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回収要らずで売り上げ急増 クレハのシェール向け新素材

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 原油価格の急落によって多くが採算割れに陥ったシェールオイルとシェールガス。生産コストが賄えず、中には倒産する企業も出てきたが、そんな状況を変える“救世主”として日本企業のある商品が今、ひそかに存在感を増している。中堅化学メーカー、クレハのプラスチック「クレダックス」だ。

当初、クレダックスは炭酸飲料のペットボトルへの使用が期待されたが、開発の途中でシェール掘削用途という金脈を掘り当てた
Photo:REUTERS/アフロ
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 ただのプラスチックではない。クレダックスは、水や微生物によって二酸化炭素と水に分解されるプラスチック(ポリグリコール酸〈PGA〉樹脂)なのである。その上、「1平方センチメートルに約1トンという圧力にも耐えられる」(上山隆久・クレハPGA部長)高強度の優れものだ。

 シェールオイルやシェールガスは、地下のシェール(頁岩)層に水平に開けた1~3キロメートルの穴に火薬で亀裂を入れた後、穴に水を勢いよく通し、水圧で亀裂を広げることによって採取する。

 クレダックスは、水圧を効率よくかけるため、穴を数十メートルずつ仕切る道具に使われている。

魅力的なコスト削減効果

 これまでの掘削では金属の仕切りが使われてきたが、金属は役目が終わると2~3日かけて、ドリルで壊して破片を回収する必要がある。おまけに、「回収時に仕切りの破片が亀裂に詰まり、生産量を減らしてしまうリスクがある」(西畑直光・クレハPGA事業部長)のも悩ましい。

 その点、クレダックスなら、生産が開始されるまでに水によって分解が進むので回収しなくてよい。もちろん亀裂の“目詰まり”とも無縁だ。

 仕切り部分だけの価格を見れば、金属製のものより高い。ただ、仕切りの回収費用は掘削費用の約5%を占めるとされる。工程が短縮でき、総コストの削減につながるとしてクレダックスが注目されているわけだ。

 油価の下落により、米国におけるシェールオイル、シェールガスの今年の掘削件数は「昨年より2~3割減るとの見方が多い」(西畑PGA事業部長)。しかし、だからこそ顧客のコスト削減意識が高まるという意味ではクレハにとっては追い風だ。クレダックスは、本格生産を始めてまだ2年強で伸び盛り。来期は今期の2倍の約30億円の売り上げを見込む。

 強気な計画の背景には、クレハの自信も見え隠れする。何しろ現在、掘削時の水圧に耐えつつ水で分解するプラスチックを年産4000トンという規模で量産できる技術を持つのは同社以外にない。しかも、成形加工も子会社で行っており、ノウハウの囲い込みも進む。

 とはいえ、クレダックスをクレハの収益の柱として安定成長させるには販路の拡大も必須だ。すでにPGAの市場がある手術用の縫合糸など、医療用途への拡大は目指しているというものの、付加価値で勝負できる新たな用途開発も重要になる。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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