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kintoneな人 第4回

新しい形のSIを模索する2人にとってのkintoneとは?

定額制SIにチャレンジするジョイゾー四宮夫婦のkintone夫婦善哉

2017年06月01日 07時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

提供: サイボウズ

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3回の対面開発で仕上げる「システム39」誕生の背景

大谷:そして、ジョイゾーと言えば定額制SIの「システム39」。3回の打ち合わせ、39万円の定額でkintoneのシステムを構築するというもの。こちらも登場の背景について教えてください。

靖隆:はい。kintoneをやり始めた当時、ガントチャートのクラウドサービスを手がけているブラビオの町田さん(取締役COO 町田 拓也さん)といっしょにプロジェクトを手がけていて、2人で呑んでいたときに、「システム開発の新しい形はできないか」という話で盛り上がったんです。町田さん自体も定額制SIの構想自体は持っていて、実際に試してみたんですけど、けっこう失敗してしまうらしんです。

「定額制というだけだとけっこう失敗してしまうらしいんです」(靖隆氏)

大谷:どういったところが難しいんでしょうか?

靖隆:うまく作れず、わりに合わないとか、作りたいモノがやはりお互いに違うとか。ただ、自分もkintoneのSIにチャレンジするところだったので、39万円という金額や「システム39」という名前を決めたり、目の前で「対面開発」できたら面白いよねとかという話をしてたら、町田さん経由で事例にも出させてもらっているゲーム会社のワンオブゼム様から開発案件が入ってきたんです。

大谷:どんな感じのシステム開発依頼だったんですか?

靖隆:スマホゲームのランキングをとって、キャンペーンのときにどれくらい数字が伸びたかを見える化したい感じでした。kintoneだったら行けそうだなと思って、打ち合わせの当日に町田さんから来た画面イメージを見ながら、kintoneでアプリ化してみたら、先方も「そうそう、そんな感じ!」と納得してくれたんです。

そして、その段階でシステム39の話をしました。「あと2回くらいの打ち合わせで、本番まで作らせてもらえませんか?」とお願いしたら、担当の方が社長に話をしてくれて、その場で契約させてもらいました。結局、その次に打ち合わせしたら、もう完成してしまったので、このモデル行けるねということで、正式にサービス化したんです。その頃にたぶん大谷さんに記事書いてもらっていると思います。

大谷:なるほど。先ほどの町田さんの話じゃないですけど、定額制SIって仕組み自体はシンプルだと思うんですけど、どれくらいで価値と労力がうまく釣り合うのかがものすごく大きいと思うんです。それが無料を含む3回の対面開発でシステムを納品まで持ってくるという感じだったんですね。

靖隆:そうですね。これは私の性格によるのですが、「極力持ち帰らない」のを徹底しています。その場でできることをベースにお客様にヒアリングし、どうやったら改善できるかを考え、なるべくシンプルに仕上げます。システムを複雑にして、喜ぶ人は誰もいないので。これなら2時間×3回でできるものはあるよねと。逆に、それができないと持ち帰りが発生するので、割に合わないと思っています。

10年の子育てからシステム開発の最前線に復帰するまで

大谷:そんな中、琴絵さんが産休後にジョイゾーに復帰するんですよね。

靖隆:はい。妻は3人子育てしたので、結局10年間は専業主婦でした。さすがに10年だと「ITの世界には戻れない」といつも話してましたね。

琴絵:夫には「仕事できていいよね」とか、「私なんてどうせ働く先なんてないし」っていつも愚痴ってました(笑)。

「私なんてどうせ働く先なんてないしといつも愚痴ってました」(琴絵氏)

実際、3人目を育てている頃、ちょうど母が仕事をやめて、子育て手伝ってくれそうだったので、パートくらいならできるかなと。でも、ECサイトの会社に入ったら、サッカーのユニフォームに背番号をアイロンで圧着する仕事してた(笑)。Facebookの過去の書き込みとか見てると、「私はWebから仕事の応募すらできない」とか書いていて、それくらい浦島太郎な感じだったです。

靖隆:でも、システム39を作って、案件をこなすうちに、妻はこの仕事ができる……というか、人と話して設計するのが好きなので、むしろ適任だなと思ったんですよ。ちょうどその頃、洋服の青山の面接落ちちゃったと言ってたので(笑)。

琴絵:職場復帰するのになにかできなければということで、パーソナルカラーコーディネイトとかの資格とかとってたんですが……(笑)。

靖隆:システム39の案件も増えてきて、これから伸ばしていこうと思ったので、「もしよかったら社員として入って、がっつりコミットしてくれないか」と話を持ちかけたんです。

大谷:そういう経緯でしたか。ただ、夫婦で同じ職場って、そんなに多くないですよね。

琴絵:やっぱり夫婦で同じ職場で働くのってなんだか変ですよね。家でも、仕事場でも、客先でも、いっしょってなんだかいやじゃないですか。だから最初はいっしょになんて働けないと思ってました。お客様への提案の仕方とかも違うので、きっとけんかになるだろうと(笑)。

大谷:それもそうですが、まあ家で仕事の話になりますよね。

靖隆:僕は家で仕事の話しないんですが、こっちは絶対してくるんで(笑)。

琴絵:私の方が仕事好きなんで、そうですね(笑)。それわかっていたから、専業主婦やっていたんですけど、とにかく人が足りないからということで、「kintoneってなに?」というところから始めました。最初はkintoneがわからないから、同席しているだけなんですけど、わかってくると、だんだん「こっちの方がいいんじゃないですか」と口を挟みたくなるんです(笑)。まんまと載せられた口です。

システム39はお客様自身も楽しんでいる

大谷:システム39では、お二人とも対面開発をやっているんですよね。

琴絵:そうです。でも、最初は「それはあなただからできるんでしょ」と言ってたんですよ。夫はお客様がお話ししている最中から、kintoneで作り始められるんですが、これって誰もができるわけではないですよね。だから、最初はペアを組んでやってました。システム39って、無料となっている初回の2時間でどこまで成果に近づけるかがけっこう鍵。でも、ヒアリングばかりしていると、アプリが作りきれないんです。

靖隆:最初は話を聞き込んでいたし、うなづきながら、メモ取っていましたが、それだとなにも進まない。エンジニアも、今までお客様に作る過程を見せるということはなかったと思うんですよね。でも、今までブラックボックスだったその過程を見せるのはすごく重要だと思います。妻も最初はメモをとってましたが、今はメモもとらないです。

琴絵:そうですねえ。もともと設計やっていたので、全体の完成図みたいなものがないと、頭の中でシステムが組み立てられなかったんです。私の場合は、そこがちょっと辛かったですね。

靖隆:その点、僕はシステム開発に携わった期間が短いので、お客さんに言われた項目を並べて、ドロップダウンで値を持つより、マスターDB引っ張ったほうがいいとか、直したいのであればあとから直します。

琴絵:私はリテラシの差があると思うので、誰が一番そのシステムを使うか聞きますね。誰がデータを入力するのか、外部でモバイルで参照するのか。

大谷:なるほど。お二人の出自の違いがあるのかもしれないですね。システム39が行けるなと考えるようになったのはきっかけあるんでしょうか?

靖隆:ワンオブゼム様のようなお客様でやらせてもらったのは大きいですけど、正直最初はなかなか延びなかったですね。ただ、システム39ってお客様自身も楽しんでいるし、僕たちも悩みます。だから、本音が出てきて「業務のフロー自身を変えた方がいいんですかね」とか、「なかなか言うことを聞いてくれない上司がいてね」といった話をしながら、3回で完成に近づけていけます。実際に業務で使えるレベルまでには作れるので、今後kintoneが伸びたら、必ずシステム39も伸びると思いました。

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