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C級大学から早慶上智を目指す「編入」という大逆転技

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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専修大学から大学編入で大阪大学へ、大東文化大学から上智大学へ――。そんなウルトラCが「大学編入試験」では、しばしば起きている。予備校もその可能性に目をつけ、近年編入試験の対策コースを設置し始めた。現役での一般入試では叶わなかった大逆転合格に今、注目が集まっている。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 西田浩史)

下位、中堅大学から最難関大学への編入合格者が2階の階段までびっしり。今月から国公立大学理系の編入試験が本格化する(東京・中央ゼミナール) Photo by Hirofumi Nishida

 都内の下位都立高校から現役で大東文化大学文学部に入学したCさん。3年次には、なんと30ほども偏差値が高い上智大学外国語学部に編入した。

 大東文化大学では、その校風に馴染めず、また学内の友人達とのモチベーションの違いにギャップを感じていた。そして文学部に入ったものの、次第に興味の対象が語学や海外に向くようになり、次第に中退を考えるようになったのだという。

 そんなとき、Cさんはインターネットで編入制度を知った。編入制度を活用すれば、今までの勉強の成果である単位や、それまで支払った学費を無駄にすることなく、自分の求める大学に入れる。「これしかない!」と感じたCさんは、大学1年次の終わりから、編入予備校へ入学した。

上智大学へ仰天合格
複数の私立大学合格も

 Cさんは、毎日大学の授業が終わる夕方から予備校に通い始めた。英語と専門科目(小論文)の授業を受講して、基礎から猛勉強した。

「予備校の先生がいつも気にかけてくれ、おかげでめげずに頑張れたのが大きい」とCさん。

「何度も課題を添削してもらい、面談で悩みを聞いてもらった。半年後には成果があらわれ、編入専用の模試や小テストで校内順位が上がっていった。同時にはじめは辛かった勉強もだんだん楽しくなり、夢中になった」という。そして、ついに上智大学など難関といわれる複数の私立大学の合格を勝ち取った。

「当初は上智大学合格を、親にも高校の先生にも信じてもらえなかった。なんせ、日東駒専ですら合格は難しい高校でしたから」と聞けば、この逆転劇がいかに度肝を抜くものだったかが想像できるだろう。

 Cさんのような大学生は決して珍しくない。文部科学省が実施したアンケート「学生の中途退学や休学等の状況について」によれば、平成24年度に大学を中退した2.65%のうち、編入などで他の大学へ入り直す「転学」は15.4%にも及ぶのだ。

明らかに一般入試よりお得か
最大の要因は受験者層にあり

 では、そんな編入のメリットを見ていこう。

 一つは、2年までいた大学の単位が編入先の大学でも卒業単位として認められることだ。そのため、中退して改めて一般入試で入り直すのに比べ、2年分の学費と時間を節約できる。また、一般入試より受験科目が少ないため、難関大学でも格段に入りやすい(下図参照)。

 だが、それ以上に注目すべきなのは、一般入試と比べて競争相手が少なく、倍率が安定していることだ。

 平成28年度に全国大学で実施された編入試験の志願者数は2万8935人。そのうち合格者数は1万1184人で、倍率は2.6倍だった。この数字は過去10年であまり変化していない(中央ゼミナール調べ)。

 そして、編入試験と一般入試の受験者層の違いもポイントだ。

 一般入試は全国のあらゆる学生が受験し、競争相手になる。特に難関大学では、東大などトップ中のトップを狙う層から、ギリギリ合格という層まで、非常に幅広い層と競争しなければならない。

 一方、編入の場合は、早慶上智以上の学力の高い層はすでに一般入試で難関大学に合格していて、そもそも他大学に入り直そうなどという発想すらない。いわゆる高学力層を除いた競争相手しかいないのだ。編入試験の受験者層は、GMARCH以下の学生が大半を占める(右図参照)。

 30年近く編入試験を指導してきた中央ゼミナールの宍戸ふじ江教務部部長も、「予備校に通うのは日東駒専の学生が中心。実際、このランクの学生でも国公立大学に合格できている」と話す。

超難関大学含め8割以上で実施
国公立はセンター受験なし

 編入試験は、近年の少子化で志願者数が減少している大学にとって、うってつけの学生獲得の機会だ。それは編入試験形式の多様化にも表れている。

 以前は、3年次で大学を移る「3年次編入」と、大学卒業者が3年次に戻って入学する「学士入学」が中心だった。

 さらに近年はこれに加えて、社会人のみを対象にした「社会人編入」、大学2または3年次の学生を対象にした「2年次編入」など、様々な編入試験の形式が加わってきたのだ。

 編入試験の実施数はどうだろうか。

 大学編入についての情報提供を行っている大学情報図書館RENAの安井美鈴代表によれば、平成28年度に全国の502大学1419学部が実施している。国立の89.9%、公立の64.4%、私立の85.9%、全体では83.8%の大学が該当するという状況だ。

 国公立大学の場合は、センター試験受験も必要ない上、試験日程が被らなければ、いくつも受験可能というメリットがある。

 とはいえ、編入試験を受けるならば、それなりに注意が必要だ。

 まず、試験の日程は、一般入試より早く、主に11月下旬あたりがピークとなる。

 試験科目は、前述したように一般入試より少なく、「語学」「専門科目」「面接」が一般的だ。

 だが、これらの科目にはしっかりした対策が必要だ。

 一つ目のハードルは「語学」。

「中央ゼミナールの授業では学生が30分で英文を和訳して、それを講師が添削、解説する。英文には専門的な英単語・熟語が入り混じるため、編入先の学科の基礎的な専門知識がないと太刀打ちできない。英語がかなり得意な人であっても対策をしなければ解けない」と前出の宍戸部長は話す。

編入は出題傾向も複雑
独学では太刀打ちできない事情

大学編入の過去問は手に入りにくい。著作権の問題でコピー不可であったり大学内で閲覧のみ可能の大学も。中央ゼミナールは過去30年以上分の問題、合格体験記もファイル化しており、貴重だ Photo by Hirofumi Nishida
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 さらに近年、「受験生に人気がある難関大学の経済学部などでは要求水準が年々高くなりつつある」(宍戸部長)という。

 というのも、語学試験の代わりにTOEICやTOEFL、英検などの外国語検定試験のスコアを出願資格に設定し、試験時に提出させる大学が出てきたからだ。

 これらの大学では、英検であれば2級〜1級、TOEICでも600〜800点とかなりハードルが高い。

 代表的なところでいうと上智大学や、早稲田大学商学部、横浜国立大学経済学部などが該当する。

 こうした人気難関大学を目指す場合は、長期的計画を持って外国語検定試験への対策をする必要があるだろう。

 次のハードルは「専門科目」(小論文)だ。志望学科により、高い専門性が要求されるものから、エッセイ風の軽いものまで、出題形式の幅は広い。志望学科の出題形式に沿って、何度も添削を受け、慣れる必要がある。

 そして最後は「面接」だ。面接の平均時間は10〜15分程度で、評価基準は大学によって大きく異なる。「参考程度から、筆記試験並みに重視するところまで大学によって様々」(私立大学職員)と、一筋縄での対策ができないのだ。

 面接で必須の質問は、志望理由と、卒業後についてだ。だが、一部の大学では出願時に長文の志望理由書を書かせることもあり、早くからの準備が必要だ。

 このように、大学によって試験の形式にかなり癖があるため、独力での対策は難しい。

 さらに、出題傾向も年によって異なる。実は、問題の難易度も必ずしも偏差値順になるわけでないのが現状だ。

予備校選びのポイントは
長期指導経験と過去問題の蓄積

日本大学経済学部から北海道大学法学部に編入試験で合格したSさん。予備校の授業で使用したボロボロになったテキストを見せ、これは入学後でも役に立ったと話す
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 最後に、編入試験は、年によって実施されないケースもあることに注意しておきたい。もともと一般入試で出た欠員を補う時にのみ行われる試験であるからだ。

 実際、多くの大学の定員は「若干名」となっている。中には「定員10名」と明確に定員枠を設けているところもあるが、蓋を開けてみると合格者は5名だったり、12名になったりもする。年により合格者数が大幅に異なるのは珍しくない。

 このように、編入試験は多くのメリットがある一方、年により状況が変わるため、予備校などで情報収集をしっかり行うことが合格への近道といえる。

 予備校選びは、過去の長期にわたる出題傾向を網羅し、それに出題傾向の推察力を兼ね備えた「カン(勘)ピュータ」というべき分析能力を持っている講師が多いところが良いといえるだろう。例えば、中央ゼミナールは志望理由書を指導する学習指導スタッフを専門分野別に20人、さらに、専門英語の講師を10人程度抱えているそうだ。

 そして、しっかり編入試験対策をすれば、編入後の役にも立つ。

「本校の合格者で、編入試験で勉強に目覚めて編入先の大学卒業後大学院に進学し、大学教授になった人も多い」(宍戸部長)というからだ。目的意識が明確で勉強好きな学生にはマッチした試験といえる。

 編入は、単に学歴を大幅にアップさせるチャンスとのみ捉えるのではなく、純粋に学問を究めるためにチャレンジするのもよいだろう。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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