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渋谷区とナイキが裁判寸前!区の目玉事業でトラブル続出

2017年05月29日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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2020年の東京五輪を控えて、区庁舎などの建て替え、宮下公園の再整備など目玉事業を抱える東京都渋谷区。だが、華々しい計画の裏ではトラブルが続発していた。その実態に迫る。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 大根田康介)

民間資金を活用した建て替えという目玉事業で揺れる渋谷区仮庁舎(右上)と宮下公園(右下)。ナイキが渋谷区に提出した損失補償を求める書状(左) Photo by Kosuke Oneda 拡大画像表示

 39億円──。渋谷区議会議員の堀切稔仁氏が、今月3日、渋谷区長の長谷部健氏に対して起こした裁判の損害賠償の金額だ。区議が区長を提訴する異常事態。いったい渋谷区で何が起こっているのか。

 東日本大震災を契機に、区は1964年竣工の総合庁舎および渋谷公会堂の耐震診断を実施。その結果、老朽化により、震災時の活動拠点としての耐震性が基準値を大きく下回っていたため、補強などの対応が急務となった。

 そこで区は庁舎と公会堂の建て替えを決めた。計画では、庁舎と公会堂の敷地の一部に77年間の定期借地権(一定期間、地主から土地を借りて使用する権利)を設定し、民間事業者が分譲マンションを建てて収益を得る。それと引き換えに、事業者が定期借地の権利金と相殺するかたちで新庁舎と新公会堂を無償で建設することで、区の財政負担をゼロにできるという事業スキームだ。

 五つの企業グループが企画提案し、2013年に三井不動産グループが事業者に選定された。決め手は三井不の案だけが「隣地の区立小学校や分庁舎の容積移転、土地の付け替えなどがないコンパクトな事業計画だったこと」と、庁舎建設室長の杉浦小枝氏は言う。

 その後、15年から建て替えが始まったが、堀切氏が問題にしたのが、不動産鑑定評価における定期借地権の評価額だ。15年2月の不動産鑑定では、権利金が211億円となっている。

 だが、堀切氏は「評価額が不当に安い。少なくとも250億円の価値があるはず」と主張。250億円から211億円を引いた39億円の損害を区が生じさせたとして、責任者の区長を訴えたのだ。

 堀切氏が根拠とするのは、不動産鑑定書にある「期待利回り2.2%」という数字だ。期待利回りとは、投資額に対する期待収益の割合のことで、これが下がれば定期借地権の権利金も下がる。つまりマンション分譲による利益が増え、三井不の負担が減るのだ。

 堀切氏は、「鑑定書作成当時の都心部の住宅用不動産の利回りは4%以上あり、渋谷区なら3%を下回らないはず。企業優遇ではないか」と疑う。

 これに対し、杉浦氏は「不動産鑑定士によって期待利回りには差が出るが、低くは見積もっていない」とし、両者の主張は平行線をたどっている。

 これから法廷に場を移して争うことになる。

ネーミングライツでナイキが4.5億円損失し裁判寸前に

 トラブルはこれだけではない。渋谷駅近くの宮下公園の再整備事業でも問題が持ち上がっている。

 区は14年から再整備に着手し、新庁舎と同様、民間事業者に定期借地して区の負担を減らす事業スキームを採用した。東京急行電鉄との一騎打ちを制し、ここでも三井不が事業者として選定された。

 20年に商業施設、ホテルなどを併設した新宮下公園として生まれ変わる予定だが、その計画の裏で宮下公園のネーミングライツ(公共施設などに名称を付与する権利)をめぐり、区とナイキジャパンの間でトラブルが発生していた。

 両者がネーミングライツ契約を結んだのは09年で、金額は年間1700万円、期間は10~20年度の10年間。ナイキは宮下公園にスケートボード場などを整備した上で、名称を「宮下公園NIKEパーク」として広告効果を狙った。

 だが11年、ナイキは突如社名を外す。きっかけは区による宮下公園の野宿者の強制退去だったとみられる。「野宿者やその支援団体らの反対に遭い、イメージダウンを恐れたからだろう」と、ある市民活動家は推測する。強制退去を不服とした支援団体が11年に裁判を起こし、15年には強制退去の違法性を認める判決が下った。

 これに追い打ちをかけたのが、14年から始まった宮下公園再整備事業だ。ナイキは、改修で公園が閉鎖されれば、ネーミングライツを行使できず契約違反だと主張。16年に「整備に要した約4億5200万円を損失した」と、代理人の弁護士を通じて長谷部氏宛てに文書を送付。強い姿勢で損失補償を求め、裁判一歩手前の事態にまで発展した。

 両者は今年3月31日に和解したが、内容は和解とは程遠い。区は損失額を3100万円としており、ナイキの認識と大きな乖離があるからだ。ナイキは本誌の取材に「16年に送った区への文書の金額が正しい」と回答。区の緑と水・公園課長の吉武成寛氏は「ナイキが今年3月1日に示した『契約終了に伴う損失は少なくとも1700万円』という文言に基づいて算出した」と反論する。紛争長期化を嫌ったナイキが不本意ながら妥協したということだろう。

 目玉事業で相次ぐトラブルに、区政を危ぶむ声も出始めている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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