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「嫌われる勇気」を持つ意味を勘違いしてはいけない

2017年05月24日 06時00分更新

文● 安藤広大(ダイヤモンド・オンライン

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他者の評価をまったく気にせず、嫌われることを恐れない――。そんな勇気を持つことが「嫌われる勇気」だと認識している人がいると聞く。確かに、「嫌われる勇気」が必要なことがある。しかし、「嫌われる勇気」のあり方を間違えるととんでもないことになる。(株式会社識学代表取締役社長、組織コンサルタント 安藤広大)

人と人は他者評価の「利益」でつながる
自己評価だけでは成り立たない

「他者から評価され、嫌われることを恐れない勇気を持てば、悩みから解放される」――。

 もし、これが世間で言われている「嫌われる勇気」だとしたら、そして、「他者からの評価を気にしなくていい」と思う人が増えてしまうとしたら、さらに「自己評価さえ良ければいい」と思う人が増えてしまうとしたら、本当に危険だ。

 なぜならば、「他者評価」からでしか人は利益を獲得できないからだ。

 それを言うと、

「自分の中で満足できること、それも私にとっては利益です。なので、他者の評価は要りません」

 あるいは

「私は自分らしく生きることを最優先しているので、人の評価は気にしません。自己評価が大切です」

 という答えが返ってくることがある。

 誰とも接することなく、一人で生活をしていくのであればそれでいいだろう。しかし、人と接することをしながら、社会で生きていくことを選択するのであれば、それはできないことである。

「利益」は相互にバランスする
必要とされない人間になる可能性

 その理由は明白で、人と人は何らかの「利益」でつながっているからだ。その利益とは、何も金銭だけではない。下記のような内容も含まれる。。

「この人といれば楽しい」

「この人と一緒にいればビジネスが上手くいく」

「この会社にいれば、成長できる」

「この友達グループにいれば、周りからイケていると思われる」

 このように、人によって「利益の種類」は違えど、その人、その集団とつながることに利益を感じるからこそ、つながっていることを選択しているのだ。

 それは相互に利益を認識し合うことで成立する。片方だけの利益が大きくなりすぎるとその関係を維持するのは難しくなる。なぜなら、相手も自分にもたらされる利益を前提に、どの個人や、どの集団とつながりを持つのかを選択しているからだ。

 そして、その「利益」を相手が「利益」だと判断するのは、当たり前だが自分ではなく、相手という他者である。いくら、あなたがこれは周りの人にとって「利益がある」と判断したとしても、周りで誰も自分にとって「利益だ」と認識してなければ、その事柄には利益がないのだ。当然ながら、あなたが「利益」だと感じている事柄に対しても、誰もあなたに「利益」を返すことはない。「利益」はいつも相互にバランスを取ろうとするからだ。

 なので、本当に、あなたが何よりも自己の評価を優先するとしたら、危険だ。気がつけば、あなたは周りから「利益」を感じられない、必要とされない人物になっているかもしれない。

「嫌われる勇気」は
時として必要なこともある

 とはいえ、時には「嫌われる勇気」を持たなければいけないケースもある。つまり、他者評価を無視しなければいけない時も確かにあるのだ。

 それは、人は立場、環境、これまでの経験によって、何を「利益」と感じるかが違うからに他ならない。

 例えば、あなたのことを好きなAさん、Bさんがいる。そして、あなたはAさんに想いを寄せている。あなたが、「Aさんに優しくする」という行動を取った時に、同じ行動に対して、Aさんは利益を認識し、Bさんは不利益を認識することになる。

 つまり、誰から「利益」を獲得したいかによって、それ以外の人からは、嫌われる勇気を持たないといけないということになる。

 この際、どちらにも嫌われたくないがために、AさんとBさんの双方に優しくしてしまったならば、あなたは獲得したい「利益」を得ることができない可能性があるのだ。

会社組織では
部下からは「嫌われる勇気」を持て

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 会社組織においても同じことが言える。例えば、あなたが課長だったとする。上司に部長がいて複数人の部下がいる。「目標達成のために部下に厳しく指導する」という行動をとった時に、部長はあなたに「利益」を認識する可能性が高いが、部下は「利益」を認識せず、むしろ、「嫌な上司」として嫌うことも多いだろう。

 この時、あなたはどちらからかは「嫌われる勇気」を持たなければいけない。先ほどのAさん、Bさん同様、双方の「利益」が相反するからだ。そして、営利集団であり、あなたの役割が規定されている会社においては、どちらに対して「嫌われる勇気」を持たなければいけないのかは明らかである。

 それは、もちろん部下だ。なぜなら、あなたは会社に勤めている以上、給料という形で「利益」を得ており、会社全体の目標に貢献しているという「利益」を会社に認識させる責任があり、それを評価するのはあくまでも上司だからである。そして、ここで補足をすると、もちろん部下に嫌われる勇気を持つというのは、部下の事をどうでも良いと言ってる訳ではない。未来の部下の成長や、チームの勝利を考えた時に、「今」、嫌われる勇気が時には必要だということだ。

 このため、繰り返しになるが、時には「嫌われる勇気」を持つことも重要だ。「利益」を与えたい人に「利益」を与えることができなくなり、自らが「利益」を獲得することができなくなるからだ。

 しかし、「自己評価だけで完結する嫌われる勇気」はあまりにも危険だ。あなたに利益を認識する人がいなくなり、あなたも利益を得続けることができなくなる。あくまでも。他者評価の中で生きていることを前提とした「嫌われる勇気」を持つことが大切なのだ。


※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら

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