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ビジネス英語ペラペラの日本人がパーティーでは会話が続かない理由

2017年07月03日 06時00分更新

文● 中野豊明(ダイヤモンド・オンライン

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TOIECは900点以上、英語のプレゼンや会議はお手のもの、外国人ビジネスマンからどんな質問が来てもスラスラと回答するというビジネス英語の達人でも「ホームパーティーや会食は極めて苦手」という日本人ビジネスマンは少なくない。なぜ、苦手なのか、その理由について解説しよう。(アクセンチュア マネジング・ディレクター 中野豊明)

ネイティブと英語で交渉する達人が
パーティーを嫌う理由

 私が勤務する外資系コンサルティング会社、アクセンチュアには世界で約40万人の社員がおり、日々の仕事で世界中の同僚と常に英語でコミュニケーションを取りながら仕事を進めている。このようにグローバルな環境で仕事をしていると、時に強烈に日本の独自性を感じることがある。

 現在、私はシカゴ出張中で、2日間に渡るクライアントとの打ち合わせを終えたところである。この出張中にも「世界の中の日本」を痛感する出来事があったので、今日はそのテーマを中心に話を進めたい。一体、その出来事とは何か?

 皆さんは、自分自身や周りの人が、海外出張の際、プレゼンやビジネス交渉をする時には流暢に英語を話していたのに、同じメンバーとの夜の会食の席ではとたんに無口になってしまった、という経験はないだろうか。

 Aさんは、海外留学の経験がありTOIECは900点以上、英語のプレゼンや会議はお手のもの、どんな質問が来てもスラスラと回答し、少し英語が苦手な上司から頼りにされるほどの存在である。ある時は英語で契約交渉を行い、ネイティブのタフネゴシエーターから思い通りの譲歩を引き出すこともしばしばある。

 まさしく誰もが認めるほど仕事ができて英語は非常に達者なAさんだが、夜の席では一転しておとなしい。「どうした」と聞くと「さすがに疲れました」という返事。

 とはいうものの、その割にはよく食べるし、日本人だけの2次会の席ではマイクを握って離さない。

「おいおい、疲れてたんじゃないの、大丈夫」と、思わず聞きたくなるような豹変ぶりだが、実はそれなりの理由があるのだ。

日常会話のボキャブラリーが
極端に少ない日本人ビジネスマン

 長期の海外生活経験がなく、自分なりに努力して英会話ができるようになった人なら分かると思うが、実は、コメントの言い方や質問の仕方、人のほめ方やアドバイスの仕方など、シーンに応じた言い方(文型)を覚えれば、かなりのビジネス英会話をこなすことができる。

 自分の仕事や業界での独特な単語、固有名詞があっても、それらをいくつか覚えればこと足りる。すなわち、ちょっとしたコツさえつかめば、ある程度は通用するのが仕事での英会話なのである。

 ちなみに言っておくが、国際的なビジネスを行う場合、ここまでの努力すらしないビジネスマンは、これからの時代、昇進の機会がどんどん減っていくことは間違いない。

 しかし、こうしたビジネス英会話の達人が、往々にして夜の会食の日常会話で話ができないのは当たり前のことなのである。なぜなら、日常会話に必要な単語をほとんど知らないからだ。例えば「おむつ」「トイレットペーパー」「二塁打」「乳母車」「サバの缶詰め」は、仕事で使うことは少ないが日常会話では出てくる可能性がある(もちろん、業界によるだろうが)。

 こうしたビジネス英会話では使わないが、日常生活では出てくる可能性のある単語が使われて、何を言われているか分からなかった時、代表的な日本人ビジネスマンの言い訳がある。

「いやー、酒が入るとみんな早口になるし、スラングが多くてさ。全然、ついていけないよね」

 これは、嘘である。

 彼らは良識あるビジネスマンなので、夜の会食の席でもスラングなんて使わないし、リラックスしているから早口にはならない。むしろこちらのことをよく知りたいと思って、いろいろと話題を振ったり、質問をしたりしてくれているはずである。このように自分に興味を持って質問されたことに対して、気の利いたことを回答したいと思うのだが、これがなかなか簡単ではない。

 例えば、「16歳になる娘がいるんだけど、最近話しかけても応えてくれないし、スマホばっかりいじって挨拶もろくすっぽしてくれないんだよね。これで彼氏でもいればかえって安心なんだけど、どうやら彼氏もいないみたいだしね」

 みたいなことを回答しようと思うと、長文を英語で言い切る自信がないし、そもそも単語レベルでつまづきそうな予感がする。……。

 だから、概ね「ワンドーター アンド ワンボーイ。ははは……」みたいな回答になってしまう。

 それでも気の利いた外国人は、「ワオ、そいつはいいね。娘さんは何歳なの」ぐらいは重ねて聞いてくれるかもしれない。この質問に「シックスティーン イヤーズ オールド。てへへへ……」と回答したって、もはや相手にその答えをさらに拾ってくれるほどの親切心は残っていない。「16歳の娘の何が可笑しくて、こいつはテレ笑いしてるんだ」といったところであろう。

子どもの玩具の話で痛感
深刻な情報鎖国

 それでも単語の問題は、解決するのが簡単だ。覚えればいいだけだから。

 今回、私もシカゴ出張に備えて、カブスとブルズとベアーズの予習を飛行機で少しだけした。おかげで、カブスの話題の時に「ヤギ男」が出てきても「呪いが解けてよかったね」と会話を続けることができた(カブスには「ビリー・ゴートの呪い」という有名な呪いがあった)

 単語レベルを超えて、もっと重要で深刻なことがある。それは圧倒的な情報不足による常識の欠如だ。

 数年前、イギリス、シンガポール、香港、アメリカ人と何気ない会話をしていたところ、イギリス人が「そういえば、最近うちの娘が、レインボールームに凝りだしてさ」と言い出した。

 すると、その場にいた私以外の人は皆「ああ、知ってる知ってる。すごく流行ってるよね」「イギリスでも手に入らないの?」「シンガポールも在庫があまりないわね」「中国製のニセモノは、まだ出回ってないのか」といった話になり、大いに場が盛り上がったのだが、私には何のことやらさっぱり分からなかった。

 一応、言っておくとレインボールームというのは、カラフルなシリコンゴムを織り込んでブレスレットやチャームを作る玩具のことである。

 驚いたのは、当時、世界中で爆発的に流行り始めたレインボールームを私以外の全員が知っていることだった。

 そこで、家に帰ってすぐに娘や妻に聞いてみたが当然知らない。アマゾンで調べたら、マーケットプレイスで扱っている店をようやく数店舗だけ見つけた。このことで私が感じたのは、社会や生活の話題は言うに及ばず、もしかしたら政治や経済のトピックですら、日本は他の国々に比べると圧倒的に世界の情報から閉ざされた「情報鎖国」の状態ではないかということだ。子どもの玩具の流行を知っている国々の人ならば、当然ながら、政治や経済についても「世界で何が起こっているか」を知っているに違いないと思うからだ。

 グローバル化が叫ばれて久しいが、アフターファイブの懇親会やパーティーに招かれた時に「壁の花」になってしまうと、どうしても消極的な人、面白味のない人と見られてしまう場合がある。

 我々、日本人ビジネスマンは、日本がいまだに情報鎖国の国であることを理解し、もっと積極的に世界の情報を収集するような姿勢を持ってもいいのではないだろうか。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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