化です。「頭取になったら遠い存在になった」と職員に思われないように、例えば、休日セミナーで講師をやる時間をもらい、中堅や若手職員に横浜銀行の歴史を講義しました。

 地元に長く住んでいる高齢のお客さまの中には、職員よりもずっと横浜銀行の歴史に詳しい方もいらっしゃいます。このセミナーには、そのような地元の方々と「昔はこうでしたよね」と話せるようになってほしいという狙いもあります。

 総括すると、頭取になると決まった後にやろうと考えた施策は、おおむね実行できています。

──これらの改革には、どのような問題意識があったのでしょうか。

 根底にあるのは、お客さまのためになる取り組みができているかどうか、という意識です。

 当行には、公的資金を受け入れざるを得ないほどの経営危機に陥った過去があります。当時、徹底的に人員整理を行ったのに加え、東京都内の店舗を半分に削減しました。また、地元である神奈川県内の店舗では、もともと店舗ごとにあった企業への融資機能を各地域の主要店舗に集中させ、銀行店舗は不便な存在になりました。その上、融資先企業に対しては、「貸出金利を上げさせてください」というお願いまでしたのです。

 ですが、お客さまの中にはこれらの不利益にもかかわらず、我慢しながら当行を継続的に利用してくれた方がたくさんいます。そうした当行を大事にしてくださった、お客さまの気持ちに応えるサービスを提供しなければなりません。

 その一方で、銀行の利益や株主配当を増やし続けることも求められます。それ故、時として、お客さまのニーズに反して、銀行の利益重視と思われる施策や企画書が散見されます。その点は、変えなければなりません。

昨年6月に、頭取に就任した川村健一氏。1年が経過し、銀行内外に向けて、生え抜き頭取としてのありさまを示せたと振り返る Photo by Toshiaki Usami

──では、顧客のために、という意識をどのように職員の間に浸透させるのでしょうか。

 一例ですが、頭取に就任した後、職員に「他の銀行に口座を開設しよう」と伝えました。銀行が月~金曜の午前9~午後3時しか開いていないことの不便さを、身をもって知ってもらうためです。

 このように、身近なところから、お客さまの目線に立っていないサービスの存在を知ってもらい、少しずつ改善していくつもりです。

 生え抜きの頭取に代わったというタイミングを利用することで、銀行内外のどちらに対しても、理屈抜きで変化を理解してもらおうと考えています。

職員を100人出向させ企業の後継者育成を支援

──次の1~2年で新たに取り組む施策を教えてください。

 現時点では、大きく二つの注力分野を掲げています。

 一つは融資先企業の成長支援です。そのために、後継者問題を抱える中小企業に銀行職員を出向させ、事業承継の支援を行います。出向先の企業数は100社ほど、期限は2~3年を想定しています。銀行に戻ってきたら、企業の内部で経営に携わった経験を生かし、今度は企業の成長支援の業務に就いてもらうつもりです。

 もう一つは、資産家に対する個人営業です。(東京都内に多く店舗を持つ)東日本銀行と経営統合して、持ち株会社であるコンコルディア・フィナンシャルグループ(FG)を立ち上げたことで、都内に進出する足掛かりができました。都内に住む富裕層に対して、お金を「ためる」のではなく、豊かな生活を送るために、お金を「使う」提案をしていく予定です。

 構想段階ですが、選択肢の一つが「ヨットを持ちませんか」という提案です。神奈川県には、海の地形で東日本随一とされる湘南や江の島があります。ヨットを持つために必要な保険やクルーなど、地元の銀行だからこそのつながりがあり、横浜銀行ならではといった提案ができると考えています。

 そして都内の富裕層が週末に神奈川に来る頻度を増やし、地元で消費をしてもらう。これは一つの地方創生にもなるでしょう。

──コンコルディアFGの誕生は、関東地方の地銀再編の火付け役になりました。他行とのさらなる経営統合はどうお考えですか。

 コンコルディアFGは、他の銀行の参画も可能なオープン・プラットフォームです。東日本銀行との統合効果を判断してもらった上で、一緒になれる三つ目の銀行が出てきてくれるだろうと考えています。しかし、現時点では、そこまで状況は進んでいません。

 東日本銀行との統合で、コストや収益面での相乗効果も出ていますが、それらを日本銀行のマイナス金利政策による収益減少がはるかに上回っているため、統合効果を見せづらくなっています。

──さらなる統合効果を生み出すために、どのような施策に着手されますか。

 今年は、二つの銀行間での人材交流に、より力を入れていきます。

 個人営業部門では、職員を東日本銀行へ出向させて、投資型商品をじかに顧客に販売しています。また、19年1月に予定しているシステム統合のプロジェクトも一緒に進めており、現場レベルでの人の接点が増えています。

 現場での交流をきっかけに、新しいサービスを生み出せないかと模索しています。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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