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“太陽光バブル”の終焉で混沌とする再エネの未来

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原発事故を受けて、急速に普及した再生可能エネルギーが転換期を迎えつつある。牽引役の太陽光発電に新規参入者が群がる“バブル”は終わりが見え始める一方、次なる起爆剤は見えてこない。

 2月1日、鳥取県米子市。汽水湖として知られる中海のほとりにある小さな小屋で、ソフトバンクの孫正義社長の声が響いていた。

「原発の依存度を高めていきたい人はおそらくいない。代替手段としてのエネルギーが必要だ」

 この日は、ソフトバンクの子会社SBエナジーと三井物産が設立したメガソーラー(大規模太陽光発電所)の運転開始日。出力4万2900キロワットと本州最大の太陽光発電所の運転開始とあって、孫社長がビデオレターを寄せたのだ。

SBエナジーが米子市内で運転開始したメガソーラー。ソフトバンクは電力小売りにも本格参入する
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 式典では、平井伸治知事も「新しいエネルギー政策に向け、私たちが未来を築く中心地になる」と熱弁。雪で白く染まる大山を背景に、並べられた1万7000枚の太陽光パネルを見て、関係者は一様に希望の表情を浮かべていた。

 再生可能エネルギーの旗手とされる太陽光発電。米子市以外でも稼働が相次いでおり、一見、順風満帆に普及しているようだ。

 だが、実情は少し違う。

「もう今は太陽光の『次』しか見ていない」と、太陽光発電の普及促進を牽引してきたソフトバンクの関係者は打ち明ける。

悪質業者が跋扈し 稼働はわずか2割
本命の風力にも壁

 もう太陽光はピークを過ぎた──。業界ではこう話す関係者が増えている。背景には急速な普及策が取られた太陽光発電が引き起こした“バブル”のひずみがある。

「まだまだ毎日のように、怪しい案件が届いてきますよ。昨日はゴルフ場の案件で12億円なんてシロモノが来ました」

 都内にある太陽光発電のブローカーの1人は話す。太陽光発電の計画を売買する案件が日々、持ち込まれているのだ。

 週刊ダイヤモンドが、案件のリストを入手したところ、太陽光発電所を設置する土地代や紹介費、面積、パネルの種類や送電網への距離など発電所運営に必要な項目が書かれているものや、太陽光発電所に転用可能な全国のゴルフ場の詳細を網羅しているものもあった。

 実は、リストには疑問符がつく案件も多い。中には、発電するつもりがないのに権利だけ取得した業者が、売買を持ちかけているものがあるのだ。関係者は「こうした案件は1メガワット当たり5000万円程度と相場の2倍近い」と話す。

 いったい、なぜこうしたことが起こるのか。背景には、太陽光発電が確実に“もうかる”商売になっていたという事実がある。

 太陽光発電の起爆剤になったのは2012年7月の再エネ全量買い取り制度だ。太陽光で発電された電気は、1キロワット当たり42円(20年間)という高い価格で全量を買い取ってもらえる仕組みだった。

 事業者からすれば、メガソーラーは「10年前後で投資回収」(再エネ事業者)ができ、その後は億円単位で稼げるおいしいもの。

 それだけに、買い取り価格が引き下げられた(13年度は38円)年度末には、何とか42円のうちに権利を得ようと有象無象の業者が殺到したのだ。

 42円の権利を得るためには国による「認定」が必要だが、実際には土地を確保していなくても認定を得られるため、発電の権利だけが転売される事態が発生した。このため、原発20基分に及ぶ認定案件があるにもかかわらず、稼働にこぎ着けた計画は現状でわずか2割弱にとどまる(図参照)。

 もちろん、優良な事業者でもパネルの需給が逼迫して、運転開始に時間がかかっているケースが大半だが、先述のような悪質業者の存在が稼働率を押し下げているのは間違いない。

 コンサルティング会社の太陽光センターの安井慎二代表は「認定を受けた計画のうち、実際に稼働するのは半分強ぐらいになるかもしれない」と予想する。

 こうした事態を受け、経済産業省は認定の条件を厳格化したり、発電計画のうち4700件の実態調査に乗り出すなど、悪質業者の排除に本腰を入れているが、この“バブル”が与えた太陽光へのマイナス影響は決して小さくない。

 大手再エネ事業者の関係者は「悪質ブローカーが絡んでいる案件以外では、大型の太陽光発電所を設置できる土地は日本全体でかなり少なくなった」と嘆く。

 大手事業者はすでに太陽光の次を見据えた戦略に軸足を移しつつある。SBエナジーの藤井宏明副社長は「太陽光は、小型の案件で地域に電力供給をする地産地消のフェーズに移行する。われわれは、北海道を中心とした風力発電にも力を入れたい」と話す。

 風力発電は、太陽光と比べ発電能力も大きく、国も再エネの「本命」に位置づけるエネルギーだ。

 だが、ここにも大きな問題がある。風力の一等地である北海道は送電線の容量が小さく、需要地の本州に電力をあまり送れない。政府関係者も再エネ事業者も「北海道と本州をつなぐ連系線の整備が急務」と声をそろえるが、数千億円規模の整備費用がかかることから、国としてなかなか明確な方針が打ち出せずにいる。

 原発事故を受けて、一時は救世主のようにうたわれた再エネだが、真の普及には、難題だらけの現実が横たわる。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)

週刊ダイヤモンド


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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