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静かに広がる「地域密着型起業家交流会」の効用

2017年07月27日 06時00分更新

文● 藤崎雅子(ダイヤモンド・オンライン

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プレゼンタイムの様子。ネコ用遊具の制作・販売者は、自らネコの変装をして事業内容や事業にかける思いなどを発表した

2年半で全国延べ6000人が参加した
「起業」を軸に地域がつながる交流会

 2015年1月に千葉市で始まった、起業家の支援を通じて地域を元気にするイベント「地域クラウド交流会」、略称「ちいクラ」。その開催は2年半で北海道釧路市、岐阜県高山市、愛媛県松山市など全国各地の27市区町へと広がり、開催回数は全43回、延べ参加者は約6000人にのぼる(2017年6月30日現在)。

 交流会のテーマは「つながる。広がる。うまれる。起業家の応援を通じて地域を活性化」。毎回、地域で100~200人が集まり、それぞれが人脈を広げたり、新たなビジネスチャンスをつかんだりする。

 そこではいったい、どんなことが行われているのだろうか?さる7月6日(木)に東京都江東区で開催された「第4回江東区地域クラウド交流会」(実施主体:第一勧業信用組合)に参加してみた。

 プログラムを一言で紹介すると、地域で活動する起業家5人がプレゼンを行い、その場で参加者からの「投票」を通じて「クラウドファンディング」(インターネットを通じて共感した不特定多数の人から資金を集める方法)を行うというものだ。

 プレゼンターの1人、ワイン醸造所やワインバルを経営している株式会社スイミージャパン社長の中本徹さんは、15年間の事業経験を踏まえ、これからは飲食業におけるベンチャー・インキュベーション事業に新たに取り組んでいく予定だ。「地元に根を張って、共に持続的に成長していける起業家の方々との出会いが楽しみ」との期待を持って参加したという。

参加費は1000円。その半分はプレゼンを行った地域起業家に応援投票結果に応じて分配し、もう半分は開催・運営経費にあてられる(サイボウズ資料より)

 プレゼンター以外で参加する場合、事前予約は不要で、当日参加費1000円を支払えば誰でも参加できる。この日は地元を拠点とする起業家のほか、行政機関や地元企業などから、「江東区を盛り上げたい」という共通の思いを持つ多彩な顔触れの176人が集まった。

 区長のあいさつや、参加者全員のラジオ体操でアイスブレイクした後、さっそく起業家によるプレゼンタイムがスタートする。前述の中本さんのほか、「幸福度向上支援事業」を掲げる訪問看護リハビリステーション運営者、区内で現代美術ギャラリーを営む経営者、ネコ用遊具「にゃんこタワー」の製作・販売者、地元に根を張る一級建築士事務所の代表が、自身の事業内容や事業にかける思いなどを発表。5人のプレゼンを聞いた参加者は、クラウドシステムを使って最も「応援したい」と思う起業家に投票する。

 投票タイムの50分間は、参加者が自由に交流する時間でもある。関心を持ったプレゼンターに質問したり、近くの人と名刺交換したり、会場内に張り出された参加者の名刺をもとに声をかけたりといったように、会場の随所でたくさんの交流の輪ができていた。「ちいクラ」ではプレゼンターだけが主役ではなく、参加者全員がそれぞれ有機的なつながりを持つ場になっている。

 最後に投票結果を発表。今回、最多得票者となったのは訪問看護リハビリステーション運営者で、得票数に応じて賞品(商品券)が贈られた。「この場で知り合った者同士で街に繰り出して、ぜひ地元にお金を落としていってくださいね」と、「アフター交流会」が呼びかけられて会は幕を閉じた。

「ココが嫌い」を排除し、
気軽に参加できる仕組みを考えた

「ちいクラ」の仕掛け人は、グループウェアを開発・販売するサイボウズ株式会社の永岡恵美子さん。起業家支援施設の館長という前職の経験からの発案だった。地域の人が交流して新たなチームを生む「ちいクラ」は、チームワーク向上に貢献するという同社の理念に合致することから事業化。同社が運営ノウハウやシステムなどをパッケージ化してプログラム提供し、各地の自治体や商工会議所、金融機関などが実施主体となって開催している。

「ちいクラ」はその名の通り「交流会」であるが、かつて永岡さんは「交流会が大嫌いだった」という。

「知人に誘われていくつかの交流会に参加しましたが、事前の参加申し込みが面倒だし、会費が高いわりに結局『つまらなかった』で終わることがほとんどでした。そこで、交流会の『ココが嫌い』という点をリストアップし、それらを排除する仕組みを考えたのが『ちいクラ』なのです」(永岡さん)

176人が集まった「第4回江東区地域クラウド交流会」。今回の参加者の満足度は88.6%だった

 そのためか、毎回、参加者にアンケートをとると、80%以上の満足度を得ており、評判が口コミで広がることで、江東区のように何度も開催に至る自治体が多いようだ。

「ちいクラ」をきっかけとしてビジネスチャンスが生まれる例も少なくない。例えば、釧路市での開催時に「地元に劇場をつくりたい」とプレゼンした起業家がいたが、これがきっかけで土地の紹介を受け、その後、融資も決まり、今、その実現に向けた準備が進行しているという。劇場ができることによる地域の活性化が期待されている。

 将来的には1700以上ある市区町村すべてでの開催を目指すが、「来年度中に全都道府県で1ヵ所以上の開催を実現させたい」と永岡さん。みなさんの町に「ちいクラ」がやってくる日も近いかもしれない。

「各地で最も応援票を得た起業家が各都道府県の代表として集まってプレゼンする、いわば『ちいクラ甲子園』のような全国大会も実施してみたいですね」(永岡さん)

 今後も「ちいクラ」はユニークな仕掛けで盛り上がっていきそうだ。

(藤崎雅子/5時から作家塾(R))


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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