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三菱東京UFJ銀、頭取交替で露見した「無風の王位継承」の死角

2017年05月26日 06時00分更新

文● 週刊ダイヤモンド編集部(ダイヤモンド・オンライン

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「次の次の頭取まで決まっている」といわれるほど“無風”が常だった三菱東京UFJ銀行のトップ人事だが、小山田隆頭取が就任からわずか1年余りで退任するという不測の事態が発生。異例の頭取交代劇は、それにあらがう危機対応プランの痕跡と、“無風”が前提であるが故の潜在リスクを浮き彫りにした。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

三菱東京UFJ銀行の頭取交代会見に出席した、6月に新頭取となる三毛兼承副頭取(右)と、平野信行・三菱UFJフィナンシャル・グループ社長  Photo by Takahisa Suzuki

「体調が悪化し、思うに任せない。頭取の職責遂行に支障を来しかねない」

 5月19日、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の中核子銀行である三菱東京UFJ銀行の小山田隆頭取は、三菱UFJFGの指名・ガバナンス委員会に対して、そう辞意を表明したという。

 三菱東京UFJの頭取人事には「鉄のおきて」が二つ存在した。一つが「任期4年の不文律」。もう一つは「頭取の履歴書」だ。歴代頭取は東京大学か京都大学卒で、旧三菱銀行の企画畑出身と相場が決まっていた。

 この二つを組み合わせて、現頭取の3~5年次下の「履歴書」に合う人物を探すと、「次」どころか「次の次」の頭取まで分かる。それほど“無風”が常なのが、三菱東京UFJのトップ人事だった。

 ところが、今回は他社でも通常はあり得ない就任1年余りでのトップ交代。しかも、小山田頭取は今年4月に業界団体のトップである全国銀行協会の会長に就任したばかり。まさに異例ずくめだ。

 最初に小山田頭取が健康不安を打ち明けたとされるのが2月。その後、三菱UFJFGは水面下で危機対応プランを発動し、3月には万が一の場合の次期頭取を選んでいた。それが、6月に次期頭取へ就任する三毛兼承副頭取だ。

 そして、5月15日には三毛氏を銀行副頭取の専任とする人事を発表。その時点では小山田頭取に続投の意志があったため、平野信行・三菱UFJFG社長は「さまざまな考慮の結果」と明言を避けたが、いつでも三毛氏を頭取にできる臨戦態勢に入ったとみられる。

 ただ、三毛副頭取のキャリアを踏まえると、このタイミングで旧三菱銀行出身・副頭取経験者の“指定席”である、グループ内の証券会社かリース会社の社長に就任、またはそれを含んだ人事が出るとみられていた。

 ところが、三毛氏は職務が減った上に副頭取に留任。さらに同日、三菱UFJリースが三菱東京UFJの柳井隆博専務を社長に迎える人事も発表された。旧三菱銀行出身とはいえ専務の柳井氏がリース社長に就くという人事も重なり、機微に通じる関係者の間では何らかの異変を勘繰る向きも出ていた。

異変の材料は他にも
「次の次の頭取」が
出世レースから脱落

 従来のつつがない“王位継承”が突如揺らいだ三菱東京UFJ。この事態は、“無風”人事を前提にしてきたが故に彼らが抱えてきた潜在リスクも浮き彫りにした。それは、「頭取レースにおいて、早い段階で候補者を間引いてきたため、本命の代わりがいない」(三菱東京UFJ関係者)という問題だ。

 もちろん、国内最大手のメガバンクとあって優秀な人材には事欠かない。ただ、小山田頭取が「20年以上前からプリンスと呼ばれる頭取の本命だった」(旧三菱銀行OB)というほど、三菱東京UFJでは早くから頭取レースが決着してしまう。そのため、頭取たるものが歩むべきキャリアを経て身に付ける帝王学は、“一子相伝”に近い。となれば、不測の事態の発生で後継者リスクが浮上するのは世の常。それが顕在化したのが今回の一件といえる。

 ただ、そうした事情にも変化の兆しがある。実は、三菱東京UFJ頭取の座へと続く“王道”に異変が起きているのだ。

 その象徴が、前述した柳井専務が三菱UFJリースの社長に就任するという人事だ。この柳井専務こそ、小山田頭取が「次の頭取」だった時代から、「次の次の頭取」と目されてきた本命だった。しかし、銀行外に出る人事が決まり、その芽はついえたとみられる。 つまり、不測の事態による余波はあれど、三菱東京UFJは「次の次まで決まっている」といわれたトップ人事の“神話”を自ら捨て去ったともいえる。

 背景には、今まで三菱東京UFJが頭取候補者にたたき込んできた帝王学と、現在の頭取像に求められる資質との間に生じ始めている、ギャップがあるとみられる。特に最近のキーワードは「国際経験」だ。前出の柳井専務もここがネックになると指摘されてきた。

 その点、次期頭取の三毛副頭取は、米国やアジアで主要ポストを歴任した経験を持つ。また、親しい知人は三毛副頭取を「オールラウンダーのスター」とも評する。同期の小山田頭取が早くから頭取の“王道”を歩む一方で、銀行合併やシステム統合など、銀行が重要案件を抱えるたびにその仕事を任され、実績を残してきたからだ。

 前述のギャップが生じていたが故に、三毛副頭取のような経歴を持つ幹部が残っていたことは不幸中の幸いだろう。ただ、三菱東京UFJには、未来の頭取が歩むべき“王道”の再定義と、そこで帝王学を身に付けた複数の頭取候補者を人材プールにキープすることが、早急に求められている。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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