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民泊「Airbnb」ホスト生の声…儲けやトラブル、婚活目的も!?

2017年06月09日 06時00分更新

文● 有山千春(ダイヤモンド・オンライン

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※写真はイメージです

米国発祥の民泊仲介サイト「Airbnb」は、日本でも外国人ゲストとの国際交流や手軽な副業としての魅力を感じ、ホスト登録する人が増えている。しかし、現在の日本では、ネットを通じて広く宿泊者を募って有料で宿泊させる場合は旅行業法上の許可が必要であり、許可を得ないで“もぐり”で運営するホストも少なくない。その上、宿泊者が住宅街で夜中に騒ぐなどのトラブルも散見される。登録するホストは、実際にどんな考えや目的で、登録しているのか。取材して本音を聞いてみた。(フリーライター 有山千春)

 2008年にアメリカ・サンフランシスコで誕生し、2014年に日本法人が設立された、一般住宅に旅行客を有料で泊める民泊仲介サイト「Airbnb」。その急成長ぶりはすさまじく、6月2日付けの日本経済新聞によると、2016年度の同社を利用しての訪日外国人数は400万人であり、2015年度の4割増だという。また、日本国内の登録物件数は、BnB Insightによると今年3月1日時点では4万6855件、4月1日時点では4万7365件、5月11日時点では4万8685件と、見事な右肩上がり。

 さらに自社発表のレポートによると、

「2016年、日本の標準的なAirbnbホストのホスティングによる年間収入額100万4830円」

 と、ホストにとって魅力的な側面があることを見せている。

友人の影響で
ホストとして登録

「友達1人がホストをやりはじめて、『どんどん物件を増やしている』と景気のいいことを言い出すと、他の友達も続々とホストとをやり始めて。私もだんだん興味が湧いてきて、つい先日、ホストとして登録したばかりです」

 そう話すのは、都内在住の女性・Hさん(30代・既婚)だ。彼女は、2DKの自宅マンションの一室を登録している。

「昔から旅が好きで、よく海外のドミトリーを泊まり歩くような旅行をしていました。私が旅行をしていた当時は、ネット情報もあまりなく、現地在住の友人に頼んで宿泊場所を探してもらっていたんですね。そこで気に入らなくても、頼んで探してもらったものだから断れないじゃないですか。それがAirbnbなら、これだけの情報が集約されていて、値段から内装まで詳細を自分で調べることができる。世界中の旅行者から支持を得ている理由がわかります」

 そんなHさんは、「パートナーが海外出張中の数ヵ月間、使っていない部屋を登録した」そうで、登録からたった数日で、日本をはじめ各国の旅行者から予約が入り驚いたという。

 彼女がAirbnbを知ったのは、前出の通り友人きっかけだった。

「友達は最初は、自宅近辺のワンルームをAirbnb専用に借りたそうなんです。するとすぐに予約で埋まってしまったそうで。『これはいい副業になる』と踏んで、さらに1軒、もう1軒、と借りてゆき、ついには一軒家を借りてシェアルームとして登録しています。それだけあるので、鍵は玄関先に備え付けた暗証番号つきキーボックスに入れ、ゲストだけでもチェックインできるようにして、スケジュールや清掃などの管理全般は代行業者に依頼しているようです。リネン類や食器、家具を揃えるのに、結構なお金を使ったそうですよ。もう、立派な“宿泊業”ですよね」

“もぐり”の民泊行為
外国人宿泊者によるトラブル頻発

 元を取れるほど「予約はひっきりなし」だそうで、資金面での不安はない。懸念するならば、その行為が“もぐり”であることだけだった。

「部屋を借りるときは、自分の住居として借りているようで、いわゆる“無許可営業”ですね。それに、代行業者が常駐しているわけでもないし、自分も近くにはいない。となると、野放し状態なんです。あるとき、酔った外国人ゲスト同士が家の前で大げんかをしたそうで。地元民しか住んでいないような閑静な住宅街ゆえ、元々『最近、やたらと外国人が多い』と不審がられていたようで、すぐに警察を呼ばれて、大家にも連絡がいったそうなんです」

 そのときは厳重注意に終わったが、また問題が起こったら、「旅館業法違反で被害届を出す」と牽制された。しかし友人は、やめない。いや、やめられないのだ。「夏まで予約がいっぱいで、すでに入金もしてもらっているから」だという。

 また、あるときは……。

「そこはオートロックマンションの4階にある部屋で、外国人ゲストが部屋にカギを忘れたそうで。普通ならホストに連絡して相談するじゃないですか。ですがそうした発想が抜け落ちていたようで、なんと、壁をよじ登って隣の部屋のベランダに辿り着き、窓をノックして……」

 時刻は深夜。隣人は普通に暮らすマンション住民だ。当然ながら、通報された。

 こうしたホスト不在時のトラブルは、かねてから存在する。これまで報道された事案では、2012年、ストックホルムにて、長期休暇に際して貸した自宅が、売春宿にとして利用されていた……2014年にはアメリカのコメディアンが結婚パーティー用に部屋を貸すと、50人規模が訪れ、乱痴気騒ぎを想起させるような荒れ放題の部屋となって返ってきた……などがある。

「やっぱり、自分の目の届く場所じゃないと、怖いですよね。かと言って自宅の余った部屋を他人に貸して、毎日見知らぬ他人と一緒に暮らすのもストレスが溜まりそう。その点私は期間限定ですし、貸し出す対象は女性とカップルに限定しているし、自分のプライベート空間も確保されています。日本の観光地ではない、ローカルに興味のある外国人との出会いはきっと楽しいでしょうし、いまのところワクワク感しかありませんね」

 Hさんが見せる明るい笑顔には、ポジティブな出会いが訪れる予感を宿していた。

「スーパーホスト」を目指し
心がすり減る

 一方、昨年から自宅である一軒家の一室を登録している、都内在住の男性・Kさん(30代・独身)は、「心がすり減っていく」と、うなだれる。

「元々インテリア好きで掃除好きなので、新規のコストはかからず、いい副業としてやっています。女性限定で、1ヵ月に平均5人、1泊から1週間宿泊するので、ほとんど毎日、他人と暮らしている感覚です。4月は9万円以上の収入がありました」

 仕事は自由が利く自営業のため、本業が副業に足を引っ張られることもないという。

 ゲストの国籍や動機は、実に様々。留学の下見に来た韓国人母子。バックパックで世界を回るフランス人。日本文化が大好きな中国人。タレントのイベントに参加するために来た地方在住の日本人。ほとんどは「深入りしない距離感を保っている」といい、しゃべるのはチェックインとチェックアウト時のみが主だそう。

 Kさんの目下の目標は、“スーパーホスト”と呼ばれる優良ホストに昇格すること。スーパーホストになると、ゲストからの信頼を得やすい「認定バッジ」が表示され、宿泊率アップに繋がるのだが、宿泊実績や返答率、レビューの8割が5つ星評価であること、などの条件が必要だ。これが、神経をすり減らせる原因だという。

「良い評価をもらうために、過剰なくらい気を使っていますよ。最初は、『備品を持っていかれたり、図々しいゲストもいるんじゃないか』なんて疑心暗鬼になっていましたが、逆に、部屋にコーヒーや菓子類をたくさん置いたり、日本製の高級タオルをふんだんに使えるようにしておくと、『こんなにホスピタリティに溢れるホストはいない!』と喜んでくれることが多くなったんです。そりゃあ、向こうも男の家に一人で泊まるんだから緊張しているだろうし、信頼関係が何よりも大事なんだなあ、と気づきました」

 だが無情にも、Kさんのホスピタリティがレビューに反映されないこともある。さらに、「自分はこれだけ気を使っているのに、ゲストは共有部分のリビングやトイレや風呂を汚しっぱなし、電気をつけっぱなし」といったことがあると、自宅を開放しているがゆえ、どうしても腑に落ちない。すると「一体どこまで気を使えばよいのか」と、気を病んでしまうのだ。

 と、同時に、Kさんはある“希望”にも気づいた。

女性ゲストも
“出会い”を求めている!?

「Airbnbには、僕のような自宅の一室貸しのほか、マンションの一室を借りるという、完全なプライベートが確保できる選択肢もあるというのに、ですよ? 男がホストで、一つ屋根の下で夜を共にするとなる、僕の家に来るということは、女性ゲスト側も“出会い”を求めているんじゃないのか?と思うようになったんです」

 場所や金銭的な折り合いなど、宿泊先を選ぶ条件はさまざまだが、確かに、なかには“旅先での人との触れ合い”も条件に入れる旅行者はいるだろう。

「とある日本人の女性ゲストが来たときのことです。夜、彼女が僕の部屋をノックして、こう言うんですよ。『ちょっとリビングで話しませんか?』と。2人でお酒を飲みながら、ほんの数時間でしたが、お互いがこれまで旅をした経験を語り合い楽しい時間を過ごしました。彼女は帰り際、『また東京に来るときには、ここに泊まりに来ていいですか?』と、微笑んで帰っていきましたよ」

 その経験を経たKさんは、以前よりもゲストを手厚くもてなすようになった。あくまで、プライバシーを尊重し、出すぎた真似はせずに。

「また来てもらうには、彼女らに良い記憶を残すことだけです。一生忘れられない旅行にしてほしい、楽しい旅の思い出の一部になりたい、そう思って、帰り際に日本酒などのちょっとしたプレゼントもするようになりました」

 そのうち、Kさんの目標は、スーパーホストの“その先”も見えるようになった。

“下心”を見せるのはご法度だが
“結婚できるかも”という希望がある

「最初は、ゲストとホストという関係だけど、また泊まってくれるようになれば、徐々に異性としての関係性が芽生えるのでは、と。出会っていきなり“エア同棲”しているようなものじゃないですか。お互いの生活の一部が垣間見えるし、出会い方としては、婚活パーティーなんかに行くよりも手っ取り早い。そう、僕が狙っているのは“エアビー婚”です。ただ、ご法度なのは、こちら側からその下心を見せること」

 当然、犯罪に発展する可能性もある。実際、2014年にバルセロナで、自宅に泊まったアメリカ人のゲスト女性2人を泥酔させ強姦したコロンビア人の男に、有罪判決が下っている。そうした情報はAirbnb利用者ならばチェック済みであろうが、ホスト側にほのかな「下心」があっても容易には動けないのだ。

「だからこそ、ゲストの顔が見えない貸し切り系や、ましてや普通のホテルなんかでは芽生えない、妙な信頼関係が生まれるんですよ。そうすると、これまでの日常にはなかったコミュニケーションの面白さを味わえる一方、たしかに疲れます。でも、“結婚できるかも”という希望があるので、頑張れます(笑)」

 5月11日時点で、世界の利用者数が1億5000万人を突破したAirbnb。今後、“エアビー婚”が一般化する日も、近いかもしれない。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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