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松村太郎の「西海岸から見る"it"トレンド」 第170回

iPhoneが普及して、ガムが売れなくなった理由

2017年06月28日 17時00分更新

文● 松村太郎(@taromatsumura) 編集● ASCII編集部

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これからの10年、何が起こる?

 先日、フランス発の無料プログラミングスクール「42」の見学に、フリーモント(Teslaの工場がある街)へ行ってきました。その帰り、Teslaで駅まで送ってもらう1時間ほどのドライブを経験しましたが、やはり何度乗っても、Telsaでのドライブは未来の体験です。

 乗せてくださったドライバーは、フリーウェイに入ると、オートパイロットをONにして、あとはペダルとハンドルから手足を離して談笑できる状態になります。「運転しているのに、助手席に載せてもらっている感覚」とはうまい表現です。

 しかし、最近はプログラム側も、自動運転を過信させないための工夫を施しています。長くハンドルから手を離していると、オートパイロットモードが強制的に解除されてしまうよう、システムアップデートがなされたというのです。

 今まで、オートパイロット中にハンドルから手を離すと、音が鳴ってハンドルを握るよう促されていました。しかし新しいバージョンでは、その音が鳴らず、ドライバーのコックピットのディスプレイ全体が点滅するだけ。それでも握らないと、画面が真っ赤になり、オートパイロットが解除されるという仕組みです。

 もっとぎゃんぎゃんアラートを出してくれればいいのにとドライバーは言いますが、逆に音が鳴るまでは手を離していて良いという猶予を与えてしまっていることに気づいた、Teslaのエンジニアの戦略勝ちですね。

 このエピソードで象徴的なのは、機械側が変化させた人間の行動 を是正しようとしている点です。

 オートパイロットでストレスや疲労なく移動する手段を手に入れましたが、同時に過信を生み出してしまった。完全にオートパイロットに任せてしまうのは、現段階では「行き過ぎ」というわけです。

 AppleもGoogleもAmazonも、我々の生活の中に人工知能をもたらそうとしています。すべてがTeslaのように安全性に直結するサービスとは限りませんが、我々のことを理解し、便利さを追求する部分、そして安全や人間らしさを保つ部分のバランスを設計が必要となります。

 それをデザインするのは、依然として我々人間のエンジニアであることは、当面変わらないのではないかと思います。


筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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