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不正融資問題の商工中金「全営業ノルマ停止」で再起できるか

2017年06月28日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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安達健祐・商工中金社長は、6月9日に経済産業省などに業務改善計画を提出。その一環として、数字目標による業績評価の停止を決定した Photo by Takahiro Tanoue

 全ての営業ノルマを停止する──。中小企業を対象とした、政府系の金融機関である商工組合中央金庫(商工中金)が、不正融資問題の渦中で異例の事態に追い込まれた。

 この問題とは、災害や金融危機によって業績が悪化した企業を国が支援するための制度である「危機対応業務」において、商工中金の職員が不正な融資を繰り返していたというもの。企業の財務諸表を改ざんして、本来ならば対象外となる企業にも融資を行い、実績をかさ上げしていたのだ。第三者委員会の調査によって、すでに760件もの不正が発覚している。

 元凶は、職員に課された事実上の営業ノルマ。本部で設定した数字目標を支店に割り振っていたが、制度に対する実需を上回る数字を持たされたところもあり、「過大なプレッシャーとなっていた」(安達健祐・商工中金社長)という。

 そのため、数字による評価を停止し、本部主導ではない評価項目を導入することにした。ところが、その中身は実にお寒いものだ。

 というのも、代わりの評価項目は、支店ごとに自主的に目標を設定させるというからだ。つまり、本部が支店に評価設定の中身を“丸投げ”したかたちで、支店には困惑が広がっているという。

 その一方で、「事務ミスがないか」「融資先に破綻懸念はないか」といった減点項目は残されたままで、あら探しのための項目が際立つ。となれば、職員の融資姿勢が“逆回転”することで、本来支援すべき中小企業にまで悪影響が及ぶ懸念にも注視が必要だろう。

 加えて、「今期の職員の評価は横並びになるのではないか」(商工中金関係者)と、すでに代わりの制度が機能しないことを指摘する声すら上がっている。

 いかにもチグハグ感の漂う“その場しのぎ”という印象は否めない。第三者委員会の調査と並行して、不正を繰り返さないための評価体系を構築することが必要だ。

制度悪用による税金浪費

 不正行為の背景には、商工中金がさらされている、民営化に関する議論がある。

 政府からの出資を受ける商工中金には、もとより民間の金融機関がちゅうちょする、貸し倒れのリスクが高い企業を支援するという存在意義があった。

 2000年代半ばには、小泉内閣の下で商工中金も含めた政府系金融機関の民営化議論が進められたが、その後、リーマンショックや東日本大震災といった有事が発生。危機対応業務で実績を残し、完全民営化を逃れてきた。

 しかし、有事から平時に戻る中で、商工中金は不正によって自らの存在意義を無理やりつくり出していたといえる。問題が明るみに出なければ、国民の税金をいたずらに使い続けていただろう。

 税金浪費の事実を反省し、いま一度、政府系金融機関の在り方を見直すべきだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 田上貴大)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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