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de:code 2017基調講演では切っても切ってもAIだらけ

PFNとの提携も発表!想像を超えるマイクロソフトのAIフォーカス

2017年05月24日 08時30分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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Preferred Networksとの提携でChainerがAzureで使える

 そして、パートナーとの取り組みとしてグッゲンハイマー氏から新たに発表されたのが、ディープラーニングを手がけるPreferred Networks(PFN)との提携だ。

登壇したPFNの西川 徹代表取締役

 登壇したPFNの西川 徹代表取締役は、自動運転での学習模様をビデオで披露しながら、「ディープラーニングはデバイスから出力されたデータを分析するだけではなく、デバイスのコントロールにおいて重要な価値を持ってくる。ロバストな制御が可能になる」と説明し、PFNが基盤技術とモノの制御に強みを持っている点をアピール。現在、同社はディープラーニングの基盤となるフレームワーク「Chainer」をOSSとして提供するほか、今月はIoT向けの高いスケーラビリティを実現する「ChainerMN」も新たにリリースしている。西川氏は、128GPUを用いたResNetの学習において、他のフレームワークに比べて高い性能を実現できるようになったグラフを披露した。

訂正とお詫び:記事初出時、「ChainerMN」の製品名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。(2017年5月24日)

 今回の提携ではAzureのAIフレームワークとしてChainerが利用可能になったほか、エンタープライズ向けAIソリューションの提供、ディープラーニングの教育も共同で行なっていくという。西川氏は「非常に大きなチャンス」と述べ、マイクロソフトとの提携に高い期待を示した。

 このほか、グッゲンハイマー氏はマイクロソフト製品自体へのAI技術の取り込みについても説明。PowerPointのプレゼンを日本語、英語、スペイン語にリアルタイムで翻訳するデモや、保険会社の顧客向けチャットボットがDynamicsCRMと連携するデモ、AIを自然にビジネスに溶け込ませようという試みがわかりやすく聴衆に示された。こうしたビジネスアプリケーションとAIの連携は、同社の大きな強みと言えるだろう。

Microsoft Translatorによる精度の高い翻訳を実演

AIをフル活用するためのマイクロソフトのデータベース戦略

 さて、グッゲンハイマー氏が降壇し、パーキンソン病による手の震えを押さえる腕時計型デバイスのストーリービデオが披露された後、大きなテーマとなったのはAIにおいても重要な「データ」。登壇した米マイクロソフト データプラットフォーム コーポレートVPのジョセフ・シロシュ氏は、カンブリア爆発と同じインパクトを持つAIの特異点が訪れていると俯瞰し、AIを活かすデータプラットフォームの重要性をまずアピールした。

米マイクロソフト データプラットフォーム コーポレートVPのジョセフ・シロシュ氏

 シロシュ氏は、従来はアプリケーションにインテリジェンスが存在し、データベースは単なる貯蔵庫に過ぎなかったと指摘。しかし、今後はデータが存在する場所にこそインテリジェンスが必要と強調した。これが「Intelligent DB」の概念だ。そして、AIを組み込んだ最初の商用データベースとして「SQL Server 2017」、機械学習エンジンとして「R Server 9.1」を紹介する。

データのある場所にインテリジェンスを

 SQL Server 2017ではRやPythonのストアドプロシージャを利用できるほか、Graphのモデルをサポート。データを移動させることなく処理が行なえるため、セキュリティと効率性を向上できるという。また、シロシュ氏が「AIのカーネルにあたる」とするR Server 9.1ではトレーニング済みのCognitiveモデルを用い、GPUによる高速なディープラーニングの恩恵を受けることができるという。

AIを組み込んだSQL Server 2017

 デモではSQL Serverに格納されたCTスキャンのデータを分析し、ガンの確率を予測するアプリケーションが披露された。こうしたアプリケーションではRやPythonなどのストアドプロシージャを呼び出すコードを追加するだけで、AIの機能が利用できるという。また、マイクロソフトのディープラーニングライブラリであるCNTKを使った分析をGPUで走らせることができるため、CPUだと32時間かかる処理が1時間で終了するとのこと。さらに患者のCTスキャンデータという機密性の高いデータも、セキュアなSQL Serverから移動することなく利用できるのもエンタープライズ用途では重要なポイントだ。

グローバル規模でデータ分散できるAzure Cosmos DB

 現在、Microsoft Azure上では、さまざまなデータベースがマネージドサービスとして提供されている。SQL Serverはもちろんのこと、OSSであるMySQLやPostgreSQLの提供も先日プレビューとして発表された。これらのサービスは高い可用性やバックアップ、セキュリティ、監査などにも対応するほか、オートスケールやリソース管理、チューニングやモニタリングまでカバーされている。

AzureのDatabase Platform

 そして、Build 2017で発表されたのが、グローバル規模でのデータ分散が可能なクラウド型NoSQL DBである「Azure Cosmos DB」だ。Cosmos DBはDocument、Graph、Key-Valueという3つのデータモデルから保存方法を選べるほか、データの一貫性とパフォーマンスによって5つの一貫性モデルを選択できる。昨日掲出した「謎のデータベース「Azure Cosmos DB」一問一答」の記事でCosmos DBについて解説した廣瀬一海氏がデモを披露した。

日本マイクロソフト クラウドプラットフォーム技術部 テクノロジースペシャリスト 廣瀬一海氏

 データベースがインテリジェンスを持つメリットは大きい。そもそも製品がエンタープライズグレードであるほか、データの移動がないため、シンプルで短期間にサービスが実装できる。また、AIを既存のアプリケーションに追加できるほか、OSSを使って拡張することも可能。そしてAzureであればグローバル規模にスケールできるというのがシロシュ氏のまとめたメリットである。

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