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信越化学の“社運プロジェクト”で東洋エンジがやらかした失態

2017年06月08日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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Photo:JIJI

 東洋エンジニアリングが大ピンチに陥っている。当初は2017年3月期に125億円の営業利益を見込んでいたというのに、20億円の営業赤字を計上してしまったのだ。最大の理由は、約14億ドル(約1700億円)で受注した米国のエチレン製造設備プロジェクトにおける工事費用の大幅増加にある。

 このエチレン製造設備とは、日系化学メーカーきっての高収益企業である信越化学工業の米国子会社シンテックが、米ルイジアナ州に建設を決定したものとみられる。インフラ資材や建材の材料として使われる塩化ビニル樹脂(塩ビ)の世界最大メーカーである同社が、塩ビの主原料のエチレンの内製化をついに始めるとして、化学業界では知らぬ者はいない案件だ。

 リスクは高くないはずだった。完成を目指しているのは年産50万トンの設備であり、決して設計や建設が難しい大型設備とはいえない。東洋エンジにとって石油化学プラントは得意分野でもある。

 ならば、なぜ工事は混乱したのか。落とし穴は、冗談のようだが“地面”にあった。地盤調査はしたのだが、調査箇所から数メートル離れただけで地質が変化するという「今まで経験したことのない」(芳澤雅之・東洋エンジニアリング代表取締役)事態に直面した。

 問題が発覚したのは昨春。最有力プロジェクトに緊急アラートが点灯した瞬間だった。

ペナルティーリスクも浮上

 エンジニアリング会社にとって工期厳守は絶対だが、今回の相手は生産性のあくなき追求やシビアなコスト管理で有名な信越だ。

 しかも、このエチレンプロジェクトには信越の社運が懸かっている。というのも、エチレン内製化によるメリットは、全量を市況ベースで調達した場合と比べて年間数百億円にも上るとされる。

 全ての化学製品の大本であるエチレンを製造することは、化学メーカーにとって特別な意味も持つ。「これで名実共に『化学大手』といわれるようになる」(信越社員)と、社内の期待値も高い。

 東洋エンジは、本件を含めた大型案件2件のみを扱う特定プロジェクト事業本部を新設。足元では杭工事は完了し、キャッチアッププランも順調に進むが、今なお同社の最優先課題としてプロジェクト対応に当たっている。

 このプロジェクトの成否は、東洋エンジの命運を左右する。工期が遅れれば、ペナルティーの支払いが科される可能性が高い。そうなれば、ただでさえ追加の工事費用が積み上がったところに、泣きっ面に蜂である。

 そもそも、東洋エンジは15年3月期に209億円という大きな最終赤字を出したばかり。15年4月に社長の首まですげ替え、再建計画を遂行している真っ最中だ。

 同社には、気を抜いて足固めを怠っている時間は残されていない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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